LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第74回】《予告》 見えた!母と子 ミクロの会話

メンバーの皆さま
 
おはようございます。管理人です。
 
昨日、僕の息子が1歳の誕生日を迎えました。本当にあっと言う間ですね。
 
日進月歩とはまさにこのことで、もちろん大人の生活は様変わりしましたけど、シンプルに可愛いし面白い。成長を見ることの嬉しさ楽しさってコレだよなぁ、と。
 
この時期を見逃さないように、子どもが起きているうちに帰れるように、今年度は周りに助けられながら仕事をやりくりしていたなぁ、と思います。
 
実は「まごのてblog」をはじめたH29.6の終わりは、ちょうど里帰り出産から妻と息子が静岡に戻ってきた時期と重なってまして。
 
その時は全くの無意識でしたけど、「まごのてblog」は僕が子育てをしながら、その時々で感じ考えていたことの記録、親育ちblogでもあるんだなぁ、と。
 
今回は、そんな子どもが産まれる前後、妊娠期・新生児期のことを振り返させられるような、そんな番組の紹介です。
 
 
NHKスペシャル シリーズ 人体 神秘の巨大ネットワーク 第6集 “生命誕生” 見えた!母と子 ミクロの会話
 
 
NHKの人体シリーズ、ご存知でしょうか?
 
IPS細胞の山中伸弥教授とタモリさんが司会を務めるシリーズ番組です。
 
前回の第5集 "脳" では、芥川賞作家のピース又吉直樹さんの脳が徹底スキャンされ、創造性やひらめき、意識、記憶について扱われていました。
(再放送:2018年3月19日(月) 午前2時40分)
 
 
で、次回3/18(日)に放送される第6集のテーマが“生命誕生”。
 
もちろん番組内容は、まだ観ていないのですが、番組HPの案内によると、
 
「母親の胎内で赤ちゃんはどうやって成長していくのか。実は、たった一つの受精卵が赤ちゃんに育つプロセスこそ、細胞が発する“メッセージ物質”が大活躍する舞台であることが最先端の研究で分かってきた」
 
 
あれ?
 
これって以前【第41回】〜【第45回】コラムで取り上げた、

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の内容なのでは…。
 
特に続きの、
「最初に生まれる臓器は心臓。その後、細胞同士が次々とメッセージ物質を交わしながら、ひとりでに体が作られていく神秘的な様子が浮かび上がってきたのだ。さらに、胎内の赤ちゃんがメッセージ物質を使って、母親とまるで会話をするように情報をやりとりしていることも明らかに」
 
は、【第43回】子宮内の胎児の意識と発達
で取り上げた胎児期の発達、および母体・外界とのやりとりに近いのでは、と。
 
ただし、原書「Pre-parenting:Nurturing Your Child from Conception」は2003年、訳書である本書「胎児は知っている母親のこころ」は2007年、引用論文はだいたい90年代のもの。
 
なので、今回の
《NHKスペシャル シリーズ 人体 神秘の巨大ネットワーク 第6集 “生命誕生” 見えた!母と子 ミクロの会話》
では、2018年現在における、かなり最新の情報が紹介されるのではないか、と期待しています。
 
さすがNHKですね。要チェックです。
 
 
LSWのコラムで胎児期・新生児期の話しにあえて注目して取り上げているには、もちろん理由があります。
 
1つは、胎児期・新生児期の育ちにおける環境が、その人の人間としての基本的プログラム、基礎に与える影響が非常に大きいから。
 
一般的に、妊娠期の過ごし方、飲酒や喫煙、カフェイン等々は「産まれつき障害がある/ない」という文脈で語られることが多いと思います。
 
しかし、妊娠期の環境の影響というのは「障害さえ」ならなければ全てOKなのか?障害のある/なし、オールorナッシング、0か100で捉えらえていいものなのか。そうではないですよね。
 
当然、胎児期における環境が、子どもがお腹の中で順調にすくすく育つかどうか、その細胞や臓器の構築から始まる「発達」に与える影響が少ないわけがありません。
 
そして、胎児期の環境というのは、母体の心身の健康度がモロに影響するというかそれが環境の全てになる。なので、もちろん身体面の健康は大事なのですが、神経質になり過ぎて追い詰められる母親の精神面もかなり胎内環境には影響します。なので、やはり「ほどよい母親」のバランスは妊娠期から必要ということですよね。
 
一般的なLSWでは「生い立ち」つまり「産まれてから」の歴史に焦点が当たりがちですが、その子の「育ち」「育て」を深く理解しようとすれば、生命が誕生した何ミクロンの時代から、つまり妊娠期の母親自身の生活、母親の客観的・主観的な体験を捉えることは非常に意味があると思います。
 
LSW実施前には、そもそも支援者がその子の状態を捉えるために、支援者がその子の客観的な生い立ちを整理しておく必要がある。で、基本ラインは、まずは子ども自身の認識をどう確認し、支援者が知り得ている情報をどう提示し、その子が主観的にどう味わうか、という順番なんだとと思います。
 
 
 
そして、もう一つLSW的に、忘れてならない視点があります。
 
それは、どのような母親であっても、受胎から出産までの約10月は、誰でもない実母が実母の胎内で子どもを養育していた、という事実です。
 
さらに、例え実親に育てられていない子どもだとしても、この世に存在しているということは、母親が中絶も産後遺棄もせずその子の命をつなぎ、誰かに養育を託したという事。
 
もちろん、産前の喫煙や飲酒、産後の行動など胎児・新生児にとって望ましくない行動もあったかもしれません。子どもを社会的養護(里親・施設)に預ける親情報の表面だけ見れば「育てられないくせに子ども作って」と一般的にはナジなられる無計画な妊娠だったかもしれません。
 
でも、その背景にまで想像を膨らませてください。もしかしたら母親がDVや暴力支配を受けていたり、経済的に精神的に追い詰められていなかったのか。生きていくために、パートナーとの関係維持のために、性交渉を断る選択肢を取れる状況に、その時あったのか。
 
無計画な、望まない妊娠をした。その時に周囲のサポートがあったのか。
 
子どもが産まれてからでないとサポートが受けられない社会というのは、胎児期の子どもはワンオペ育児、全て母親任せで母親の責任で育ててください、というメッセージになってしまいます。
 
妊娠期からの母親の心身状態が、胎児の発達に大きく影響するということは、社会的・集団的「子育て」は産前の母親ケアから始まっていると言えるハズ。
 
子どもの育ちや発達を支える援助者なら、産前の母親へのケアは絶対に見逃せない分野だし、抑えるべき情報と思います
 
理由は前述の通り。胎児期は母親と伝達物質を通じたメッセージのやりとり「対話」を通じて、その子の基礎を作り上げる時期だから。
 
番組の内容は見てのお楽しみですが、胎児期・新生児期の育ちが子どもの成長発達に及ぼす重要性を通して、産前産後ケアの重要性もっと注目が集まって欲しいと思います。
 
欲を言えばいま話題の「働き方改革」「待機児童問題」も働く大人視点の議論だけでなく、将来を担う子ども視点で「社会的な子育て改革」につながるような議論発展していって欲しいですね。
 
ではでは。