【第126回】トラウマを抱える児童のLSW(中編)
こんにちは。管理人です。
前回の続き「トラウマを抱える児童のLSW(中編)」。
実は全体像を描かぬまま、たぶんあと一回じゃ話は終わらないだろうと、なんとなくの据え置き中編です(苦笑)
前回は、LSWで過去を扱う際に、トラウマを思い出すトリガー(きっかけ)となる刺激を意図的に避けるような質問をして、喪失体験(グリーフ)に焦点化しましょう、という話しをしました。
これは基本的に、トラウマインフォームドケアの考え方と同じです。現実生活において、トリガー刺激を避けるように生活する。これは、フラッシュバックが起きているだろう児童への対応とすれば、ごくごく自然な流れかと思います。
これを、過去を振り返る、という行為において同様にすればいい、ということ。
「いやいや、過去を振り返ったら過去の嫌な事に触れちゃうかもしれないじゃないですか」と思われる方も多いと思います。LSWが避けられる理由は、概ねこのあたりの不安によるところが大きいので、珍しいことではありません。
大は小を兼ねる、と言いますが、小を避けるために大を避けるという考え方。間違ってはないと思います。
身体的なことに例えて言えば、急に倒れた人や大怪我をした人に対して、素人が下手に動かしてはいけない、せめて声かけでの励ましはするものの、救急隊員が来るまで安静にしておく、というのは感覚的な判断。
外側から目に見えて起きていることを把握できないので、仮に肋骨が折れていたりすると、変に動かすことで内臓を傷つけて二次受傷的な致命傷を負うかもしれません。
その辺の判断は、素人では全然わからないので、とても手出しできない。
トラウマを抱えた児童へのLSWは、この状態に近いと言えるかもしれません。
外側からハッキリとした心の傷の程度や箇所はわからない。でも、何か地雷的なものがどこかにあることだけはわかっている。確かに、そんな状態で手を出したくはありませんね。
じゃあ、何をするかと言うと、それがトラウマについての「アセスメント」です。
アセスメントとは、客観的な評価と日本語では訳されますが、児童福祉領域で言えば、過去から現在の流れの中で現在起きていることを把握することです。
トラウマの例で言えば、どのようなトラウマ体験を、どのような頻度で経験し、どの程度のケアを受けていて、どれくらいのダメージが蓄積されており、どの程度いまの生活に影響が出ているのか、と言ったことです。
まぁ、当たり前と言えば当たり前のことなんですが、日常生活において豹変的にキレる、感情コントロールがおぼつかない等といった現れが児童にある時、「どう暴力を止めるか」という対応ばかりが焦点化され、上のような背景要因、トラウマ体験の情報整理は意外と抜け落ちていることが多いです。
今までこういうことが起きているから、きっとこんな事が起きているのではないかという予測です。
「現象」→「アセスメント」→「対応」
この真ん中が抜けて、事が起きてどうしようどうしよう、の絆創膏貼りが繰り返される。そうすると、どうして上手くいったのか、どうして上手くいかなかったのかがわからないまま、経験として次に何も活かされない。
実は「発達障害」の理解は世間的に随分進みましたから、この枠組みでの話しが普通にされるんですが(しばしラベリングという別の問題は起きますが)、トラウマに関する共通理解はまだまだ低いと思います。
こどもの「落ち着きがない」状態があったとしても、落ち着かないがない=ADHDと単純なものではなくて、アタッチメントやトラウマの影響の可能性もありますから、生育歴や現在の環境を丁寧に確認しますね。
これも、過去から現在の流れと、遺伝的要因と環境的要因の影響を見極める「アセスメント」を行なっていると言えます。
なので、現代の社会的養護に関わる支援者は職種に関わらず「トラウマ」の基礎知識は必要になってきてしまったんだと思います。トラウマの基礎的な知識がないと、何を確認した方がいいかもわからないですから。
ちなみに、トラウマの知識と言っても「治療法」を身につけなくてはいけないわけではありません。治療=cureと手当て=careの違い。トラウマ治療は研修で専門技術を学んだ専門家が行うことかもしれませんが、トラウマケアは日常的に関わる人すべてができます。
