LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第62回】視線と脳のつながりとLSW

メンバーの皆さま
 
こんにちは。管理人です。
 
2/2(金)から長野に仕事で来てまして、現在、帰りの電車に揺られています。
 
名古屋まで「特急ワイドビューしなの」で約3時間。長野県北部にある
長野市から山の中をズンズン南に下って進んでいくのですが、天気も良くて雪景色が見事です。
 
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新幹線には毎日通勤で乗っているのですが、さすが「特急ワイドビューしなの」だけあって窓も大きく視界が開けてますし、走るスピードも景色を眺めるのに早過ぎずちょうど良く、たまには特急電車の旅も良いものですね。
 
そして縁あって、今日の午前には、長野県の現場の方々とLSWについて語り合う勉強会を設定してもらったのですが、やはり現場でコツコツ何気なく素晴らしい実践をされている方はたくさんいますね。
 
昨日今日と、長野の方々とキレイな景色に癒され、新たなアイデアと元気エネルギーをもらえた感じがします。
 
 
で、今回コラムの本題はここから。
 
まず前フリなのですが、心理学の中のNLP神経言語プログラミング)」というものがあります。ご存知の方もいると思います。
 
簡単言うと、人は情報処理に使っている感覚やチャンネルの感度・優先度が違うという話です。
 
 
例えば、
 
 
 
 
「浜辺に遊びに来たところを想像してください」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
はい、実際に想像してみて下さい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
現在、真冬ですからね…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
想像できましたか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この時、どんな情報から想像したかで、ご自身の優位な感覚がわかります。
 
 
 
 
 
例えば「明るい日差しが…」「白い砂浜が…」
という【視覚的】イメージがまず思い浮かべる人もいます。
 
また「波の音が…」「カモメの鳴き声が…」
という【聴覚的】な情報から入る人もいます。
 
はたまた「爽やかな風が…」「足裏の沈む感覚」
といった【身体感覚】から想像する人もいます。
 
まとめると、こんな感じです。

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人間五感が働いてますから、どの感覚だけという事ではありません。五感が同時に働く中で、得意な感覚、不得意な感覚のバランスは人それぞれという事です。なので、同じ現象を共有しても、感じ方や主観的体験が異なることが起こります。
 
特に発達凸凹のある子は、どこかの感覚が凡人の平均枠を超えて敏感だったり鈍感だったりするので、他の人に体験を理解してもらったり共感してもらいにくく、「なんか私がおかしいんじゃないか」なんて思いやすいわけです。
 
また、感覚が尖っていると受けるインパクも大きくなってしまうので、凡人なら忘れてしまう事でも大衝撃で、変にこだわったり忘れられなかったりして、周囲から変な目で見られるみたいな。
 
トラウマ体験のダメージの受け方や忘れにくさも、このような感覚の違いは大きく影響していると思います。
 
 
という事を対人支援に応用して、目の動きのパターンを観察することで、どのように情報処理しているのかを読み取ることをNLP神経言語プログラミング)では「視線解析」と呼ぶそうです。
 
具体的には、上下左右目線の動きによって、
 
右上 ⇒ 視覚的創造
右  ⇒ 聴覚的創造
右下 ⇒ 身体感覚
 
左上 ⇒ 視覚的記憶
左  ⇒ 聴覚的記憶
左下 ⇒ 内部対話
 
こんな情報にアクセスしていると。
 
表にすると、こんな感じ。

視覚的記憶

↖︎        ↗︎

視覚的創造

聴覚的記憶

←  👀  →

聴覚的創造

内部対話

↙︎        ↘︎

身体感覚

 
 
で、本題の本編はここからなんですけど、この前、ある障害型障害児入所施設(つまり知的障害の子どもの施設)で、来年度の高等部卒業を控えた子に、LSW的な取り組みをした時のこと。
 
施設職員さんと打ち合わせの中で、退所後の本人の社会生活を見据えて、あと残り1年ちょっとの施設入所期間で取り組んだ方がいいだろう課題(異性関係の心配)への動機付けとして、
 
「そもそも施設に入所した理由」
「入所前の生活変遷、家族イメージ」
「卒業後の生活の希望」
 
等を本人がどれくらい認識して語れるのか語れないのか、また気になっているけど聞けなくてモヤモヤしていることはないのか確認しよう、ということになりまして。
 
で、僕がホワイトボードに図を描きながら、
 
「一般的に、施設で暮らす子はいろんな家族の事情(お金、病気、死亡、失踪、虐待など)で施設入所するけど、施設で暮らす理由を知らない子や知りたいけど聞けない子は結構いるんだよ」
 
