【第47回】漢方医が語る西洋医学と東洋医学
メンバーの皆さま
おつかれさまです。管理人です。
昼間は暖かい日が続いていますね。予定帳を見ると「もう今年も終わっちゃうな…」なんてしみじみした気分にもなりますが、つかの間の「過ごしやすい秋」を味わいたいですね。
前回、西洋東洋の文化差やマインドフルネスなんて話題に触れたら、ちょうど関連するような記事( 『命の繋がりを自覚して生きる』致知2017.11月号) を見たので、今回はそこから。
■健康の本質を見ていない医者
~病気や死が怖かったんですが、私の場合は、
~ところが、これまで長生きできると思っていたのに、
~理由はいろいろありますが、
~毎年忘年会シーズンになると、「食べる前に飲む!」
~これに対して東洋医学は「体に悪いから、暴飲暴食はするな」
~けれども西洋医学は、傷を覆ったり、
■文字にできない技能をいかに習得するか
~外科と漢方というのは、実はよく似ているんですよ。
~言語化できる客観的な知識のことを「客観知」といい、
~漢方には「証」というものがあります。
■自分の体の声をよく聴くこと
~まずご理解いただきたいのが、
~その上で大事なことは、
~体というのは、
~漢方の何がいいかというと、
●コメント
僕の知り合いで「飲み会前にウコン飲むと調子良くなって呑みすぎちゃうから」と言ってウコンの力を飲まない人がいます。「ウコン飲んでるし大丈夫かぁ」と限界以上に呑んじゃうことに歯止めをかけてるそうです。確かに、身体のためにウコンを飲むなら、そもそも暴飲しないのがいいわけです。その人は それで結構なハイペースで呑みますけど(笑)
〜薬があるから病気になってもいいという発想が西洋医学のベースにはあるんです。
は極端な表現かもしれませんが、桜井氏が言う「健康の本質を見ていない」とは、おそらく「木を見て森を見ず」の状態。西洋医学は局部としての「病気」は見ているが、身体全体や生活全体のつながりとしての「健康」を見ていない、ということかなと。
僕の中では、西洋医学はキュア(cure)、東洋医学はヒール(heal)のイメージ。 どちらも万能というわけではなく、状態に合わせてより効果的な方を選択したり併用すればいいんだと思います。
木(部分)を見るのか森(全体)を見るか、何を撮りたいかの構図によってカメラズームが変わるように、状態に合わせて何に焦点を当ててアプローチするのがいいのか、両方検討しながらベストな形を探して行くことが大切なんだろうと思います。
※参照:【第18回】「cure」と「care」の違い
また、第18回コラムで【heal】の語源が、ギリシャ語の【holos】「完全な姿(本来のあるべき姿に戻る)」で、healに状態を表すthを付けて【health】「健康」であることに触れましたが、東洋医学の考え方は、人間がもともと持っている治癒能力を活かしたり高めたりする【heal】のイメージが僕の中にはあります。
きっと東洋的に言う「気の流れ」って、人が本来あるべき状態かどうか、本来持っている維持機能が正常に動いているかどうかの「流れ」を指して言っているのではないかと思うんです。僕は気功師ではないので推測ですが、あくまで。
僕自身、数年前までは、漢方とか気功って根拠はないし、気の持ちようじゃないかなぁ、なんて懐疑的な思いが正直ありました。しかし、これって、一般の多くの人の感覚なのではないかと思います。
ところが、気功の施術によってホルモンバランスが整えられたり、ドーパミン分泌や脳の部位の活性化が確認されているみたいですから、まさに「気のおかげ」で生理学的な変化が起こっている説明は付くようです。
また言葉を替えれば「気の流れが悪い」「邪気がある」というのは、おそらく生理学的にはホルモンバランスの崩れや機能不全を「気」で 察知して言っているんだろうなと思います。
じゃあ、それをどう察知するのかという話になるわけですが、それは言葉にできない「暗黙知」であり、感覚感性的なものということになると。
処方箋にあたる漢方の「証」も「その時の体の状態のパターンや、特定の漢方薬が効く状態のパターンのことですが、客観的なデータで判別されるものではなく、言語化できない雰囲気や何となくの感じが大事にされるんです」
と言うように、ブルース・リーの「Don't think. Feel」の世界ということ。
しかし、これは東洋医学に限った話じゃなくて、外科医の世界でも、音楽や料理でも同じことが言えます。同じレシピや楽譜があったとしても、 「腕」や「道具」の違いで、味や音色は全く違うし、全体の仕上がりは他の人が簡単に真似ができるものではない「暗黙知」ですよね。そして、芸術や表現の世界では、 独特な感性が希少価値として重宝されることも珍しいことではありません。
ただ【第42回】コラムで、
〜母親の影響を受けにくいセロトニン・トランスポーターの長いタイプの多型を持つ子どもは、 白人は6割だが、アジア人種は1/3にとどまる
とあったように、集団の感度の違いによって、より良い伝え方に、歴史文化的な変遷があった結果の違いなのかもしれないなと思うんです。
誤解をおそれず単純化すると、おそらく欧米人の多くは「頭で理解→実践→感覚感性を磨く」の順がわかりやすいし、日常生活もそういう思考で動いているし、そのような説明を作るのも得意。
一方で、多くの東洋人は感性が高く、良くも悪くも周囲に影響されやすいので、「雰囲気で感じ取る→実践→感覚的に経験を体系化して整理する」方が自然で日常的だし、「身に付く」とか「腑に落ちる」とか身体を使った言い回しが多いのは決して偶然ではなく、伝統的に学ぶとはそういうもんだと思っているので「なんとなく」「普通わかるでしょ」で済ませちゃう、
そんな傾向がある気がします。なので、ハッキリ言って言語化理論化という部分では西洋文化は優れていると思います。しかし、自分や相手の機微や雰囲気を察する感覚的なものは、東洋文化の人の方が平均的に高いと思うんです。
どちらが優れている劣っているではなく、人の能力に凸凹があるのと同じように、文化的な集団的な得意不得意はあるので、得意を伸ばし不得意をどう補うか。特性に合わせた成長・子育て支援のニーズは、個も集団も本質は変わらないよな、と思います。
~体というのは、病気になる前に必ず何らかのサインを発しているはずですから、自分の体の声をよく聴くことが大切です。
~漢方の何がいいかというと、自分の体の変化を感じる訓練になるんです。
これって、子育ても対人支援も感じるものが「相手」になっただけで似ているよなと思います。
基本的には子どもやクライエントが発信したニーズをキャッチし適切なタイミングで応答できるか。 そして、その中には何か具合が悪くなりそうなサインも含まれているわけで、そこを的確にキャッチして大事に至る前に早めの対処ができるかどうか。サインを見逃し放っておいて、激痛が走ってから慌てて手術するのは本来のあるべき支援やお世話の順番ではないと思います。
それでも事情があってやむなく悪化してしまった部分へのピンポイントのアプローチは「西洋医学」の得意分野、本来の健康的な心身の状態に近づける全体的なアプローチは「東洋医学」の得意分野。
視野の広いお医者さんは、この西洋東洋の特質や得意分野を踏まえた上で、西洋薬と漢方薬を併用してアプローチしてくれますよね。
【参考】健康Saiad「西洋薬と漢方薬の違い」
対人援助でも似たような整理やコンビネーションが必要だと思うんです。今の自分が担っている役割やアプローチは局部なのか大局なのか、応急処置なのか継続支援なのかをわかっていること。そして、一人で全部は担いきれないので、片方は信頼して任せることで自分は別の役割に専念できるように、チームで意思統一して役割を分担していく。それが「連携」ですよね。
ごちゃごちゃ書きましたが、LSWの発想って漢方や東洋医学に近いのかな、と最近思うんです。部分じゃなくて全体的な視点。抗生物質みたいな即効性じゃなくて漢方薬みたいにじわじわ効いて、本来持っている力を引き出すみたいな。