そして対応は、アセスメントに基づいて考えられるもので、未来の予測(今後こうなるだろうから、こんな支援をしたら、こう変化するだろう)をすることを「見立て」と言いますね。
なので、「このケースのアセスメントはどうなってる?」「見立ては?」という会話は、
「過去〜現在の流れはどうなってる?」
「じゃあ今後の未来はどうなりそうだ?」
という内容に変換できるかと。
話題を戻すと、LSWって、子どもの中で「過去〜現在〜未来」がぶつ切りでつながっていない、その連続性をつなげる支援を、という文脈で検討されることが多いと思うんです。
じゃあ支援する大人は、ぶつ切りになっている子どもの「過去〜現在〜未来」の人生をどれくらい分かってる? ということです。
その人生の過酷さがどれくらいのものであったと査定して、どのような支援が必要と想定しているか。
虐待を受けたきた児童は、刹那的に現在を生きている、すぐ先のことなんて考えずに、と言うのは現場で支援をしている方は何度も見聞きしている事だと思います。
その子たちは、今までの人生をサバイバルしてきた過程で、そうすることが一番適応的な方法だったから、そうしているだけのこと。
昨日や明日のことを考えていたら、身が持たないし、その事に何のメリットもなかった人生であり、人間の生存本能、防衛反応として本人の意思や意向とは関係なしにそのように生きてきた、ということ。
これは前回取り扱った「喪失」にも同じ事が言えますね。転居や離婚といった一言で説明される出来事の前後で、子ども視点では、好きだった親や親しい友達との突然の別れ、新しい環境への適応、もしかすると新しい親のパートナーとの生活の始まり、それに伴う感情抑圧などなど様々な出来事と内的体験が起きているはずです。
そのひとつひとつが、その人の人生にどのような影響を与えているのか、ケアの必要性はどうなのかを、まずは支援者が子どもの体験や気持ちに想い馳せながら想像してみること。LSW実施の前に行わなくてはいけないことは、そのアセスメントの作業です。
そろそろ長くなってきたので、いったん切りにしましょう。やはり話しは全然終わりませんね。
今回言いたいことは、子どもに人生を振り返らせる前に、支援する大人がしっかりと子どもの人生を振り返りましょう、ということ。
もちろん全てのことが事前把握できるわけではありませんが、考えられることは可能な限り考えておきましょう。
その確認事項の1つが「トラウマ」、
と言う感じでしょうか。
次回は、子ども視点でトラウマについて、もう少しツッコミます。
ではでは。
【第125回】トラウマを抱える児童のLSW(前編)
こんにちは。管理人です。
「トラウマを抱える児童のLSW」について、今回は本題です。
僕が一番大事だと思うのが、「その時行おうとしているLSWの目的は何なのか?」という軸を支援者がきちんと持っておく、それは言い換えると「クライエントにニーズ、意向をしっかりと確認して把握する」ことです。
例えば、「自分の過去を知りたい」と本人が言っている場合、その表面的な行為だけではなく、その言葉が意味する本質的ニーズ、そして過去を知った後に何を望んでいるのかについて、本人と深くコミュニーケーションを取るということ。
以前コラムで、トラウマ治療において「過去を語る」ことはアプローチの一つではあるけれど、過去を語るタイミングや方法によってはかえって悪化させることが多いことは、触れたかと思います(何回コラムかまでは思い出せませんが…)。
「過去を知りたい」という言葉を額面通りに受け取り、嘘は教えてはいけない、綺麗事だけでなく現実も受け止めないといけない、というそれらしいアドバイスもあると、知りうるすべての情報をこどもに伝えて、こどもがパンクするということが起きることがあります。
もちろん、知る権利もありますから、その考え方の全てを否定するわけではないですが、例えば、一般家庭において幼児や小学校低学年のこどもに、家庭の収入や借金等の経済的問題、親族間の争いやゴタゴタ等を包み隠さず話すでしょうか。共有するメリットとデメリットはなんでしょうか?