「この施設にいて職員さんや児童相談所が関われる間に、もし気になっている事があれば、調べてわかることは伝えたいし、(課題について)退所する前に知っておいて欲しい事の話もしたいよ」
 
というような事を、担当の職員さんと一緒にホワイトを眺めながら聞いてもらったんです。
 
すると、
 
「ちょっといいですか?」
 
と、子ども自ら手を挙げて、
 
入所の日付から、入所時に連れ添った児相職員のこと、
施設に来る前こんな事があってコレは覚えてる、
コレはわかんない、けど気にならない、とか
この先こんな生活をしたい、とか
 
ベラベラ喋るんです。
 
その語りをホワイトボードにメモしながら、流れに乗りつつ質問したりする中で、そんなに言語化が上手い子ではないので、その時は「思ったより良く語れるなぁ」くらいな感覚だったんです。
 
で、終わった後にホワイトボードを眺めると、
 
 
右上 ⇒ 卒業後で生活する場所の図
右  ⇒ そこでの生活の希望
 
真ん中⇒ 今の施設の図
 
左上 ⇒ 入所前の生活の変遷図
左  ⇒ 家族や入所時について語り
 
 
になってるんです。これ見て「あれ?もしや」と思いまして。
 
       【過去】          【現在】          【未来】

視覚的記憶

↖︎         ↗︎

視覚的創造

聴覚的記憶

←  👀   

聴覚的創造

内部対話

↙︎         ↘︎

身体感覚

 
 
そう、この表と時間の流れ[左右]だけじゃなくて、感覚のチャンネル[上下]とも何となく場所が一致している…。
 
 
ここからは、僕の根拠のない感覚的仮説なので、そのつもりで。
 
「視線の動き」と「脳」のつながりの話は、最近よく耳にして、
 
例えば、発達障害系の子は、視線が合わなかったりしますが、そもそも目の動かし方が上手くないということで、「ビジョントレーニング」という視線の動きのトレーニングから情報処理の不具合にアプローチする方法が出てきています。
【参考】LITALCO発達ナビ
 
また、トラウマ治療の中では「ブレインスポッティング(BSP)」という視線と脳のつながりを利用したトラウマ処理の方法が徐々に知られてきています。
【参考】ブレインスポッティグ・トレーニング・インスティチュート 日本
 
 
僕はどちらの研修も受けれてないので、あくまで推測ですが、NLP神経言語プログラミング)では「視線解析」でその時に情報処理に使ってる脳のチャンネル(部位)を知るという文脈でした。
 
しかし逆に、ビジョントレーニングやBSPでやっていることは、視線誘導することで意図的に使用する脳バランスにアプローチできる、ということだと思うんです。
 
もう言わんとすることは察していただいていると思うのですが、BSPもエビデンスが十分でないと書いてありましたので、あくまで仮説です。
 
もしかしたら、自分でも知らず知らずのうちに、ホワイトボードによる視線誘導によって記憶や創造のアクセスを促していたのでは、という事です。
 
もちろん、使い方を間違えると、引き出したくない記憶にもアクセスしてしまう可能性もあるので、きちんとした勉強や訓練が必要です。が、視線を応用すれば、より安全かつスムーズなLSWでの語りを促すことが可能になるのでは、という気づきです。
 
ビジョントレーニングやBSP研修を受けたり勉強すれば、確信に変わるんでしょうけど、こういう研修代って高いんですよね…。まぁクライエントの脳のバランスを整える前に、日程と家計と家族のバランスを整える方が大事(これが難しい…)なので仕方がないですね。
 
と思ったら、最近「ビジョントレーニング」の研修を受けたと言っていた同僚がいる事を今思い出しました!
 
その時は「へ〜」って位の薄いリアクションで、今思えば申し訳ない感じの反応だったと思うんですけど、改めて詳しく話を聞いてみようと思います。
 
まぁ、今回たまたま面接室が大きく、ワイドビューできる大きなホワイトボードもある部屋だったので偶然にも起きた体験だったとは思うんですけど、実体験での「気づき」を伴わなうか伴わないかで、同じ情報提示でも感じ方って全然違うし、やっぱりタイミングって大事だなぁ、とつくづく思います。
 
ホント、どこでどんな気づきが起こるかなんて、わからないものですね。
 
ではでは。