そしてLSWでは「時間志向」が、東洋医学でいう「気」に近いイメージかなと僕は思っています。時間志向とは「過去ー現在ー未来」のどこを考えているかということ。そのグルグル考える流れというか、頭や意識の中で過去や未来を行ったり来たりするスムーズさを、本来あるべき状態に整えたり整理するのがLSWの僕のイメージです。
なんですけど、「ライフストーリーワーク」と言う横文字の表記が西洋医学的な治療をイメージさせる誤解が起こりやすいなぁと思います。頭の中で、支援=西洋的「治療」に凝り固まっていると、即効性がないと支援に意味がなかったんではないかと不安になる人も実際には多いことは、現場で話をしていてすごく感じます。
ただ、「時間精神医学」には、時間志向の焦点化が偏っている人がどのような状態になるか、また精神障害が起こると時間感覚はどうなるか、どのように支援するか感じ取るヒントが散りばめられているな、と思って未整理のまま紹介だけしました。
(詳細は【コラム】「バイオサイコソーシャルアプローチ」を参照ください)
ある意味、まごのてblogは「暗黙知」の言語化に無謀ながら挑戦して試行錯誤しているみたいなところがあります。なので話題があっちこっち行ってしまうのはお許しください。
そういう他人の混沌としてあやふやな、あーでもないこーでもないと考えるプロセスを共有いただいて、メンバーや読者の皆さまの思考や内省を深めるお手伝いに少しでもなれば幸いです。
ではでは。
【第46回】愛着形成とオキシトシン
メンバーの皆さま
こんばんは。管理人です。
はやくも11月ですね。だいぶ朝晩は冷えてきたので、 毛布と布団をかけて寝るようになったら、 秋を通り越して冬気分になりました。
少しでも過ごしやすい秋が続いて欲しいものです。
で、今回「胎児は知っている母親のこころ」の『第7章「親密さ」 という魔法』 という愛着とオキシトシンの話をもって本書は終わりにしようと思 ったのですが、いろいろ調べているうちに、 どんどん書きたい情報や連想が膨らんでしまったので、 調べたことを思いのままに書かせてもらいました。
一応、後付けで3つのトピック(アタッチメントの生物学/ 社会文化的な適応とオキシトシン/過去の語りとオキシトシン) に名付けてみましたが、 かなり思いつくままに継ぎ足し継ぎ足しで書きましたので、 多少の散文はお許しください。
●コラム
愛着(アタッチメント)とは、 子どもと養育者との間に生まれる絆のことを言います。
「愛着」は、愛着理論の専門用法を指しているので、 一般の愛着と勘違いのないように今回はあえて「アタッチメント」 と呼びます。
(※愛着の一般的用法と専門用法の違いは【第29回】 コラム参照)
■アタッチメントの生物学
アタッチメントという現象の特異な点は、 心理学的のみならず生理的、身体的な結びつきということ。 そして、愛着は生物学的な現象であり、 その歴史は人類の歴史よりはるかに長いものだそう。
アタッチメントには、 いくつかの生物学的な仕組みが関わっていますが、 中でも子育てに特に深く関わっているのが、 オキシトシンというホルモン。オキシトシンは、別名「 愛情ホルモン」「幸せホルモン」と呼ばれていて、 ストレス緩和や不安の鎮静、 また安心感や幸福感を高める作用があります。
オキシトシンの不思議な性質は、その相互的な関係性で、 母乳をあげている時、 大量にオキシトシンが分泌されることがわかっていますが、 それは世話を受ける側だけでなく、 世話をする側でもオキシトシンが分泌が促され、 双方に幸福感をもたらします。
ちなみに、下記の記事『オキシトシン分泌を増やす方法とは!? 専門医師が解説! vol.2』等によると、
性行為やエステなどの触れ合いでもオキシトシン分泌は起こると。 確かに、どんなに匠の技を再現した最新式マッサージチェアーでも 、やっぱり人の手によるマッサージとは違うなぁと感じるのは、 オキシトシン分泌が関係していたということなんだと思います。
ただ、 メールやLINEのやり取りではオキシトシンは分泌されないとい う事ですから、精神的な触れ合いとは、会話おしゃべりの内容( 文章として何を言ったか)ではなく、視線があったり、 応答する声の調子や大きさ・ タイミングといった非言語的なやりとり( どのような様子で言ったか)を指しているという事です。
また、 ペットや動物とのスキンシップでもオキシトシン分泌されることや 、 恋人などと視線を合わせる行為でお互いにオキシトシンが分泌され ること、そして、 愛犬と目を合わせると人間側にはオキシトシンが分泌されるという 報告もあることから、精神的触れ合いや情緒的やりとりが、 いかに言葉を介さないものかがわかります。
これは従来「情動調律」と呼ばれて説明されている、 赤ちゃんの情動(瞬間的で持続しない喜怒哀楽。 感情は気分など比較的弱くて持続的な気持ちも含む広い概念) に大人が応答することで感情調節を身につけていくというシステム でも説明できて、これを生理学的に言うとオキシトシン・ システムの獲得になるということなんだと思います。
【参考】『情動調律〜感情の調整力や安定性はどこから発達する? 〜』
また、オキシトシンには、痛みや辛さを和らげる作用もあるので、 女性が出産の激痛を乗り越えられるのも、 陣痛と同時に大量に放出されるオキシトシンの働きによるもので、 その後、 出産後のボロボロの身体にも関わらず寝不足になりながら新生児の 子育てができるのもオキシトシンのおかげと言われています。
また愛着が生理学的現象であるということもあって、 愛着には形成可能な「臨界期」があり、 いつでも起こるわけではないと。 その臨界期は生後一歳半頃までとされ、 この時期に子どもは養育者の顔、とりあけ目を熱心に追うため、 スキンシップだけでなく、 微妙なタイミングの良い視線や声かけの応答によって、 養育者の脳に「同調」し、 幸福感を感じるオキシトシンが放出されるシステムを獲得していく と。
ちなみに、このオキシトシン・システムが弱いと、 ストレス全般の抵抗力が弱く、不安が高まりやすいそうで、 ちなみに、 安定型の愛着スタイルを持ちオキシトシン分泌が活発な人に比べ、 不安定型の愛着スタイルの人は同じストレスで、ストレス・ ホルモンであるコルチゾールが上昇しやすいとのこと。
と考えると、「痛いの痛いの飛んでけー」 の効きが良いか悪いかも、オキシトシン・ システムがどの程度獲得できるかによって説明できるんでしょうし 、それは安心感によるただの「おまじない」や「気のせい」 ではなく、 もともと人間や動物が生物学的に獲得してきた痛みやストレスの緩 和システムである、と。
赤ちゃんを見ると「かわいい〜」 と思ったり癒される人が多いと思いますが、 それはオキシトシンが分泌されている状態で、 逆に赤ちゃんを見ても「別に」みたいな、 極端だと我が子を見ても可愛いと思えないと言うのは大人側のオキ シトシン・ システムが上手く機能していない状態と言えると思います。
従来のアタッチメント理論は「心理ー社会」的側面で、 スキンシップや情動調律→愛着形成(絆や心理的な結びつき、 安全基地の獲得)という説明されてきたと思います。しかし、オキ シトシン・システムという生理学の側面を加えることで、 アタッチメントをバイオサイコソーシャル(生物ー心理ー社会) で説明することが可能になってきたと僕は理解しました。
ちなみに、最近の生物学的な研究では、オキシトシンが動物の「 共感性」 における進化的役割を果たしているのではと言う話もあるようです 。
【参考】
さらにアタッチメントから脱線しますが、自閉症スペクトラムの社 会性やコミュニケーションの障害の治療にオキシトシンが効果があ るのではという話もあるようです。しかし、 これは研究結果が割れていて、一部効果が認められるが、 ASD全ての人に当てはまるわけでないというのが現状のようです 。
【参考】
