LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第134回】自分の内なる解釈人「インタープリターモジュール」

あけましておめでとうございます。2023年もよろしくお願いします。

 


昨年はLSW勉強会開催も一回でしたし、blog後半はW杯一色でしたし、今年は気持ちを新たにLSWについて考えていこうかな。

 


そんな風に思って、パラパラ読みで放置してしまっていた本を再び読み始めています。

 


内容は「自我状態療法」と「内的家族システム療法」。と言うか、それぞれ別の2冊を並行読みしてます。

 

 

 

全然LSW関係ないじゃん!

 

 

 

と思われる方もいるかと思いますが、かなり関係ありそうなんです。そして、2冊並行読みという「こじれた」読み方をしているのにも訳がありまして。

 


もちろん普段からそんな器用な読書の仕方してないですよ。マルチタスクは効率悪いこと知っていますから。(仕事は結構そうなっちゃいますが…)

 


その訳については今後触れていくとして、今回はそれらの本では触れられてはいないけど、大いに関係する点についての紹介。

 


つまり、前フリです。

 

 

 

 


で、今回の本題はここから。

 


話題は「インタープリター」について。

 

 

 

インタープリターとは、

 


interpreter

1 通訳する人。通訳者。

2 BASIC、FORTRANなどのプログラミング用の高級言語を、コンピューター用の機械語に翻訳するプログラム。

3 国立公園に常駐し、その自然や歴史を旅行者に解説する人。

        (デジタル大辞泉より)

 


という感じで、通訳する人、解説する人、的に色んな分野で使われる言葉のよう。

 

 

 

そして今回扱う「インタープリター」は、通訳人、解説員みたいな機能が我々の脳の中にはありますよ、と言う話しです。

 


まず人間の脳は一つの塊のように見えて実は複数のモジュール(機能単位)の集合体と言えますよね。例えば、大きくは左脳右脳で分かれてますし、記憶を司る「海馬」とか、○○を司る△△みたいなことです。

 


インタープリター」とは、左脳の機能単位の一つで、情報と情報の隙間を埋めてつなぎ合わせてくれる役割を果たしてくれる「解釈システム」なのだそう。

 

 

 

情報と情報の隙間を埋めてつなぎ合わせる、ってメチャクチャLSWっぽくないですか⁉︎

 


言い換えると、別々に散らばっている情報の隙間をつなぎ合わせて一つのストーリーとして解釈する役割とも言えて、ここまで言うと、もはやLSWで当事者の内面で起きる事だったり、支援者がサポートする内容そのものですよね。

 


こじつけではなく、脳にそのような機能を果たす部位があるという内容説明で、ここまでLSWと重なるんですから、面白い。

 

 

 

更に続けます。

 


インタープリター」の役割について細かく言うと、

・感覚器から得られる五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)情報をつなぎ合わせて自己の認識としてまとめる

・比喩表現の間を埋めて理解につなげる

・大勢の人々の別々の感情を読み取って、場の空気感として理解する

 


そんな役割を果たしていると…

 

 

 

おや?

 

 

 

文脈を読む、場の空気を読む。

 


そんなことが苦手な特徴を持つ人に、児童福祉分野ではよく出会いますね。

 

 

 

そう、これはASD自閉スペクトラム症)の特徴でよく言われることなんですが、ASDの人は「インタープリター」が上手く働かないことがわかっているそうなんです。

 


これは以前コラムで紹介した内容↓でして、

 


参考)【第118回】感情分化と身体感覚

https://lswshizuoka.hatenadiary.jp/entry/2022/04/04/074637

 


自閉症の情報処理の特徴のひとつが,局所的(部分的)な情報処理と、大域的(全体的)な情報処理のバランスに表れている。定型発達者の情報処理の傾向は、個別の情報(局所的情報)を統合して、全体的なパターン(大局的情報)を見出すことに長けており、しばしば局所的情報よりも大局的情報が優先される…これに対して自閉症では、全体的に統合された知覚がしづらく、局所的情報が重視されがちである。

 

 

 

と言うことなんだそうです。

 


人によって運動神経や歌の上手さに違うように、「木を見て森を見ず」にならず情報を大局的に統合できるかどうかは、脳の機能的に得意不得意の個人差がありそうということ。

 


世間一般的に言うと「センスのあるなし」なんでしょうけど、ASDの考え方はスペクトラムという連続体。情報の大局的な統合能力も「ある無し」「0か100」の二極ではなくて、どれくらい得意か苦手かということだと思うんです。

 

 

 

で、インタープリターは情報の隙間を埋めてくれるだけでなく、時間の隙間も埋める役割を担っている、と。

 


つまり、インタープリターは、「昨日の自分」と「今の自分」が同じ人物であるという連続性の理解をまとめてくれる役割を果たしていて、インタプリターが上手く働かないASDの人は「いま現在」の自分と「昔」の自分がひとつの繋がりだと感じにくい、と。

 

 

 

これは、LSWを考える上で非常に重要な視点ですよね。

 


社会的養護で暮らし、あるいは転居や養育者の変更を繰り返していて、過去の情報に身近にアクセスしにくいから「人生の連続性」が感じられない子がいる。

 


これが一般的に考えられているLSW支援の対象者なんだと思います。

 


しかし、過去の情報があったとしても、過去の様々な情報をつなぎ合わせ、自分や家族のストーリーとして構成すること自体そもそも苦手な人が少数ですが一定割合で存在する。

 


苦手だからこそ、定着するまで何度も何度も繰り返し、個性に合わせた継続的なサポートが必要になる。これは、スポーツや音楽、勉強の世界とも似ているかもしれません。

 

 

 

小さい頃からアルバムを見たり、親や親戚から昔話しを聞かされて、なんとなく自分史が出来上がってくる。

 

そんな自然発生的に行われている「自分史」の構成具合は、同じ情報や環境に置かれていても実は個人差がありそうです、という話しでした。

 

 

 

今回このへんで。

 

 

 

ではでは。