LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第52回】SOC:首尾一貫感覚

メンバーの皆さま
 
こんにちは。管理人です。
 
サッカークラブW杯やってますね。時差があって試合が夜中なので、なかなか全部は観られませんが…
 
浦和レッズは早々に負け、本田所属のパチューカ(メキシコ)も準決勝で惜しくも敗退。昨年の鹿島ように「レアルマドリードに挑む日本人を観られないのは残念ですが、あのステージに日本人が普通にいるということ自体、少し前では考えられないことだと思います。
 
約半年後の2018年6月はロシアW杯。正直、日本代表の期待値あまり高くない雰囲気ですが、そんな時こそ反骨心、番狂わせ、ジャイアントキリングが起きて欲しいですね。楽しみです。
 
で、サッカー話しをしたのは、少し前に本田圭佑がオランダのファン・ニステルローイを引用した「ゴールはケチャップみたいなもの」という言葉を使いたかったから。
 
要は出ない時期もあるけど一回出るとドバドバ出る、ということなのですが、前回コラムで触れたように「題名への捉われ」が外れたら、コラムで書きたい情報がドバドバ入ってくるようになりました。
 
まぁ単純に、仕事の書き物がひと段落したということが大きいんですけど。人の感受性や視野というものは、ホントに精神状態や環境的な要因によって大きく違ってくるものだなぁ、と実感します。
 
 
という事で、コラム本編です。
 
【SOC:首尾一貫感覚】
 
所内回覧で回ってきた「地方公務員  安全と健康フォーラム」という雑誌の連載「予防型メンタルヘルスのすすめ」で取り上げられていたのがこの言葉。
 
どうやら保健や看護の分野で使われている概念のようで、少し調べてみると、
 
「SOC:Sence of Coherence (コヒアレンス)」はストレス対処能力を表すもので、以下の3つで構成される、と。
 
①把握可能感
自分が置かれている状況や,将来おこるであろう状況をある程度予測、理解できるという感覚
 
②処理可能感
どんな困難な出来事でも自分で切り抜けられるとい う感覚や何とかなるという感覚
 
③有意味感
人生・生活に対して、意味があると同時に価値観を持ち合わせている感覚
 
 
【参考】首尾一貫感覚 SenseofCoherence(SOC)と 生活習慣に関する研究の動向(浦川、2012)
 
がSOC研究を広くカバーしてまとめてくれていますが、成人や高齢者だけでなく、思春期や「育ち・育て」についても触れられています。
 
例えば、
・子どもは、生来の気質や能力に加えて、親の育て方の影響を強く受けて成長する
・子ども時代に意思決定に参加でき, 結果形成に参加できたか(有意味感の基礎要素),一貫性は得られたか(把握可能感の基礎要素),負荷のバランスはとれていたか(処理可能感の基礎要素)の 3つの経験がSOCを左右するとしている(坂野純子 2009)
 
 
 
もう皆さんならお気づきと思いますが、これってLSWで大切にしたり目指していること、そのものですよね。
 
①把握可能感/②処理可能感/③有意味感
 
と似た内容は、本コラムでも「意味を見つける」「希望を見出す」「支配感」「レジリエンス」と言った題材で扱われてきました。
 
また、「喪失」「時間志向性」などを題材に、入所理由や措置変更についてのきちんとした説明や振り返り、見学や慣らし保育などの丁寧な移行期間のつなぎの支援が子どもの状態に与える影響は「①把握可能感」と重なる部分が多いと思います。
 
そして、Coherence一貫性)は、児童福祉では一貫性・永続性を表す「パーマネンシー」の保障が虐待対応の基本に含まれていますよね。
 
これは【第50回】で取り上げた「組織言語」の違いかなと。分野が「福祉」と「保健・看護」で違うだけで、対人援助において大切な本質的なことを切り口を変えて言っているだけなんだと思うんです。
 
つまり、思春期〜高齢期におけるLSW的取り組みの重要性は、すでに保健・看護の分野で説かれている、という見方ができるかなと。
 
 
さらに、もう一つ。
 
「地方公務員  安全と健康フォーラム」で、こんなトピックが取り上げられていました。
 
【上司のSOCの高さは部下のSOC形成に影響する】
→SOCが低い管理職がストレッサーに対峙すると「不安で先のことが考えられない」「うまくいかないのではないか。その言い訳を探そう」「なぜこんな目に遭わなければならないのだろう」などと考え、こうした不安を軽減させるため、失敗を部下に押し付けたり、会社や上司への不満などを部下の前で漏らしたりします。
 
 
思い出してください。これは地方公務員の全体に向けたメンタルヘルスの話です。
 
「大人が出来ないことを、子どもに求めちゃダメですよね」
 
僕が信頼する心理士さんがよく言うのですが、対人援助に限らず、上司が出来ないこと部下に押し付ける、上司がつべこべ言わずにやれと部下に言い、それを先輩が後輩に押し付けるなんて連鎖は、分野に関係なく起こるんです。
 
「落ち着いて」「よく考えて」「話を聞いて」「みんなと仲良く」
 
なんて児童福祉ではよく聞くセリフですが、実際、支援者同士が職場内で機関連携でやれてないことを、相手に求めていることありませんか?
 
「言ってること」と「やってること」がズレてる状態です。首尾一貫していないですよね。
 
 
まずは「人の振り」より「我が振り」見直せ。ということで、管理者を成長させるプログラム開発の試みが看護分野では進んでいるようです。
 
「看護管理者用SOC向上プログラム開発と有用性の検証」(研究期間2015-2018
 
このプログラムは、SOCをコンセプトの軸として、看護師の「自律性」や管理能力といったキャリアデザインを確認できるもので、教える側は受講生の「主体性」を徹底的に重視し、「自由度」を保証した「横の関係」を促進する促しや「ファシリテーション」が重要であることが示唆されている、と。
 
 
あれ?
 
 
これって【第24回】の多職種連携コンピテンシーhttp://lswshizuoka.hatenadiary.jp/entry/2017/08/12/091754の内容や
 
驚くほど「静岡LSW勉強会」の話し合いのコンセプトと類似してますよね。
 
これは面白いです。研究が形になるのが楽しみですね。
 
分野によってアプローチ法、言葉のチョイスは違えども、扱おうとする本質は似ていたり、他分野で応用できるという事はよくあるので、今後もヒントになりそうな他分野の情報もドバドバ仕入れて行きたいなぁ、と思います。
 
ではでは。