これらから思うことは、情動調律でも同調でも、 乳児期が適切なタイミングで情緒的応答をされることで、 大人子ども双方が幸福感(オキシトシン分泌)を得られ、 それは生涯にわたる不安・ストレス耐性だけでなく、 何より人との関わりや情緒的交流に心地よさを感じる程度、 つまり対人交流やコミュニケーションの動機の根源につながりそう だ、という事です。
■社会文化的な適応とオキシトシン
若者の恋愛離れをオキシトシンで説明していますが、 さらに面白かったのが「オキシトシン社会は成熟社会」 という話し。エリートが40歳、50歳くらいで挫折しやすいが、 それは競争社会で必要なドーパミン(「快」 の感情をつかさどる脳内ホルモン)分泌が盛んな状態はずっとは続 かないからで、「夢を追う」幸せが得られなくなったとき、 必要になってくるのが、人との関わりによる幸せなんだ、 ということです。
当たり前ですが、社会的な情勢(環境)によって、 環境適応に適しているホルモン状態は異なるということかな、と。 例えば、 ドーパミンが豊富でバリバリ肉食系な人材が求められる環境もあれ ば、オキシトシンが豊富で温和な人材が求められる環境もあり、 どちらが良い悪いではなく適材適所、 時代や国によって適応的なスタイルが異なるということなのかな、 と。
動物でも似たようなことが起こるようで、閉じた柵に犬とヤギを入 れて一緒に遊ばせた後、 血中濃度の変化を見ると人間レベルのオキシトシン上昇があるみた いですが、ポイントは家畜化された動物だけがこうした反応を示す と。「 社会性の高い動物ほど脳の前部で高いオキシトシン濃度が認められ ます。これが協力関係に心地よさを感じさせるのです」
おそらく野生動物は、 戦国時代のサムライが刀を持って座って寝るみたいな、 いつでも臨戦態勢を整えていないと天敵にやられてしまうし、「 生き延びる」 ことを最優先するホルモン状態に自然と適応してるんだと思います 。逆に家畜は、狩りをすることもされる事もないですから、 その環境の中で快適に幸福に過ごせるホルモン分泌システムを獲得 していると。
なるほど以前に【第42回】コラムで、 環境からの影響の受けやすさに関係する「セロトニン・ トランスポーターの多型(バリエーション)」と、その母親の影響 を受けにくいセロトニン・トランスポーターの長いタイプの多型を 持つ子どもは、白人は6割だが、アジア人種は1/ 3にとどまることに触れました(参考「発達障害と呼ばないで」岡 田尊司 2012)
が、動物だけでなく人間にも似たことが言えて、多数派が「 他人に影響されやすい派」か「影響されにくい派」 のその国の集団文化の違いで、適応的なスタイルは異なるし、 それに合った子育てもまた違うのではないかと。
例えば、伝統的な子育ても、日本人は密着型で境界が曖昧、 一方アメリカの子育ては0歳から自室で一人で寝させるように境界 をしっかりするといった明確な文化差がありますよね。 これってどちらが良い悪いではない気がするんです。
どこかの新聞の投稿記事で、 アメリカ型の子育て本を鵜呑みにして早期から自立を促すような関 わりをしたら、ひどい癇癪持ちになって散々だった、 という内容を読んだことがあります。伝統的な子育ては、 先人たちがその国や文化の中で、 その子がなるべく社会の中で適応しやすくなるような子育ての試行 錯誤を経た結果を、 科学的にではなく直感的に選択し受け継がれてきた形なのかもしれ ないな、とも思います。
現在では、欧米でも「インファント・マッサージ」 という乳児に対してマッサージ、肌の触れ合いをすることで、 アタッチメント形成に効果があって推奨されていますが、 それはインドの看護師が考案したもので、 もともと東洋では古からやってきた子育ての効用を言っているよう な気もします。
マインドフルネスの流行りにも感じますが、 これは現代の欧米社会で適応的な価値観や人間の生理学的な状態が 、 東洋文化的なものに寄ってきていることを表しているのかもしれま せん。 また逆にアジア圏では欧米的な生活スタイルや文化が取り入れられ て、 昔よりは東洋人の価値観や生理学的状態が欧米的になってきている 、という西洋東洋お互いの「文化の折衷×人間の適応」つまり「 環境×生物」の変化の相互作用が起こっているのかな、と。
なので、西洋東洋、南米北米、 アフリカなど何処の子育てが優れているかということではなくて、 インターネットの普及によって、 国や文化や情報のやりとりがグローバル化、 ボーダレス化しつつある時代や社会において、 適応的な人間の状態は何なんだろう、 という進化適応の過程に今現在われわれは晒されているという見方 も出来るかもしれませんね。少し話が大きくないなり過ぎました。
■過去の語りとオキシトシン
最後に、LSWに直接関係しそうなオキシトシン話としては、英国 科学アカデミー紀要から発行された学術誌によると、男性を対象に オキシトシン投与が行われ、過去に母親と「良い関係」 を持っていた被験者は母親に対する思い出がより素晴らしい物にな り、過去に母親と「酷い関係」を持っていた被験者でも、 母親に対する怒り等の負の感情の低下が認められたという報告があ るそうです。
他も含めて論文を直接みていないので想像にはなりますが、 おそらくオキシトシンが豊富になると、 過去のオキシトシン分泌の状態の身体記憶が想起されやすかったり 、幸福感やストレス緩和によって、他人(過去の母親) にも寛容になったり許すような気持ちになりやすくなるのかなぁ、 と予想します。
現在の状態が荒れた状況でLSWをしても、「 どうせ家族に捨てられたんだ」 なんてネガティヴなストーリーになりやすいことは、 実践家の皆さんは肌感覚でわかると思います。しかしながら、 生活が落ち着いた状態、つまりオキシトシン・ システムも機能してストレス耐性もそこそこある状態なら「 お母さんも当時は大変だったんだね」「もういいよ」 と目の前にいない家族に対して共感的な解釈やストーリーを描きや すくなるかも、という事を想像させる報告だなぁ、と思いました。
もちろん、愛着(アタッチメント)がオキシトシン・ システムだけで説明がつく訳ではないとは思いますが、今まで「 まぁ、起こってる現象はそうなんだろうけど…」 とイマイチしっくりこなくて正直とっつきにくかった愛着( アタッチメント)の話が、 今回オキシトシンにまつわる書籍や情報を集める中で「 生物ー心理ー社会」(バイオサイコソーシャル) での整理がスッキリついて、 個人的には知識が腑に落ちるような体験となりました。
やはり近接領域の他分野の話は面白いですね。
ではでは。
【第45回】新生児の感覚と神経はこうして発達する
メンバーの皆さま
こんにちは。管理人です。
どうやら、また週末に大型台風が到来ですね。
前回の台風では、月曜の朝、普段通勤で使っている東海道線が完全ストップしてしまったので、やむなく新幹線で通勤しました。
仕方なく、新幹線が乗れる駅まで30分ほど歩いたのですが、乗り遅れそうだったので、GoogleMap片手に近道を急いでいたらiPhoneがスルリ。
画面はバリバリ、開いた画面は勝手に動き出す始末。そして、新幹線も遅れているので遅刻を連絡しようにも携帯は使えず。
挙句に初めて新幹線の公衆電話を使ったのですが、なんとテレフォンカード専用で、この時代に電話機の横の販売機で1000円テレカを購入して電話すると言うレアな体験をしました。
結局、携帯は買い替えだったのですが、ドコモの保証+ポイントで5000円程で新品と交換できました。携帯も使用3年で電池もすぐ無くなったちゃう状態だったので、結果オーライです。
ただ、携帯が無くなるとホント焦りますね。まぁ、結果的に元より携帯の状態が向上して、さらに面白い貴重な体験もできたと言うストーリーになったから、今回は良かったです。
しかし、当たり前にあったものを突如として失う「喪失体験」が引き起こす将来の不安、それが元通りになるかならないか分からないことの心配、そして、どうにもならないと知った時のショックと言ったら計り知れないですよね。
