LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第99回】ゴールキーパーと児童相談所の特殊性

メンバーの皆さま
 
こんばんわ。管理人です。
 
いよいよ2018年も残りわずか。皆さま、師走をいかがお過ごしでしょうか。
 
気がつけば、blog更新せず1ヶ月…。今思えば、今月はちょっと最近ストレスフルで、blog開始と共に封印したスマホゲームを現実逃避的に始めてみたり…。
 
日記のように続けているモノサシがあると、その時々の「自分の状態」の変化がよくわかりますね。予定が詰まりすぎてました。
 
(※文字の色が薄いのは現実逃避して意識が遠のいているから…ではなくて単に僕の修正技術不足。途中から直ります。スミマセン)
 
 
そんな今年を締めくくる(だろう)【第99回】コラムで取り上げる記事はコレです。
 
 
 
川島永嗣への“総叩き”で感じた、日本でGKが育たなくなる危機感
 
 
もうすっかり過去の出来事になってしまいましたが、2018年を代表するビッグイベントと言えば「W杯ロシア大会」。おかけで今年もLSWブログなのに、サッカー記事を多用しちゃいましたし(苦笑)
 
まぁ、何でサッカー記事を多用するかと言うと、単に僕の趣味嗜好の部分だけではなくて、マイナーな児童福祉の世界で起こっていることを世間の興味関心が高まっている事に例えて、少しでもわかりやすく多くの人と共有する方法を模索しているから。ですが、かえってわかりにくかったらスミマセン…。
 
 
で、懲りずに今回取り上げるのは『ゴールキーパーに関する特集記事なのですが、その内容を読んでいると、どうにも他人事には思えないんですよね。
 
詳しい内容はリンク参照ですけど『GK→児童相談所に置き換えて読むと、ビックリするほど置かれている立場がそっくりなんです。
 
W杯グループリーグ第1戦第2戦での失点シーンについての「GK川島永嗣への"総叩き"」は記憶に残っている人も多いと思いますが、記事内容をざっくりまとめるとこんな感じ。
 
GKは『プロの監督でも技術的なことは説明できない』特殊なポジション。国によっても流派(アプローチ)が違う。
GKは『10のファインセーブが1つのミスで吹き飛ぶ』特殊なポジション。他メンバーのミスは見逃され、GKのミスが目立つのでそこだけを理不尽に叩かれ続ける。
GKの『フィールドプレーヤー化』ルール変更や戦術進化によって求められる役割スキルが進化(バックパスで手を使えなくなってから、最後尾からゲームを組み立てる足技も求められる)。
 
 
例えば①に関して、日本の虐待対応は"何でもかんでも"児童相談所に権限を持たせて「介入しながらも支援もやらせる」システムですけど、これは俗に言う「ガラパゴス化」で司法・警察等とで分業がされている欧米と比べかなり特殊なんです。
 
この辺の誤解はかなり深いなと思っていまして、最近しきりにニュースになっている児童相談所の介入強化なんて、この1〜2年の改正『児童福祉法の全体の一部に過ぎないんですよね。
 

f:id:lswshizuoka:20181227071118j:plain

 

サッカー図は僕のイメージですけど、児童相談所はあくまで『児童福祉法』の理念である子どもの健やかな成長・発達・自立を支える機関なんです。そのために「保護者を支援しなければならない」ともはっきり書かれています。

 
ただ、子どもが伸び伸び持っている力を発揮するには「からだが安全であり」「こころが安心できる」環境は必要。
 
なので、子どもの成長とそれを支える家庭に関わるための、介入は目的ではなく手段なんです。そして必要あれば、やむなく一時保護や里親委託・施設入所しますけど、それは親子関係再構築子どもの自立支援ためなんですね。
 
ところが、その手法はかなり特殊で、例えば保健医療教育の相談は、在宅と任意相談を前提としてます。それに比べて、介入して一旦家庭分離しておいて親子関係を再構築する「介入と支援」を組み合わせたアプローチなんて他の分野ではあり得ないことなんですよね。
(上のサッカー図で言うと中央突破ではなくて、サイドを経由したビルドアップという感じ)
 
だからこその期待はあるのでしょうが、そこの調整・折衝で求められる技術は、おそらく多くの児相職員ですら上手く説明できない「ピッチに立った者にしかわからない景色」と「周囲の不理解」がそこにはあります。
(これらの整理と言語化が今後の課題です)
 
