LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第76回】シリーズ人体と「メッセージ物質」

メンバーの皆さま
 
こんにちは。管理人です。
 
静岡では桜もだいぶ咲いてきました。
 
この時期は、担当の子の卒業や自立に立ち会う機会が多くて、もちろん慌ただしくはありますが、初々しくウキウキした姿や新居を見ると、なんだかコチラまで嬉しい気持ちになりますね。
 
僕は来年度で児相在籍10年目になるのですが、幼児の頃から知っている子が立派な中高生になっていたり、自立していく姿を見るのは感慨深いものがあります。
 
そして、ようやく観ました。
 
NHKスペシャ シリーズ人体 6 " 生命誕生
 
この時期にこんなの観ると「こんな小さな受精卵から、よくここまで成長して…」なんて気持ちに拍車が掛かりますね。3月放送なんて、NHKはコレを狙ってたでしょうと思ってしまいます(笑)
 
 
シリーズ全体を通してのキーワードは「メッセージ物質」で、気持ち面だけでなく内容も非常に面白かったので、忘れないうちに感想を綴ります。
 
 
まず印象的だったのは、シリーズを紹介するエピローグ「命を支える "神秘の巨大ネットワーク"」
 
これまでの医学では、脳が各臓器に指示命令を出しているというのが定説だったのですが、最新の科学では各臓器がそれぞれ「メッセージ物質」を送り合って「対等に対話している」という。
 
例えば「疲れた」「水分が足りない」「食べ過ぎだ」と各臓器が直接メッセージを発信。そのメッセージ物質は血液を通じて各臓器に伝わり、それに反応して各臓器が色んな働きをすると。
 
脳から出されるメッセージ物質は「アドレナリン・ドーパミンセロトニン」など色々あるが、決して脳だけが他の臓器とやりとりしているわけでも一方的に命令を出しているわけではないと。
 
その話を聞いたタモリが語っていたのが「20年前にボツにした」ネタの話し。それは内臓の物語で、腸が他の臓器に「俺は内臓の中で虐げられている!」と訴えるネタだと。
 
俺は一番低い位置にいるし、脳は高い所から偉そうに支持するし、きっと俺が馬鹿にされるのは肛門に繋がっているからだ!なんて。
 
タモリは「シュール過ぎるかなと思ってやめた」と言っていましたが、ips細胞の山中教授は「まさに僕の学生時代はそう言う教育だった」と共感していて、博多華丸・大吉の大吉先生は「それ内村さんにお願いして(NHKのコント番組)LIFEでやってもらいましょう」なんて盛り上がっていました。
 
 
 
あれ? 
 
 
 
聞き覚えのある話し…。
 
 
 
この話ややりとりをTVで観ていて、僕は不思議な気持ちになりました。
 
 
 
当ブログ読者の方ならピンと来たかもしれません。「臓器同士の対等でオープンな対話」って、「まごのて blog」で何度も扱っている静岡LSW勉強会のコンセプト"そのもの"なんです。
 
勉強会で体験して、LSWの場で連鎖的に起こって欲しい現象、それは我々の人体の中で起こっている正常で健康的なやりとり"そのもの"なんだなぁ、と。
 
 
そして連想的に頭に浮かんだものは、
『【第18回】「cure」と「care」の違い』
で扱ったhealのイメージ。
 
〜語源はギリシャ語の【holos】「完全な姿(本来のあるべき姿に戻る)」だそうで、healに状態を表すthを付けて【health】「健康」になる、と。 
 
〜【healing】「ヒーリング」と聞くとスピリチュアル的なちょっと怪しいなぁと思う方もいるかもしれませんが、西欧的に言えば、競争社会で交感神経(興奮覚醒)過多になりやすい現代人の「副交感神経を優位にする」癒し系音楽とか、東洋的に言えば「気の流れが良くなる」ツボとか、一つに繋がっている心身のバランスや流れの「偏り」や「滞り」を整えて、心身が本来の持っている健康的な状態に「調整」するのが、僕の【heal】イメージです。
 