はぁ、その日のうちにdocomoショップ行けて良かった良かった。早期介入、早期支援の大事さが身にしみました。
以上、プチ喪失体験とナラティブによるセルフケア体験でした。皆さま、今回の台風もお気をつけください。
では、コラムです。
●目次
第1章 羊水の海で
第2章 胎児の意識の始まり
第3章 母親のストレスと胎児のこころ
第4章 子宮は学びの場
第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか
第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する
第7章 「親密さ」という魔法
第8章 経験が脳をつくる
第9章 初期記憶のミステリー
第10章 他人に子どもを預けるとき
第11章 間違いが起こるとき
第12章 子どもの「善意」の基盤をつくる
第13章 意識的な子育て
●内容
第1章 羊水の海で
第2章 胎児の意識の始まり
第3章 母親のストレスと胎児のこころ
第4章 子宮は学びの場
第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか
第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する
第7章 「親密さ」という魔法
第8章 経験が脳をつくる
第9章 初期記憶のミステリー
第10章 他人に子どもを預けるとき
第11章 間違いが起こるとき
第12章 子どもの「善意」の基盤をつくる
第13章 意識的な子育て
●内容
今回は「第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する」を中心に、新生児の脳の発達について。
~新生児に対する小児科医たちの誤解は、かなり昔に始まっている
~1970年代に入ってようやく、…心拍を記録する電極、おしゃ
~赤ちゃんはもちろん、最初から親の気分や調子を合わせている。
■新生児の感覚
【出生時~1週間】
・出生の数分後、分娩室で、明暗はっきりした部分のある物体、た
・生まれたばかりの新生児は、大人の顔をじっと見つめ、大人の発
・見つめていた物体がゆっくりと動くと、数分間はそれを目と頭で
・三次元的な感覚をもち、ある程度目と手を協調させて動く。
・自分の母親とほかの子どもの母親を、母乳のにおいや腋(わき)
・食べ物に関連した香りのうち、ミルクのような香りや果物のよう
【1週間~】
・生後一週間までに、母親の声をほかの女性の声と区別できるよう
・生後数週間で、父親に対して、母親に対するのと全く違う態度を
【2か月~】
・生後八週間で、物のかたちや色の違いがわかるようになる(たい
・赤ちゃんは、無意識にものをしっかりとつかむ力をもって生まれ
たいていこの強靱な握力は失われるが、かわりに別の能力が見られ
【4か月~】
・生後四ヶ月で、生き物とそうでないものとの動きを区別できるよ
【5か月~】
・生後五ヶ月で、唇の動きが言葉に対応していることに気づく。
・目と手の協調運動ができるようになるためには、当然ながら、そ
【6か月~】
・生後六ヶ月になると目の焦点がしっかりと定まる。
~ピアジェは能力の習得を段階ごとにわけたが、今日の神経科学者
~PETスキャン(陽電子放射断層撮影)からは、脳の特定部分が
~ここで注目すべき点がいくつかある。健康な乳児の脳の各部位は
~辺縁系が活性化しているときは、子どもは情緒のコントロールを
~視覚などの感覚に関する研究によれば、出生後に活性化する部位
●コメント
すると、
と読んだ時に「あれ脳幹は?」とふと思いました。そうです、少し前のコラムをよく思い出してみてください。
~胎児の脳は、アドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンに長い間さらされると、不必要な時に、「戦うか逃げるか」の反応を起こす習慣がつきやすい。しかも、この習慣は生涯続く。
~ストレスの高い母親の胎児は、心拍数が著しく増加し、その後正常に戻るまでの時間にかなり時間がかかった。ここでいうストレスの早い母親とは、血液検査で高濃度のストレスホルモンが認められ、不安が強くまわりから協力があまり得られないと質問票に回答した母親である。 いっぽう、望んだ妊娠をして、適度な自尊心があり、周囲の協力にも恵まれた母親の胎児は、穏やかで、心拍数が正常に戻るのが早かった。
(【第43回】子宮内の胎児の意識と発達
ハッキリとは書かれていませんが、これらの記述から、おそらく哺乳類以前のもっと生物的な[カエル脳]=脳幹あたりの部位がもっとも活性化する臨界期は、胎児期であると読み取ることが出来ます。
そして、情緒コントロールを司る大脳辺縁系がもっとも活発になるのが新生児期で、生後二ヶ月と三ヶ月ではすでに、視力と感覚運動能力が発達する視 覚皮質と小脳半球の代謝に移ってしまうというのは、初めて読んだ時は衝撃でした。
「情緒・感情のコントロール」の課題って、虐待で関わる子のほとんどに当てはまってしまうわけで、支援者はそれをどうしようと散々悩まされるわけですが、一番効果的な関わりの時期は、すでに胎児期~生後1ヶ月程で終わっていると。
それは率直にいうと、もちろん過去は変えられないんですが、多くの子が抱える「感覚や感情のコントロール」課題とその支援に伴う大変さについての悩みは、ほんの胎児~新生児期の数ヶ月間の支援があれば、こんなに苦労することはなかったのではないか、という想いです。
それほど胎児期~新生児期の養育の影響は、その後のその子の人生に大きな影響を及ぼすということですし、それに一番苦しむのは誰でもない本人に違いありません。しかも自分ではどうにも出来ないことで。
これらの仕組みを知らされずに「早期支援!予防的関わり!」と言われても、支援者はただ急かされているようにしか思えませんが、きちんと説明され今やっていることの意義や意味付けがされて、ようやく母子保健や母親支援(家族の協力を含め)の質が変わるんだろうな、と。
前々回に「ポピュレーションアプローチ」の話にも触れましたが、虐待相談件数がうなぎ登りとか、発達障害を早期発見しましたとかでない文脈。もちろん、事が起こってからの対応も必要ですが、「虐待が脳に影響を与える」という事後のネガティブ文脈だけじゃなくて、 同時に「早期支援・出産前後のママ支援は、子どもの脳の発達を支える」という事前のポジティブ文脈ももっと声を大きくして言われて欲しいな、と思います。
最後にLSWに絡めて言うと、LSWの一般イメージは、施設入所児童が「私のお母さん、どうしてるの?」と言ったり、現れが出てようやく過去を扱おうとするような事後対処に注目が集まりがちと思います(このタイミングでしか扱えないケースもありますが)。
でも、大事なことは、まずその時に起こった喪失体験(離別、転居など)にその場その場でできる限りの対応ケアされているか。児相が関われる場面で言うと、やむなく家から離れて一時保護や施設入所する時に、きちんと理由が説明されたり、それに伴う本人の想いや感情をきちんと聞いたり表現する場を与えているか。
そして、入所後もその状況理解や言い残した未完の感情がないか確認したり、知り得る家族の状況を伝えたり。リアルタイムでされるべき喪失体験へのケア(扱うべき本人の想い)を積み残すことで、後々に必要な支援は実はどんどん増えていってしまいます。
もちろん、どんなに気をかけても本人の状態から扱いきれない想いや喪失体験はあります。ただ、支援対象を個ではなく全体として見たら、今ここで出来る早期支援やケアをないがしろにして、事後対応にばかり囚われるのは明らかに順番が違うし本末転倒というのは、子どもの脳の発育の支援もLSWも変わらないなぁ、と思います。
あと今回は、落とした後のdocomoサポートに救われましたが、僕がやるべき順番は、落としても守ってくれそうな携帯カバーの検討ですね。
ではでは。
【第44回】水戸と「ひよっこ」とLSW
メンバーの皆さま