ただし、それは児童相談所・一時保護所が構える最後尾ゴール前)まで来てしまった場合であって、「子どもの育ち」を支えるアプローチはその前から行われている。
 
それは社会全体で子育てをする「保護者」を支えるシステム、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援システムであって、改正児童福祉法ではその支援の中心を市区町村が担ってください、ということなんです。よく見ると。
 
ちなみに下は国が示す「イメージ図」ですけど、

f:id:lswshizuoka:20181227071156j:plain

 
このように一番上「子育て世代包括支援センター」や中段の「市区町村子ども家庭総合拠点」が全体の連絡調整役となっていて、リスク高になると「児童相談所」も加わる形になってるんです。
 
その間にはキチンと『役割分担・連携を図りつつ、常に協同してを実施』と書いてあります。
 
なので、サッカーの図のように前線で家族親族・母子保健・学校でスクラムを組んで「子どもの成長」をどんどん促せるケースはそれで済むわけですが、「ちょっと育て難いな」とか「他人になんて相談できない」というケースが段々危険になってくると下に降りてくる。けれど、それは関わる機関や人を増やして、子どもの成長と子育てする家庭を支えましょう、ということ。
 
 
ですけど、②GKは『10のファインセーブが1つのミスで吹き飛ぶ』のように児童相談所は「一つの失点」でW杯の川島永嗣のように偉い叩かれるわけです。ニュースになる児童の死亡事例がソレです。
 
でも川島選手は、第3戦ポーランド戦でFIFAが公式に認める「スーパーセーブ」を連発していて、おそらくその活躍がなければ日本は決勝トーナメント進めてないし、物議を醸した"時間稼ぎ"をする土俵にすら乗れなかったと思うんです。その功績は一瞬で忘れ去られますけど。
 
社会的養護におけるLSWって似たようなところがあって、子どもに安全な環境を整えて、被虐待に安心感を与える信頼関係を育んで、ようやく過去や未来に向き合えるようになるわけですから、LSWを実施できる時点で、相当なスーパープレーをしていると思うんですよね。「子どもの成長」に向けて。
 
それは、③GKの『フィールドプレーヤー化』ような取り組みで、ただ失点を防ぐだけでなく、子どもの未来」に向けた丁寧ルドアップ、周囲と連携しながらパスをつないでサッカー図の上の方に再浮上するようなイメージ。
 
しかしながら、うなぎ登り通告対応に追われる児童相談所は、はや波状攻撃を弾き返すのに精一杯のDF・GK状態。マイボールにして丁寧に味方につないで、攻撃参加してなんて前に出ていく余力なんてない状況。そもそも毎年異動があって替わりに新人が送り込まれるので、そんな攻守にわたってソツなくこなせる経験者自体が多くない。
 
サッカーだと足元の技術になりますが、児童福祉で言えば「ソーシャルワークの力」になるのかなと里親推進が進む中で、児童福祉施設も入所児童を見るだけでなく里親支援・地域支援等の多機能化が求められていますから、「ソーシャルワーカー」だけでなく「ケアワーカー」でも「心理」でも多職種に求められソーシャルワーク水準はますます高くなると思います。
 
サッカーでは戦術進化によって、FWでも守備を、DF・GKでも足元の技術が当たり前に求められる時代。〇〇だけやってればいい時代は終わり、攻守共にチームのタスクをこなせるのは当たり前、さらに+α個人で何をチームにもたらせるか、そんな時代に突入しています。
 
前回コラムで「役割の解放」が特徴のチームワークのトランスモデルを紹介しましたが、まさに児童福祉の虐待対応に求められるのはそれかなと。もはや保健教育医療どこでも虐待ケースに遭遇する事は避けられなくて、ある程度の知識や技術は持って望まないと行けないし、もちろん得意分野の違いはあれ、機関・職種を超えて様々な専門家の知識・技術をシェアしたチーム対応が必要な時代に突入している、そんな気が僕はしています。
 
 
日本経済新聞(12/18)によると、
児童虐待、児相職員2900人増 全市町村には支援拠点
f:id:lswshizuoka:20181227075912j:image
 
目黒区の事件をきっかけに、前々から言われていた「児童福祉司2000人増員」に加えて「児童心理司・保健師も大幅増員」となるようです。
 
しかし、川島永嗣"総叩き"に似たような児童虐待対応の社会状況で、だって今の日本で俺が子供だったら、絶対にGKをやろうと思わないからね」ということ。
 
この状況で成り手がいるのか?数だけ集めて潰れたら使い捨てのような状況にならないか?
 
