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静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第131回】(前編)世代論とチームビルディング〜新しい景色を見せる日本代表〜

おつかれさまです。管理人です。

 


いや〜、凄かったですね。

カタールW杯、日本代表vsスペイン代表。

 


結果はご存じ通り2対1で日本勝利なんてすが、試合後の各選手監督へのインタビューから、森保監督のサッカーの常識を覆すチームビルディングが注目されていますね。

 


そんなホットな話題は、対人援助における「連携」「チームづくり」において非常に学べる点が多いので、まとめておこうと思います。

 


まず試合の話しをしますと、後半開始早々、日本代表が前半とは打って変わった怒涛のハイプレスをかけ、0-1からあっという間に試合をひっくり返しました。

 


スペイン代表のいくつかの選手やルイスエンリケ監督は、そのわずか数分の逆転劇について、完全にパニックに陥っていたことをインタビューで認めています。

 


日本対ドイツの戦い方から、世界中の誰もが、日本が後半にギアを上げて反撃に出てくることは予想できたにもかかわらずです。

 


いかにして日本代表は、百戦錬磨のスペイン代表をパニックに陥らせる状況を作ったのか。そのプロセスが報道にて明らかになってきています。

 


ある分析によると、日本代表はスペイン戦のひと試合、わずか90分間の中で、守備時・攻撃時合わせて6〜7個のフォーメーションを上記に応じて使い分けていたそうです。

 


そして前半45分の間にも何度かフォーメーション変更が行われていた、と。僕も含め素人じゃ、リアルタイムでパッとその変化に気づいて理解するなんて出来ないですよ、とても。

 


せいぜい「アレ、なんとなく流れ変わってきた?」「今のはちょっとアグレッシブにいった?」程度の感覚でした、僕は。でも、それは日本代表が緻密にデザインして用意していた守備だったと。

 


上空からのTV中継視点ですら気付けないことを、実際にプレーしている選手がピッチ視点では人が重なりまくっている状況で把握し、即座にピッチ上の11人が変化と対応策を共通意識を持って対応するなんて至難の業。

 


しかし、FCバルセロナの選手を中心に構成された百戦錬磨のスペイン代表は、ものの数分で日本の可変式フォーメーションに気づいて対応。対する日本代表はスペイン代表の修正に合わせて次の一手となるフォーメーションに移行。

 


そんな戦術的攻防を、前半開始から日本は仕掛け続けていたと。

 


これだけでも驚きなのですが、この緻密な可変式フォーメーションはチームとして4年間コツコツ積み重ねてきたものではなく、コスタリカ戦から中3日で仕上げたものだった!と言う事実が世界に衝撃を与えているんです。

 


森保ジャパンは選手とスタッフが同席して戦術ミーティングを行ない、そこでは若手からベテランまで年齢を問わず活発な意見が飛び交う。そのうえで、森保監督が選手起用と戦い方を決定し、選手に指示を出す。世界的に見ても希有なアプローチ法でW杯を戦っているそう。

 


スペイン戦に関しては、コスタリカ戦後に予定していたプランをチームで練習したら、選手からいろいろ提案があって、スペイン戦まで残り2日で話し合いと戦術の落とし込みを行なった、と森保監督や各選手コメントから聞かれています。

 


フォーカスされているのは、鎌田選手が所属フランクフルトでバルセロナに勝った時のやり方ですが、久保選手もスペインリーグでバルセロナと何度も対戦していますし、スペイン戦終盤で見られた冨安選手の守備固めのサイドバック起用もプレミアリーグアーセナルでよく見る形。

 


今回の日本代表は、単に海外組の人数が増えただけでなく、選手の所属リーグは、日本、ドイツ、スペイン、フランス、イングランドスコットランドポルトガル、ベルギーの8か国。この所属リーグの多様さは他出場国にはあまり見られないよう。

 


その多様な経験を持った選手たちがアイデアを出し合って最終的に戦術を決めた、とのこと。確かにスペイン戦2日前にして「まだチームの軸は決まっていない」との選手コメントがあり、未だ軸が決まってないってヤバいでしょ、という報道がされていましたね。

 


そんな試合前日だけの練習で戦術が浸透するわけもないし、付け焼き刃戦術でスペイン相手いやW杯本戦で通用するわけがない。それを日本がやってのけた訳ですが、そのやり方がオープンになった今も「日本以外の国では絶対にできない」と言われています。

 


そして元日本代表FWドラゴン久保竜彦は、エゴの強い選手が集まる代表であんな戦い方(合議制+前半耐えしのぶ)したら普通チームが空中分解する、相当選手の信頼を得て森保監督が上手くやっているはず、と解説しています。

 


確かに、過去のW杯において、監督の戦術や采配に選手が納得いかずに内部分裂、なんて報道は他国でチラホラありましたよね。

 


また今回の日本代表では、前線の前田選手、鎌田選手、久保選手に対して直接得点に絡んでないことの批判の声もありますが、8割と相手がボールポゼッションする展開において、日本のファーストDFとして守備的タスクを戦術的にこなし、相手の体力と思考力を削ることが後半反撃の伏線になっているとの解説を複数の専門ジャーナリストはしています。

 

 

 

森保監督は4年の準備期間で戦術的な積み上げがないという批判を受けていましたが、実は4年間で積み上げていたのは、チーム内の信頼関係構築と選手の自主性・主体性、フォアザチーム精神の浸透だった、どうやらそれは結果論ではなく計画だったようなんです。

 


メンバー選びもそうです。監督が軸として考えていた戦術に合う選手を選ぶだけなく、臨機応変に対応できるサッカーIQや自己犠牲を厭わない献身性、所属リーグやチームの戦術とコミュニケーション力などなど。

 


吉田選手、長友選手はもちろん、出場がない柴崎選手、川島選手は監督と選手をつなぐ中間管理職的な役割を果たしているという話しもあるよう。前回W杯まで長谷部元キャプテンがしていた役割ですよね。

 


(個人的には、コスタリカ戦に柴崎出なければ何で連れてきたんだよ!と思っていましたが、まさかこんな役割だったとは…)

 

 

 

長くなってきたので、一度まとめます。

 


もともと周囲に合わせる力が高い日本人。

 


日本人は、今や欧州の多様なトップリーグで最先端戦術を経験しながら戦っている。

 


そして、森保監督はトップダウン的な組織運営でメンバーを決められたフォーメーションや戦術の型にはめようとするのではなく、各選手が戦術コーチ的に自分の経験を周囲に積極的に還元できるようなボトムアップ式の組織づくりを行った。

 


そんな現在のサッカー日本代表は、経験的「多様性」と国民的「協調性」が共存するチームとなっている。

 


そんな解釈ができるかな、と。

 

 

 

世代論と対人援助との関連については、後半で。

 


ちなみに、いくつかある解説で、一番参考にしているは小澤一郎さんのチャンネルです↓

 

新しい景色は今の「日本代表」そのもの|木崎伸也さん スペイン戦 振り返り

https://youtu.be/mAYpc6WlhmQ


今回コラム副題は完全にパクリです。


ご興味ある方は見てみてください。コメント欄の皆さんの組織論もなかなか興味深いです。

 

 

 

ではでは。