こんにちは。管理人です。
先ほど「LSW全国交流会@水戸」が終わりまして、ただ今、 大型台風と正面衝突するような方向で静岡に帰っています。 無事帰れるといいんですが…
全国交流会は今年も興味深い内容でしたが、 それを書いてしまうと静岡LSW勉強会で話すネタが無くなってし まうので、それはいったん置いておきながらも、せっかく水戸に来たので、 今回は茨城にちなんだこの記事から。
『ひよっこ』医療監修者に聞く、 あの感動の精神医学的なメッセージ
我が家では、妻(と息子: 7ヶ月ですがオープニングが好きな様子)が観ていたのですが、 僕は土曜日の再放送を、断片的に眺める程度でした。
妻から時々「〇〇ちゃんと△△さんがいい感じになって来た」 とか報告されるんですけど、ストーリーは全然わかんないので、 地元の誰それさんの息子が結婚して「良かったねぇ」 みたいな感じで聞いてたんです。
父の記憶喪失って、主人公みね子にとっては、 まさにコラムで取り上げた「あいまいな喪失」体験ですよね。
〜糸川 人間の記憶には4種類ありまして、 それぞれ脳の分担する場所が違うんです。そのなかの「 エピソード記憶」というものは、脳の「海馬」 という部分とその周辺が担当しています。いわゆる「昨日、 友人とテニスをして帰りに映画を見た」 といった生活史的な思い出とか、まさに私たちが普段「記憶」 と言っているようなものです。今の田植えの話に関連するのは「 手続き記憶」。これは自転車に乗れるとか、 クロールで泳げるとか、カンナが引けるとか、 運動機能についての記憶で、 海馬とは全く違う場所に記憶として保存されているんです。 ですから、田植え技術は「手続き記憶」 として実の中に備わったままなので、自然と田んぼで体が動く。
――記憶を失っているはずなのに、 なんで田植えはできるんだろうって、 みんなが不思議そうにする場面があったように思いますが、 これも医学的には正しいことだったんですね。
糸川 記憶はどこかで保たれているはずなんです。 人間って分子レベルでいうとタンパク質の集合体なんですね。 そのタンパク質は日々代謝され、 食事で摂取するアミノ酸を再合成して作り替えられていますから、 日々刻々と「私」というものは入れ替わっている。 生物学的には一か月前の私と今日の私は別人間なんです。福岡伸一 先生の言う「動的平衡」です。あるいは釈迦が言った「輪廻」 というものが言い当てていることかもしれません。では、 なぜ私は私と言えるのか。 記憶が私を連続した個体として支えているからです。
――記憶を失っているはずなのに、
糸川 記憶はどこかで保たれているはずなんです。
この話は日常的な生活支援の大切さを、 生物学的に言ってくれているのではないのかな、と。 一時保護所に来て、 規則正しい生活と健康的な食事をするだけでみるみる変化する子ど もを時々見かけますが、 分子やタンパク質レベルで見たら1ヶ月で別人間なんだと言うこと 。
でも一方で、記憶はどこかで保たれていて、田植えのような「 手続き記憶」は記憶喪失でも忘れずに、 言ってしまえば身体が覚えているとすれば、 虐待で施設入所した児童の多くが経験してきた身体的な痛みを伴う 恐怖体験というのは、 頭で忘れていても身体が思い出して反応してしまう、 なかなか忘れることは出来ないという事ですよね。
この辺りは、 トラウマや身体志向アプローチの本を紹介する時に詳しく触れてい きます。
記事の続きを紹介をすると、
――「悲しい出来事に、幸せな出会いが勝ったんだよ」 というセリフが『ひよっこ』にありましたが、 悲しい記憶を幸せな記憶によって克服するということはあるんでし ょうか。
糸川 僕の専門である精神医学の世界では、疾患の原因になる出来事が「 転落」や「挫折」ではなかったんだ、 とストーリーをアップデートする作業も必要なんです。 たとえば順調に仕事をしてきたサラリーマンが、 急病で倒れて出世の道を諦めなければならなくなったと。 単純にはこれ、 挫折であり不運としか言いようのない事故だと思うんですが、 もしそのおかげで家族との時間が増え、 人生が本人も思いがけない形で充実したのだとしたらどうでしょう 。急病のおかげで家族が取り戻せた、 というストーリーにアップデートされるわけです。 都合がいいと思う人がいるかもしれませんが、 人生の急転はそういう「意味あるストーリー」 として語れるようにならないと、 逆にいろんな精神的症状が出てしまいがちです。 たとえそれが楽観的すぎると思われても、 悲しい出来事に幸せが勝てる物語は、 人間にとって必要なものなんです。
糸川 僕の専門である精神医学の世界では、疾患の原因になる出来事が「
と語られています。 LSWで意図している過去ー現在ー未来をつなげる支援、 未来に向けたナラティヴ的な支援、 そのベースになる現在の日常生活を支える重要性は、 もはや社会的養護(施設や里親)という枠を超えて、 人生や生き方を支える対人支援として共通したものであるんだろう なぁ、と。
今年の交流会は、いろんな方々の話を聞いたり、 語り合ったりする中で、 割とこんな話の流れになることが多かった印象で、 改めてLSWの広さというか深さを感じるような二日間でした。
ちなみに、昨夜の夜中1時頃にラーメン、焼きチャーシュー、ライスの暴食したにも関わらず、お腹具合は行きと違い穏やかに帰れました。美味しかったし、良かった良かった。
ではでは。
【第43回】子宮内の胎児の意識と発達
メンバーの皆さま
こんにちは。管理人です。
現在、今日明日に行われる「LSW全国交流会@水戸」 に参加するために電車で移動中です。
ちょっと節約して、沼津→ 品川まで乗り換えなしの在来線に二時間ほど乗りまして、 品川から特急で水戸まで向かう約4時間半の電車の旅です。
まぁ沼津からなら座れるし、 コラム書いていれば時間も潰せるだろう、 なんて軽く考えていたら、 神奈川に入ったあたりから風が結構冷たく、 トイレに行きたい衝動に襲われています。
コラム書きで気を紛らわせて、 なんとか品川までたどり着きましたが、 天気予報の気温はさほど変わらないのに、 やっぱり静岡は暖かいことを思い知らされました。
東京、寒いです。茨城はどうなのでしょうか。
では、コラムです。
●目次
第1章 羊水の海で
第2章 胎児の意識の始まり
第3章 母親のストレスと胎児のこころ
第4章 子宮は学びの場
第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか
第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する
第7章 「親密さ」という魔法
第8章 経験が脳をつくる
第9章 初期記憶のミステリー
第10章 他人に子どもを預けるとき
第11章 間違いが起こるとき
第12章 子どもの「善意」の基盤をつくる
第13章 意識的な子育て
●内容
今回は、胎児期にかかわる第2、3、4章をまとめて。
~数々の研究によれば、 胎児は目覚めているときも眠っているときも、母親が行うこと、 考えること、感じることのすべてと「同調」し続けている。 受精の瞬間から、子宮の中での体験は常に脳を形作り、 人格や情緒の傾向や思考力の下地を作っているのである。
とありますが、トピックを4つ(胎児の感覚/痛みと回復力/ 母親のストレスとうつ/胎児のパワーを高める) に分けて紹介します。
■胎児の感覚
以下は、胎児の発達について、本書を整理して抜粋したものです。
第1章 羊水の海で
第2章 胎児の意識の始まり
第3章 母親のストレスと胎児のこころ
第4章 子宮は学びの場
第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか
第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する
第7章 「親密さ」という魔法
第8章 経験が脳をつくる
第9章 初期記憶のミステリー
