LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第59回】セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン

メンバーの皆さま
 
こんにちは。管理人です。
 
段々とインフルエンザ、流行ってきました。
 
また来週から冷えるみたいですし、気がつけば「冬季オリンピック」まで2週間ちょっと。
 
いよいよ真冬到来って感じですね。寝不足と体調にはお気をつけ下さい。
 
 
で、今回は、
                 「バイオ(生物)」
                   /                          
「サイコ(心理)」ー「ソーシャル(社会)」
 
モデルでいう生物学的な話を。
 
以前から、オキシトシンなどホルモン系の話で、ちょろちょろ「セロトニン」とか「ドーパミンの名前が出ていましたが、特に触れてなかったな、と。
 
まぁ、それぞれはGoogle先生に聞けば詳しく教えてくれますので、LSWをイメージした中で簡単にまとめたいと思います。(以下の図は管理人作)
 
 
まず、表題の「セロトニンドーパミンノルアドレナリン」は【三大神経伝達物質】と呼ばれているそう。
 
ホルモン系の話は、横文字ばかりで細かすぎて覚えきれませんが、よく日本三大庭園とか、日本三大〇〇(「マツコ&有吉の怒り新党」より)って言いますから、とりあえず「三大」は押さえておくのが良いかな、と。
 
で、それぞれの関係のイメージはこんな感じ。

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まず、セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、ストレスを緩和させたり、ドーパミンノルアドレナリンの調整役でもあります。
 
ドーパミンは「快楽ホルモン」。言うなら「肉食系」、何かgetして嬉しい感じ。それは、やる気やモチベーションにも繋がる。
 
ノルアドレナリンは、覚醒系でよく聞く「アドレナリン」の前段階のやつ。肉体的・精神的苦痛つまりストレス時に、心拍数をあげて心身を興奮・覚醒させます。
 
心身の覚醒って、薬になるとヤバイ感じになっちゃいますけど、悪い事ばかりじゃなくて、例えば、勝負がかかったスポーツとか、他には「火事場の馬鹿力」なんて言いますけど、危機場面で脳のリミッターを外して身体能力UPするなんてことにも繋がりますし、「頭が冴える」「頭の回転が良い」状態というのもある程度の脳の覚醒は必要です。
 
なんでもそうですが、大事なのは「ほどほど」の加減。しかし、セロトニンが足りないと…

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ドーパミンノルアドレナリンの分泌が安定せず、過剰に出すぎたり、逆に過少分泌だったり、極端に振り切りやすくなります。
 
簡単に言うと「ハイな状態」と「ローな状態」。イメージ的は「躁」と「うつ」とも重なりますし、実際にうつ病の人はセロトニンドーパミンが過少分泌らしいですね。
 
なので、僕が声を大にして訴えたいのは、まだまだセロトニンの補充が十分じゃなくて、ドーパミンノルアドレナリンも全然安定的じゃない状態で、過酷な過去を扱うようなLSWをやったら、そりゃ荒れたまま落ち着かなくても仕方ないでしょう、という事。
 
じゃあ、セロトニンを補充するためには、どうすれば良いかと言うと、

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はい、いわゆる「規則正しい生活」を送る事なんです。運動は「リズム運動」と言うのがポイントで、激しく心拍数上がっちゃうヤツはダメだそう。散歩とか軽い体操とか、出来ればトントン左右交互に刺激が入るヤツが良い。
 
そういう左右刺激の心理療法ありますよね。コレってそんなに特別な事じゃなく、人間が歩行を始めた時から続いている自然なストレス解消法なわけです。
 
で、時々耳にして気になるのは、ドーパミンノルアドレナリンが過剰過少分泌しているような状態を落ち着かせたいという理由でLSWが検討される場合です。
 
もちろん「何か支援の突破口を」という気持ちはわかりますが、いきなり過去を扱うんじゃなくて、そんな大変な喪失体験をしてきたんだから症状が出る(落ち着かない)のは当たり前だ、という現在の自分の心身に起こっている事をしっかり説明してあげる方が(いわゆる「心理教育」)、安心感や落ち着きを与えてあげられると、僕は思います。
 
そして、まず日々の規則正しい生活で「セロトニンを貯金できた状態でLSWに取り組んだら、多少ショックな内容があってもストレスに耐え切れる可能性が高くなると思います。
 