当たり前ですが、「自分が大切にされている・支えられている」と思えない人に、他人を大切にするような葛藤に寄り添うような支援はできないと思うんです。
 
・そもそも何を目指した「児相の体制強化」なのか
・増員した人材を誰がどう育てるのか
・保護者の相談などに応じ、機関調整の中心となる「子ども家庭総合支援拠点」の人材確保はどうするのか
・妊娠期の支援の入り口である「子育て世代包括支援センター」とはどうのように連携していくのか
 
人数が増えるのは喜ばしいことですが、教員や看護師等の専門職とは違い「児童福祉司・児童心理司養成校」は存在しませんから、職場配置されてから「実務と養成」が同時スタートするのが現実。
 
若手を積極的に使い育てながら、チームの成熟度も上げつつリーグ残留を狙うサッカーの中堅チームのようなマネジメントが現場では求められます。増えた人数をどうチームにするのか、ということが今後の大きなトピックになるはずです、というかなって欲しいですね。
 
実はこのあたりのチームの土台、支援者同士の安心感・安定感が、回りに回ってLSWを実施できるか、子どもの揺れを抱えるチームになれるかの鍵になってくると思うんです。
 
どうしたって、LSWは「プラスα」的な支援で、効果的なものもすぐに見えにくいので、余程の意識や精神的余裕がなれけば後回しになりがちな取り組みだと思うので。正直。
 
 
 
今年の締め括りに、記事のラストを紹介。
 
〜GKのミスってわかりやすし、海外でも失点や敗戦に直結しているから凄く叩かれるじゃないですか。ただ、日本の場合はそもそも『ミス=悪』みたいな図式が強過ぎるのも良くないな、と。これは社会や文化にも起因していると思うんですが。ただ、僕がより深刻に感じたのはGKが『褒められない』ことですよ
 
〜では、(海外で)なんでGKが人気ポジションなのかと言えば、ビッグセーブした時にムチャクチャ褒められるから。無失点なら絶賛される。まさしく英雄になれる。『お前のおかげで勝ったぞ』と言ってもらえる。日本のGKについても、そういう加点方式の発想をしていくことが大事なんじゃないでしょうか。『凄いGKは誰が見ても凄い』(by川島永嗣)わけで、もっとGKを褒めましょう(笑)
 
 
僕が思うに、児童福祉でも大人同士が「子どもの成長を共に喜ぶ」機会がもっともっとあっていいでしょうと。大概、関係機関で集まる時は"困った時"で、それはそれで必要なんですけど、だからこそポジティブフィードバックの場面を意図的に作ることも必要なんだろうなと。
 
そして、もっともっと大人のいい取り組みに対して『あなたのおかげで、こんなに良くなったよ!子どもが幸せになったよ!』と褒めましょう、絶賛しましょう。
 
支援者だって大人だって親だって人間です。モチベーションひとつで変わる部分はどうしたってあります。
 
LSWは、もちろん本人の為なんですけど、大人側にとっても忙しい中でもふと立ち止まって、子どもの成長を振り返り、共有することの喜びを思い出させてくれる、そんな機会でもある気がします。
 
また、それは多忙な業務に追われるなか、忘れ去られがちな児童福祉の原点・理念「子どもの健やかな成長・発達・自立」を支えるのが今の仕事のミッションであることを思い出させてくれる場、でもある気がするんですよね。
 
 
「この仕事って、いいな」
 
「人と関わることって、悪くないな」
 
 
陽の目には当たりにくい仕事ではあるけれど、この世界に触れた人には、そんな風に思ってもらえるように、目の前の人との関わり・つながりを大切に、丁寧につむぎ対応していく。
 
そんなことを、改めて考えさせられ、もがいてみて、自分の中では2017年よりも少し整理がついた2018年だった気がします。
 
その整理はblogを書きながら進んだ部分もありますし、また増加するアクセス数を励みに感じながら、12月は若干怪しかったですが、無事一年間blog継続できたおかげかなと思います。
 
一年後。2019年の暮れに、自分が何を書いているのか全く想像がつきませんが、そんな予測不能な自分自身の変化を楽しみにしつつ、来年もblogを続けていきますので、今後もお付き合いよろしくお願いします。
 
 
それでは、皆さま良いお年をお過ごしください。
 
 
ではでは。