第10章 他人に子どもを預けるとき
第11章 間違いが起こるとき
第12章 子どもの「善意」の基盤をつくる
第13章 意識的な子育て
●内容
今回は、胎児期にかかわる第2、3、4章をまとめて。
~数々の研究によれば、
とありますが、トピックを4つ(胎児の感覚/痛みと回復力/
■胎児の感覚
以下は、胎児の発達について、本書を整理して抜粋したものです。
【1ヶ月】
・妊娠二十八日前後で胎芽は六ミリ程度になり、
【1ヶ月半~】
・六週前後でおよそ十二ミリになると、
・早くも七週目に触覚があることが報告されている。
・
【4ヶ月~】
・四ヶ月目までには周囲の世界を探索する能力が飛躍的に発達し、
・十七週目には皮膚の大部分に感覚が生じる。
・嫌な味のする物質を子宮内に注入すると、
【5ヶ月~】
・五ヶ月目には、大きな音に対し、
・人間の聴覚機能は、二十週目には大人と同程度になる。
・十九週目から二十週目に初期の脳波が現れ、
・胎児には、学ぶのに必要な脳の構造そして意識さえもが、
【7ヶ月~】
・二十七週目には、母親の声にとくに敏感になる。
・二十八週目ごろには違う音色を聞き分けられるようになる。
・胎内で聞いた言葉は、特定のしゃべり方や方言のもとになる。
【新生児】
・人間の脳は子宮にいるときからすでに言語を学びはじめている。
・研究者によれば、出生直後の新生児は、
~その詳細についてはまだ推測の域を出ないが、
~胎児が成長するにつれ、
■痛みと回復力
~痛みの経路は、かなり早い時期に作られる。
~早生児も痛みに対して明らかな反応を示す。
~実際、解剖学的に見れば、
~
~というのも、
~胎児の脳は、
~いっぽう母親がつねに喜びや愛を感じていると、胎児の脳は"
~パシック・ワダワは、母親のストレスの影響を測定するために、
~その結果、ストレスの高い母親の胎児は、
~いっぽう、望んだ妊娠をして、適度な自尊心があり、
■母親のストレスとうつ
~母親の過度のストレスは、子供の学習能力にも影響する。
~頷けるのは、
~その結果、影響を受けやすい子どもの場合、
~妊娠中のストレスが深刻な影響をもたらすのであるなら、
~同研究班は、
~研究者によれば、妊娠中のうつは産後も続くことが多い。
~
■胎児のパワーを高める
~神経科学の最新の発見によれば、
~マリアン・ダイアモンド(有名な神経科学者)
「
~胎児の脳細胞は栄養素が足りなかったり、
~「全細胞数の50~65%もの大量のニューロン消失が、
したがって、初期のニューロン機能にかかわりのないものは『
神経細胞のを健全な状態にしておくために、
~「神経系というものには、可塑性に『朝』があるばかりでなく、
●コメント
すごくざっくり言うと、
みたいな感じでしょうか。
もちろん小難しいことが苦手な方には、
児相に配属された当初、「
つまり妊娠期に夫婦不和や離婚、 DV等の問題があって母親サポートも薄ければ、 胎児の遺伝子選択として育てにいく子が産まれるリスクが高まる。 しかし、 同じ母親のきょうだいであっても離婚やパートナーの変更により妊 娠中の母親を取り巻く状態はそれぞれ変化するし、 そもそも胎内環境にどれくらい影響を受けやすいかの程度にも個体 差がある。
したがって、同じような過酷な状況下でも、 驚くほど健康度が高い子もいれば、 どうしようも手に負えない状態が続く子もいる。「環境×個体差」 の相互作用は胎児から始まっていると。
この辺りが早期支援、予防的関わりの根拠になるのでしょうが、 最近たまたま雑誌で「子育て世代包括支援センター」 についての記事を見かけた時に面白い内容があったで、最後に触れます。
そこにあった説明は、従来のハイリスクアプローチは、 病気や発達障害を見つけてその人に支援するという考え方であった が、それに対してポピュレーションアプローチと言う、 集団に働きかけて全体のリスクを軽減したり病気を予防すると言う 考え方にシフトしていくと言うことでした。
そういう意味では、 LSWもかなり末端の支援であることは間違いないですが、 ポピュレーションアプローチによって妊娠期からの支援が厚くなれ ば、 そこから得られる生い立ちの情報や、子ども自身の生まれ持った資 質とリスク等に変化が生まれる可能性はあるので、 決して遠い話でもないような気がします。
LSWに限らず、子どもの育ちに関する胎児期~ 乳児期の重要性を考えると、 母子保健分野と児童福祉分野の相互理解や連携をいかに深めていけ るかも、今後注目されていくといいなぁ、と思いました。
ということで、次回は新生児期について触れて行きます。
ではでは。
【第42回】胎児期のバイオサイコソーシャル
メンバーの皆さま
こんばんは。管理人です。
臨床心理士の方はわかると思うのですが、ここ数日、 国家資格になる「公認心理師」の受験情報に振り回されて、 正直ホトホト疲れています。
あの受験資格の案内を正確に解読できている方って、 どれくらいいるんでしょうかね。履修科目の振替とか…もはや、 あれを読み解くのが一つ試験ではないかと思うくらいです。
結局のところ講習会(7万円+テキスト代別) を受ける必要があるのか、ないのか?よくわからないまま、もう来週には先着順の申し込みが開始されちゃうし…
新しい環境の変化に適応するのって、やっぱり大変です。
心理士でない方にはよくわからない話でスミマセン。 ただの愚痴です。
では、コラムです。
●目次
第1章 羊水の海で
第2章 胎児の意識の始まり
第3章 母親のストレスと胎児のこころ
第4章 子宮は学びの場
第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか
第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する
第7章 「親密さ」という魔法
第8章 経験が脳をつくる
第9章 初期記憶のミステリー
第10章 他人に子どもを預けるとき
第11章 間違いが起こるとき
第12章 子どもの「善意」の基盤をつくる
第13章 意識的な子育て
●内容
今回は「はじめに」と「第1章 羊水の海で」を要約で。今回もトピック3つでまとめました。
【1.胎内環境×脳の発達】
~この10年の間に、
~遺伝学者のほとんどが、いまだに、
~人の脳は生涯を通して体験に敏感に反応するが、
~最新の発見を知れば、
~最新の脳科学は、人間の情緒と自意識が生後一年どころか、
~
~
~
~妊娠中に母親が感じたことや考えたことは、
【2.脳のネットワークと進化論】
~神経細胞(ニューロン)はそれぞれの目的地に到達すると、
~妊娠中期から、ニューロンとそこから突き出た軸索、
~遺伝子は脳の基本的な発達のための設計図を示しはするが、
~この入力情報とは、例えば栄養や健康状態、
~広く受け入れられている考え方によれば、あらゆる種は、
~科学者たちは、生物を、
~どんな生物でも、生存のための行動は二通りである。
~決まっていた発達の道筋が、外の環境に応じて、
生物の場合と同じく、
~こうした知覚は、生まれた後の子どもには、
~不幸な例をあげれば、妊娠中の女性が災害に見舞われて、
細胞生物学者のリプトンはこう述べている。
~「この決定的な重要な"愛か不安か"のシグナルは、
~「
【3.栄養素や薬物、感染症よる影響】
~胎生初期(後期ではない)に飢饉の冬を経験した人は、
~アルコール依存症の母親から生まれた乳児の脳波を見ると、
~タバコに含まれるニコチンが脳細胞の成長を阻み、
~
~最近になって、発育遅延や学習障害、
~妊娠中の麻疹が子どもの精神遅滞や脳性麻痺、
●コメント
まず断りを入れておかないといけないのが、本書の原書「Pre- parenting:Nurturing Your Child from Conception」は2003年、訳書である本書「 胎児は知っている母親のこころ」は2007年、 引用論文はだいたい90年代のものです。