と、その時は書いたのですが、メッセージ物質が人体の中で上手くやりとりできている状態というのは、本来のあるべき姿【health】「健康」であって、その各臓器同士の正常で健康的なメッセージ物質のやりとりを東洋医学では「気の流れ」という言葉で表していたのではないかと。
 
言い換えれば、これまで東洋医学的に「気」として扱って来たものを、「メッセージ物質」という西洋医学的で科学的な用語と文脈に乗せて説明しただけではないかと。
 
これは、あくまで僕の連想とイメージですけど。そんなに目新しいことを言っているわけではなくて、人間が感覚的直観的に掴んでいることに科学が追いついただけ、そんな気がしたんです。
 
 
 
 
それと、今回放送の
“生命誕生”見えた!母と子 ミクロの会話
で印象に残った話を2つ。
 
ひとつは、受精卵が子宮に着床すると「ここにいるよ!」というメッセージ物質を出して、それが血管を通じて母体全体に浸透するから受精卵が流れないように身体が変化するという話。
 
受精卵の段階から「母と子の会話」は始まっているんだと。「ここにいるよ!」のメッセージ発信への応答を母体がしなければ、受精卵は排出され命として成長していかないんだなぁ、と。
 
これは愛着(アタッチメント)形成にとても重なるなぁ、と。愛着形成は、言語レベルのやりとりではなく、養育者が非言語レベルの目線や表情から子どもの気持ちをいかに察して想像し、情緒的な応答できるかによると言われていますよね。
 
簡単に言えば、言葉にならない鳴き声一つで、養育者がどの程度赤ちゃんの気持ちニーズを察知して、気持ちに合わせた応答してあげられるか。
 
受精直後から非言語の発信と応答はすでに始まっている、母体の一方的な察知や異物反応ではなくて「メッセージ物質による対話」であるというは驚きでした。
 
 
もう一つは、各臓器の作られ方について。臓器の中では心臓が最初にできるそうですが、そのあとは心臓が分裂する細胞に「お前◯◯になって」というメッセージを出して、その後は出来上がった臓器同士が「◯◯になって」というメッセージを細胞に出し合いながら、次に出来る臓器が決まっていく、このようなプロセスで人体ネットワークが出来ていくと。
 
そして、この"ドミノ式全自動プログラム"と呼ばれる細胞同士が対話して臓器が次々に作られていくプロセスを人口的に再現できるようになったのが、山中教授が発見したips細胞、その元になったES細胞なんだそう。
 
注目は山中教授のメッセージ物質の密度とタイミングが少しでもズレる」と、臓器の生成が上手くいかない、という話し。
 
メッセージの「密度」と「タイミング」が少しでもズレると、なんて…まさに子育てや虐待、家族関係の相談で支援者が扱ったり調整したりしているもの"そのもの"ですよね。
 
もちろん「LSW」でも、その重要性は変わりません。密度とタイミングか合っているかって、いかに相手のニーズをきちんと捉えているか、そこにかかっていると思います。
 
改めて思うことは、個の「人体」の中で自然と起こっている健康的なミクロのやりとりを、対人援助場面で、社会全体でという風にマクロでも再現する事がやっぱり自然で無理がない健康的なやりとりだよなぁ、と。
 
結局、人の集まりを「一つの集合体・生命体」として見れば、個でも家族でも組織でも地域でも、目指す健康的な形や本質はそう変わらない。
 
何となくは思っていたし考えていた事ではありますが、こうやって科学的にわかりやすく放送して伝えてもらえていることが、何か日々やっていることの励ましや応援のように勝手に思いながら観ていました。
 
まだ最終回は残っていますけど「シリーズ 人体」を通して、そんな連想や気持ちが浮かんだという感想でした。
 
ではでは。