LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第1回】子どものグリーフを支えるワークブック~場づくりに向けて

管理人


おはようございます。

朝から長文すみません。勢いでコラム書ききってしまいました。お時間のある時に眺めてください。


コラム第1回で紹介する本はこちらです。

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●目次
1 子どもにとっての死別体験
2 ファシリテーションというよりそい方
3 ファシリテーションを支えるスキル
4 グリーフプログラムの実際
5 スタッフのケア
6 グリーフプログラムにおけるディレクターの役割
7 保護者のサポート


●内容紹介とコメント
この本の注目点は、2つです。
①喪失、グリーフについて
まず喪失体験を「死別だけでなく、離別や失恋、引っ越しや卒業などに伴う別れ」「また、虐待やいじめなどを受けた子どもは自尊心や自信といった自身の尊厳に関わる喪失」としている点です。

ここまで支援対象が広いと、我々が児童福祉関係で接する子どもたち全てが何かしらの喪失体験を経験して今に至るといっても過言ではないですよね。

あと、グリーフに対するサポートについて、日本では「グリーフケア」と言う言葉が主流になっているが、英語では「ビリーブメントサポート」と言うそうです。そして支援カウンセリングや医療などだけではなく、ピアサポートやソーシャルサポートも必要なことから編著の「NPO子どもグリーフサポートステーション」では「グリーフサポート」という言葉を使うようにしている、と。

単純にへぇ〜と思ったのと同時に、根本的な支援の考え方は児童福祉分野の支援と重なるなぁ、と思いました。
確かに「ケア」というと専門家しか出来ないとか、白衣的なイメージが頭に浮かびがちですが、「サポート」といわれると色んな立場の人が日常の何気ない中で様々なことや役割を担えるのかな〜という印象を僕は受けました。

※ちなみに本書の用語の定義
「グリーフ」
:喪失体験に伴う愛惜や悲しみなど様々な感情
「グリーフ反応」
:喪失体験に伴う身体的・精神的・社会的反応
「グリーフサポート」
:日常的なサポート、わかちあいなどのサポート、専門家によるサポートを含め、喪失体験後の心理的、社会的総合的なサポート
(本によって定義は多少異なります。また別の本を紹介する時には、定義の違いも注目ポイント)


②実践者養成の視点
   そして本書の最大の注目点は、このワークブックが、喪失体験をした子どもたちを支える実践者養成のために作成されたもの、という点です。
   目次で言う2章3章それぞれを詳しく紹介します。

2 ファシリテーションというよりそい方
   1)ファシリテーター(手助けする人)の役割
   2)安全な場をつくる
   3)子どもとのコミュニケーションを阻害する要因

この中でいくつか印象的な部分をピックアップすると
◼︎何がファシリテーターで、何がファシリテーターでないのか
※聞き手であり、話し手ではない。
※リードしない、サポートする。
※気付きは強要しないが、相互作用(一緒に遊ぶ、お互いに話し聞く)というプロセスの中で気付きを促す。
※「場」のルールを徹底し、安心安全な「場」をつくる。

◼︎事前にしておきたいファシリテーターのこころの準備
※自分の喪失体験も自覚をしておく。
※自分の体験と子どもの体験を混同しないで聞くこと。焦点を当てて聞くのは子どもの話しという自覚。子どもの体験を聞きながら「自分の体験と比較する」などすぐさま自分の体験を持ち出さないこと。
※思いがけない、びっくりするような自分自身の体験がでてきたら、自分のための時間をつくり、自分を大事にする。

◼︎子どもをコントロールする(コミュニケーションを阻害する)言葉と態度
※やりたいことをさせない。
※子どもが言いたいことを、「それはこう言うこと?」と確かめずに、「きっとこうだろう」と思い込むこと。
※ルール以外のことで、自分の価値観を押し付け、そうさなくてはならないとせまる。
※話を聞いているつもりが、いつの間にか自分の体験談や持論を延々と話している。


メンバーの皆さんはすでにお気付きと思いますが、上記の内容は静岡LSW勉強会で大切にしていること、まさにそのものですよね。LSWがチームアプローチであり、勉強会が話し合いの「場」であることを考えると、ファシリテーターの視点は非常に重要と僕は思っています。
そして、喪失体験のサポートに関するグループアプローチのファシリテーター養成について、ここまで特化して具体的に書かれた本は、僕は初めて出会いました。


さらに、3章について

3 ファシリテーションを支えるスキル
   1)自覚のスキル
   2)リフレクション(反映)スキル
   3)会話のスキル
   4)セルフケア(自覚のスキル再び)

この章で強調されているのは、プログラムに関わるスタッフとして、最も大切なスキルは「自覚のスキル」であるということ。相手を理解したりサポートする前に、まず「己を知る」ことが重要ということですよね。

さらに「リフレクション」「会話のスキル」は、静岡県で行われている「面接スキル」の内容そのものです。相手の感じ方を尊重し、相手の言葉やオープンクエスチョンを使いながら、表情などの非言語メッセージ、さらに相手のエネルギー量についてペースを合わせ「どんなあなたでもOK」「存在そのものを受け入れていること」を実感してもらうこと、とされています。

そして最後に立ち戻るのは「自分自身を大切にすること(セルフケア)」。

やはり、どんな種類の対人援助においても、ベースになるのは、目の前の人も自分自身の存在も尊重し大切にするマインド、そして謙虚にしっかり話しを聞く姿勢、その聞く姿勢を適切に表現する面接スキル、なんだなと。基礎がしっかりしてこその応用だなと。


●最後に
  この本は、LSWに臨む支援者の基本的な姿勢と、自分も含め静岡LSW勉強会のメンバー全員が忘れてはいけないことが詰まっている気がします。これが第1回コラムに本書を取り上げた理由です。
   薄っぺらくて絵も可愛くて写真も多くて読みやすい点もgoodです。初心を忘れないために時々ペラペラめくりたい本です。
   もし興味あれば、一読ください。


しばらくは「喪失」「グリーフ」関連の書を紹介していく予定です。

ではでは。