つまり、「最近の」とか「最新の」「ここ10年の」 は現在から10~20年前時点のことであると言うことです。 だから時代遅れということではなく、むしろ思うのは、 この時点でこんな本が既にでていたんだな、と。
本書では、脳科学的にはフロイトやピアジェの発達論は間違ってい るとハッキリ書かれていますが、 新しい事を受け入れる時の抵抗と言いますか、 パラダイムシフトする時は当然ながら時間がかかると言うことなの かな、と思いました。
小見出しに【胎内環境×脳の発達】と書かせてもらいましたが、 内容的には完全に今まで扱ってきた「バイオサイコソーシャル」 の「社会×生物」の相互作用の話しですよね。
また、
~遺伝子は脳の基本的な発達のための設計図を示しはするが、 個々のニューロンが最終的にどの位置につくか、 どのような経路をたどるか、 他のニューロンとどう関わるかといったことは、 初期の環境からの入力情報に大きく左右される。
という「環境×遺伝子」的な考え方は「エピジェネティクス」 と呼ばれるものですよね。下記のサイトくらいだと、 化学記号とかなしで堅苦しくない感じの説明になってるので、 ご存じない方は良ければ参考にして下さい。
考えてみれば、 妊娠時の病気が胎児の発達に影響を及ぼすことは一般的にも広く信 じられているのに、 妊娠母の精神状態による胎内環境の変化が胎児の発達に影響を与え ない、と考える方が不自然な気がします。
なので、
~脳のスキャンの画像を見れば、言語、音楽、 数学などの各能力が、決まった順序で、 脳それぞれの部位が激しく活動している間に急激に身につくことが わかる。
は、比較的すんなり受け入れられますし、胎生後、 出生後いつくらいに脳のどの辺りが劇的に発達するか具体的な時期 も後章に書いてあるので、 なるべく整理して紹介したいと思います。
でも、
~母親の不安やストレスが、 子どもの脳の配線を少しずつ組みかえ、 知性や人格を変えていってしまうのである。
の「人格、性格」 の部分もそうなのと懐疑的に思う方もいらっしゃるかと思います。 ただ本書によると我々の行動選択は、原始的な細胞レベル、 胎児期の成長優先か防衛優先の遺伝子プログラムの選択の影響を受 けている、と。
つまり「生物ー心理ー社会」の心理面(サイコ)が→ 胎児からの環境面(ソーシャル)に影響された→遺伝子選択( バイオ)に影響を受けていると。
加えて、
【第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか】
では「遺伝と環境だけで人格をじゅうぶんに説明できないときは、 きょうだいの中での出生順を考慮に入れてないからだ、 という意見がある」と触れられています。
具体的には、きょうだいの中での役割、 親の期待や好みと言った出生後の「社会」的要因が違う点、 そして脳の成長に不可欠な連鎖の長いオメガ三系脂肪酸の量が妊娠 を重ねるごとに減少していくことが多いという母親側の「生物」 的要因、胎児側なら「環境」的要因について触れています。
それと個人的に思うのは、母親視点に立つと、 初子とそれ以降の第二子第三子の育児って、 妊娠時に子育てしているかしていないか、 母親がゆったりした気持ちで過ごせるのかテンテコ舞いなのかが全 然違うと思います。もちろん、きょうだいの年齢差と夫や親族支援 の状況によりますが、 母親の生活状況や精神状態が違う=同じきょうだいでも 胎内から生育環境が違う、ということになるので、 そりゃ性格も違うよなと思います。
これは母親の「社会×心理」の要因が、胎児の「胎内環境× 脳の発達」に影響するだろうと言うことです。このように「 生物ー心理ー社会」つまり「バイオサイコソーシャル」 で考えると情報がスッキリしやすいです。
もちろん、遺伝子的な要因として、
・「ドーパミンD4遺伝子の多型」
衝動的で飽きっぽい傾向ADHDのリスク遺伝子として裏付けが進 んでいる
・「セロトニン・トランスポーターの多型」
という面もあるようですが、 その遺伝子オンオフもまた環境に影響されると。やはり「環境× 生物」です。
ちなみに人種や地域差で言うと、 母親の影響を受けにくいセロトニン・ トランスポーターの長いタイプの多型を持つ子どもは、 白人は6割だが、アジア人種は1/3にとどまるそうです。( 参考「発達障害と呼ばないで」岡田尊司 2012)
つまり、 欧米人より日本人の方が良くも悪くも環境の影響を受けやすい子が 多いと。この辺りは西洋と東洋の文化差を、 遺伝子レベルで考察しているようで面白いです。
最後に、
LSWに絡めると、 成長優先か防衛優先かの遺伝子プログラムの選択は、 その人の時間志向性に影響しないのかな、なんて素朴に思いました。
というのは、成長を促す行動(例: 栄養物や安全な環境を探すことや、種の保存のための交尾など) は、未来について肯定的な展望をもった行動のように思えるし、身 を守る行動(危険回避)は、 未来や過去に過剰に焦点が当たって個人的未来が脅威や恐怖になっ ている状態に近いかもな、と。(参照【第40回】)
そして、本書の副題が「子どもにトラウマを与えない妊娠期・ 出産・子育ての科学」であり、前回コラムで出産時のバーストラウ マの話に触れましたが、胎児期に防御優先(危険回避) の遺伝子プログラムを選択をするような環境って、 もはや胎児期のpreバーストラウマ体験なんて捉えてもいいので は、と思ってしまいました。
すると、時間志向性の傾向や、 将来を前向きに考えられるかどうかの資質は、 胎児期の遺伝子プログラムの選択つまり胎児期の生育環境によって、すでに結 構決まっている可能性もあると思うんです。
資質っていうのはすごくシンプルに考えると「安心体験」と「 恐怖体験」の総量や割合みたいなイメージです。 安心体感の貯金が多いケースは、 生い立ちの途中に大変なことがあっても立ち直っていく感じがしま すが、胎児期から過酷なケースはやはり予後は難しいし、 安心体験を増やそうと思ってもなかなか逆転できない印象がありま す。この割合を測る指標の一つが「アタッチメント」 になると思うのですが。
そして、その体験の総量は出生後だけでなく、 出生前の胎児期を含めて。低年齢ほど主観的な時間は長いし、 耐性は出来上がってないので、当然、 体験の重みづけというか後々に残るインパクトは大きいんだと思い ます。
やっぱり、過去ー現在ー未来が繋がりにくい、 積み重ねが難しいとされる子の状態は、 時間の連続性が繋がってしまうと耐えられないような過酷な環境へ の適応スタイルの結果として見る視点は、忘れてはいけないなと。
まぁ、本当に悩むケースは、そもそも妊娠期~ 新生児期の情報が取れないから困るわけなんですけど…
伝え方やプロセスによる差はもちろんありますが、 過去を整理した結果として、未来の展望がもてたり、 将来に肯定的になれるかどうかの程度は、 受け手側の資質の差というものも大きい気がしています。
だからLSWが無意味ということではなく、 染み渡りや汎化には個体差があるし、 その変化にどう価値を置くかもまた個人差はあるだろうと。言いた い事は、支援者側の「過去ー現在ー未来は繋がらねばならない」 という価値観の押し付けになったり、 その効果を求めすぎるのは、やはり違うだろうと言うことです。
この辺りがLSWに即効的な効果を求めたり、 一律の効果測定することの合わなさなんだと思いますが、 一般的に支援と言うと「何か悪い原因を見つけて取り除く、 そして状態が良くなる」 みたいな直線因果的な治療的アプローチのイメージをされがちなの で、畑違いの人にその辺を伝えるにはどうしたらいいのかなぁ( そもそもどこまでわかってもらう必要もあるのか) なんて最近思っています。
ではでは。
【第41回】初期記憶のミステリー
メンバーの皆さま
こんばんは。管理人です。
実は私、今年度から乳児院に関する事業を担当してまして、現在、 仕事絡み+勉強を兼ねて「胎児~乳児期」 の発達に関する本をいくつか読んでいます。