さらに、LSW実施前に言われる「支援者との信頼関係」の効能については、オキシトシンでも説明できるなぁ、と思いまして。詳細は、
 
【第46回】愛着形成とオキシトシン
 
を見ていただくとして、要約すると、こんな感じ。

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不安な時に「よしよし〜してもらって安心」と言うのは、もともと日常的なスキンシップや非言語の応答・同調行動で「オキシトシン」が分泌されて「幸せ」という事が繰り返されて生理学的にもそのシステムが獲得されているから、触れられて安心するわけです。
 
しかし、

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「情緒的交流」って良く言いますけど、スキンシップや視線の応答など非言語のペースを合わせてもらった経験が過去に乏しい(もしくは発達凸凹で刺激の受け取り上手くなく結果として応答が合わない)ので、オキシトシン分泌されない→なかなかイライラが収まらない、という子が社会的養護ではゴロゴロいますよね。
 
なので、乳幼児期にオキシトシンシステムを獲得出来ていない子への支援は、不快のイライラ場面でヨシヨシなだめる以前に、日常生活で視線合わせて挨拶するとか、微笑み返すとかの応答で、普段からオキシトシンが出るような関係性が築けているかで、ほぼ勝負は付いているわけです。
 
よく話題に上がる「子どものアタッチメント(愛着)」問題は、僕はこのように理解しています。
 
なので、児相職員として家庭分離や措置変更時に、リアルタイムで喪失体験を支える立場とすれば、現実にそうなる限られた時間の中で、その子が元々どの程度オキシトシンシステムを獲得できていそうなのかを見積もり、いかに自分との面接や検査のやり取りでペースを合わせオキシトシンが出る(安心感を醸し出す)関係性を構築できるか、の勝負になるわけです。
 
 
つい先日、僕が数年、担当している在宅の子が交通事故が骨折して入院したんですね。で、今年度から担当替わった10年選手の福祉司さんから「お見舞いに行こうと思うんだかど、管理人さん一緒に行ける?」と聞かれたんです。
 
入院は術後二日だけだって言うんで、さすがに調整できなくて「さすがマメですね。助かります」ってお願いしたら、「いやいや昔、心理に面接お願いしてて全然会ったことない子を一時保護しに行ったら1日で逃げられたことあってさ。恩を売るわけじゃないけど、いま会っておかんと自分が後々困るだけだから」ってサラッと言うんです。
 
関係づくりってこう言うことですよね。毎日顔会わせなくても「あの時、来てくれた」「苦しい時に側に居てくれた」と言う、小さい積み重ねが結局、物を言うんです。
 
昔、知り合いの女の子が恋愛トークで「女子には絶対外しちゃいけないポイントがある。そこさえ押さえてくれれば、普段ある程度いい加減でも女子は大丈夫」と語っていたことがあって、その子が日本の女子代表ではないですけど、当時は随分肩の荷が下りたと言うか、目から鱗だったことを思い出しました。
 
サプライズとかギャップを作ろうとして、空回りする男子は後を絶たないと思うんですけど、流れやポイントを押さえているか外しているかどうかは「関係づくり」だなぁ、とふと思いました。
 
 
ちょっと話を本題に戻すと、LSW実施時の不安って、過去の喪失体験を思い出す「揺れ」をどう見立てて、どう支えるかということになると思うのですが、本人自身が心の揺れを抱えられる程度や耐性的なものは、もしかすると日常生活の「セロトニン」、関係性での「オキシトシン」という切り口で整理できるかもしれませんね。
 
ただし、過去の喪失体験に関係して「トラウマ」があるのか、もしあるなら今の安全感をどの程度脅かすのか、という事も重要なポイントになるので、
 
LSW実施時の揺れと収まり具合は、
 
「喪失体験のインパクト」×「本人の受ける器」
さらに、×「それを支える支援者チームの器」
 
マグニチュード〇〇、なんてイメージを持っています。あくまでイメージです。
 
ここ数回のコラムは「チーム」の話しが多めになっていましたが、やはりLSWの本人アプローチを考える上では「アタッチメント」「トラウマ」は外せない要素だと思うので、今後も少しずつ取り上げていきたいなぁ、とは思っています。
 
ではでは。