それが脳科学、生物学、アタッチメント、発達障害、 子育てと広がっていくと、それぞれの理論は「生物ー心理ー社会」 の側面を切り口を変えて言っているだけで結局は繋がってお互いに 影響し合っているよなぁ、とつくづく感じます。
と言う理屈を付けて、「バイオサイコソーシャルアプローチ」 の紹介の途中ではありますが、通勤中が一番時間が取れるので、 しばらく脇道に逸れまして「胎児~乳児期」 の知識をまとめる思考プロセスにお付き合いいただければと思いま す。
まず取り上げるのは「胎児は見ている」で有名なトマス・ バーニーの続編。ちなみに原著の題は「Pre-parenting:Nurturing Your Child from Conception」なので、直訳なら「育児前:胎児から子どもを育てる」という感じでしょうか。 胎児期からの環境や刺激が、 脳や神経系の発達に及ぼす影響について書かれた本です。
こんばんは。管理人です。
実は私、今年度から乳児院に関する事業を担当してまして、現在、
それが脳科学、生物学、アタッチメント、発達障害、
と言う理屈を付けて、「バイオサイコソーシャルアプローチ」
まず取り上げるのは「胎児は見ている」で有名なトマス・
●目次
第1章 羊水の海で
第2章 胎児の意識の始まり
第3章 母親のストレスと胎児のこころ
第4章 子宮は学びの場
第5章 出生体験は性格の形成にどう影響するか
第6章 新生児の感覚と神経はこうして発達する
第7章 「親密さ」という魔法
第8章 経験が脳をつくる
第9章 初期記憶のミステリー
第10章 他人に子どもを預けるとき
第11章 間違いが起こるとき
第12章 子どもの「善意」の基盤をつくる
第13章 意識的な子育て
●内容
全部の章を一つ一つ取り上げるつもりはありませんが、
ちなみに学術的なところを超要約して3つのトピック(
【1.記憶の起源】
~記憶とは何か。そして、それはいつ始まるのか。
~長いあいだ、人の記憶ーそれまで-
~どこまでさかのぼることが出来るのかは個人差があるが、
~多くの人が、記憶は不思議にも3、
~はじめは卵子と精子が合わさって一つの細胞となり、
~細胞か記憶するなんてどうも信じられないという人は、
~過去の研究から、免疫系の働きは潜在意識レベル(
~ホールはまず、被験者に覚醒した状態でのリラクセーション、
~脳と免疫系は双方向の経路を介して、
~心に蓄積された記憶の反映である情緒が、
~この理論はその後さらに発展した。現在では、体験し、記憶し、
~シュミット(1984)は、"情報物質"という言葉を用いて、
~リガンドが全身に流れるメカニズムは、
~つまり、神経科学の最新の発見からいえば、本当の知性と記憶、
【2.顕在記憶と潜在記憶】
~子どもは、まだ未熟な脳でさえできていない時でも、
~記憶を専門にすると心理学者たちは、
~顕在記憶とは、
~それ以外の記憶が潜在記憶である。
~無意識から意識への移行、つまり、
~こうした記憶が増していくにつれ、胎児は潜在的に、
~事実、多くの研究によって、
【3.出生の記憶】
~子宮にいたころの記憶を自然に思い出すことは稀だが、
~おそらくもっとも説得力があり、記録の数も多いのは、
~では、こうした記憶はなぜ、
~まず一つには、出生前と母乳を与えられているきかんは、
~私たちが出生前と周産期の記憶を失っているのは、
~もう一つの要因は、ストレスホルモンのコルチゾールである。
●コメント
まず「オキシトシン」は別名「愛情ホルモン」
他章で詳しく説明がありますが、
いかに乳幼児期に特定の人との日常的にスキンシップや情緒交流を
まさに「痛いの痛いの飛んでいけ~」が効くのは、
NHKスペシャル「ニッポンの家族が非常事態 第二集 妻が夫にキレる本当のワケ」(2017.06.11放送)
http://www6.nhk.or.jp/special/
オキシトシンは環境に左右されるので、 競争社会に身を置くキャリアウーマンは、 オキシトシン量が減っていると。そこで、 妻の鼻からスプレーでシュッと「オキシトシン」を注入すると、 夫と口論にならずに優しく会話ができると、 にわかに信じがたい映像ですが、妻は「 落ち着いて優しい気持ちになれた」 とインタビューで言っていた気がします。
しかし、そのオキシトシンが高濃度になると、 記憶を失くす作用があるとは初耳で目から鱗でした。 産まれる時の母親への麻酔や陣痛促進剤などの投薬による胎内環境 の変化は、かなり胎児にストレスがかかるらしく、 その苦痛はバーストラウマ(Berth Trauma)と呼ばれるそうです。だけど、産まれてすぐから母親に抱っこされたりして、 オキシトシンがバンバン放出されると忘れていくと。
しかし、そのオキシトシンが高濃度になると、
以前、 同僚と「怪我をしたり痛い記憶は昔のことでもよく覚えている」 と雑談したことがあったんですが、もし出産直後に「 オキシトシンは心の麻酔のように働いて」がなかったら、 すごい痛みの記憶が細胞に刻み込まれたまま忘れられないというこ とになりますよね。
忘れられると言うのはある意味幸せ、と言うのもよく分かります。なので、本書では例え未熟児であってもNICU(集中治療室)に入り、母子で相互やり取りする機会が喪失することでの、細胞レベルの記憶や脳の発達への悪影響が生涯に及ぼすリスクについて、とても書かれています。
あと、
~脳と免疫系は双方向の経路を介して、 常に連絡を取り合っている。そのため、 たとえば脳にストレスが生じれば、免疫反応は低下する。 これはおそらく、 免疫というのは生存の長期的な戦略だからだろう。
は体験的に非常に心当たりがあります。実は児相に来てから2~ 4年目くらいの間は、 とにかくGWや年末年始の長期休みになると病気に罹るというサイ クルを繰り返していました。
きっと、脳が「こんなストレス無理、休め!」 的な信号を送って免疫を低下させていたと言うことだったんだと思 います。ちなみにピーク時には胃に穴も空きましたから。 これも身体のサインですよね。
つまり、今まさに当時のことを「生物ー心理ー社会」 の円環的なつながりとして、
忘れられると言うのはある意味幸せ、と言うのもよく分かります。なので、本書では例え未熟児であってもNICU(集中治療室)に入り、母子で相互やり取りする機会が喪失することでの、細胞レベルの記憶や脳の発達への悪影響が生涯に及ぼすリスクについて、とても書かれています。
あと、
~脳と免疫系は双方向の経路を介して、
は体験的に非常に心当たりがあります。実は児相に来てから2~
きっと、脳が「こんなストレス無理、休め!」
つまり、今まさに当時のことを「生物ー心理ー社会」
知識(認知)
/ \
体験(感覚) - 感情(気持ち)
知識としてだけでなく、 体験と感情をともない身をもって総合的に理解できた、 と言えるかもしれませんね。多少、自虐的ではありますが。
~これからの時代は、脳と心を、 統合して考えていく時代だと言える。これらは相互に作用して、 単一のネットワークを構成しているのだから。要するに、 心身は一つなのである。
とあるように、今まで色んな角度から触れてきた「 認知ー身体ー感情」 の繋がりやバランスは神経科学的な見解とも一致するということか なと思います。
無意識というと根も葉もない魔術的な怪しい印象も受ける人も正直
「肌が合う」「鼻につく」という言葉は昔からあって、 感覚レベルで判断していることって日常茶飯事だし、 先人はそれを知っていて言語化していますよね、すでに。 よくある「何となく」の多くは言語化できないだけで、 直感が働いているはずです。
となると、LSWに限らず、 トラウマでも何でも記憶を扱うということは、 認知によって言語化できる顕在記憶だけでなく、 うまく言語化できない潜在記憶、つまり細胞レベルの記憶、 身体性記憶をも念頭に入れた理解や支援の方法論が必要ということになり ますよね。
なかなか奥が深いです。その辺りのメカニズムに繋がる話題が、 胎児の発達にはテンコ盛りで個人的には非常に面白いので、 今後も少しずつ紹介していきます。
ではでは。