子どもに余計な心配はかけたくないと思う親の方が日本では一般的な気がしますし、家庭の経済面が苦しい事は生活状況から隠し切れないまでも、わざわざ「毎月○万円の借金返済があって、うち利息率は○%」と具体的数字までこどもに理解してもらう必要性はないですよね。
あくまで例えですが、このように必要に応じて情報量を調整するということは、家族で社会でも営業でも普通に行われていることです。
何が言いたいかというと、「過去を振り返る=トラウマを含む人生の全てを扱わなければならない」という先入観をなくすこと。これとても大事かと思います。
生い立ちをふりかえると言っても0から100までの隅々まで詳細に思い出させる必要もないですし、実際24時間365日ビデオ撮影している訳じゃないので、どこまでいっても生い立ちを振り返る作業は、いまある情報と思い出せる記憶を切り貼りしてつなげたものになる、ということ。どこまでいっても。
それがストーリー(物語)構築のプロセスですし、もし今までに知らない情報が追加されれば、今までの情報に追加情報を取り込んで新たな人生ストーリーの再構築が起こるかもしれない。オルタナティブストーリーの構築ってやつです。
その中で、トラウマを想起するトリガーとなる話題を扱うのか、避けるのか。これはLSWに限らず、通常の面接でセンスのある人は相手の反応を見ながら何気なくやっていることかなと。
相手の反応を見て、際どいけどOKラインの質問をできる人もいれば、相手の気持ちや反応を気にせずに地雷を踏みまくっている場合もあると思います。
日常の人間関係の中でも、この人にこの話題はタブーだよ、みたいなことってありますよね。このことになるとスイッチ入っちゃって止められないというか面倒くさくなるみたいなやつです。
だいたい触れたくない話題になると、人は、「忘れた」「覚えてない」とか言ってみたり、口数が少なくなったり、ちょっと防衛するような仕草、目が泳いだり腕を組んだり、色々反応があるわけです。
そんな程度なら良いですが、地雷の中心を踏んでしまえば、穏やかに話していたのに急変して怒り出すことはめずらしくありません。(触れられたくない領域に侵入されて防衛スイッチが入り、別の人格パーツになっている場合もあると思います)
その相手のサインを、支援者がちゃんとキャッチして、どこまで踏み込むのか、留まるのか、話題を変えるのかコントロールしてあげる必要があります。
対話の中での、安全性の確保です。
LSWを検討する際、
「親から虐待されて、施設で暮らしていることを知ったら、こどもが不安定になりませんか?」
という質問はよくあります。僕の答えは、「そのお子さんは、どのように受け止めると思いますか?」です。
例えば、乳児期から里親宅で暮らし実親の存在を知らないこどもと、物心ついた時から施設で暮らし幼稚園の友達は父母がいる家に帰るのに自分は施設に帰っていくこどもとでは、その情報の意味やインパクトは全然違いますよね。前者と後者では、もともと抱えている疑問や準備性が全然違いますから。
また、虐待と言っても千差万別ですよね。どのような事が、どの程度どの頻度で起こっていて、その子にとって身体的精神的ダメージがどれ程残るものだったのか、そして現在の生活の中でどの程度癒されているのか。
そして、どのような情報をどこまで扱うのか。先程、借金の具合をどの程度こどもに知らせる必要があるのかと例を出しましたが、例えば「なぜ自分は施設で暮らしているのか?」という幼稚園児の疑問に対して、「あなたは養父から○年○月○日に、風呂場で○○されて、○○の箇所に全治○週間の怪我を負い」までの詳細な情報は要らないですよね。
こどものニーズは何なのか?
言い換えると、抱えているモヤモヤに対して何があれば、こどもの心や頭の中の霧が完全とまでは言わずとも少しは晴れて、次のステージに意識を向けることができるのか。
上の施設のこどもの例は、実親との別れについての疑問、それは喪失体験の消化、もっと言えば、曖昧な喪失についての未完結な感情を整理する過程の一部、ということになります。(曖昧な喪失の詳細は、第20〜30回コラム参照ください)
トラウマ体験の全てを直面化せず、喪失体験を扱うということですね。
例えば、親の病気による死別など、被虐待経験がなく単純養護と言われる児童のケースにおけるLSWに近い形です。
では、被虐待のトラウマを抱えた児童に対してトラウマ体験を直接扱わずに、喪失体験にフォーカスしたLSWで過去情報を補えば、過去と現在がつながって、「過去ー現在ー未来」の時間的な連続性が持てる、未来つまり自分の将来を肯定的に考えられるようになるか、と言えば必ずしもそうでもないんです。
じゃあ何で先程のような、トラウマ体験をやんわり扱って喪失体験にフォーカスしたLSWの話しをしたか、と思いますよね。
そのあたりは、また説明が長くなりそうなので、一回ここで切ります。
今回のまとめとしては、
・過去を振り返ると言っても、全ての情報を扱わなければないらないわけではない。
・LSWが検討される社会的養護児童の多くの疑問は親との分離や転居と言った喪失体験。
トラウマ治療ならトラウマにフォーカスするが、生い立ちの疑問なら喪失体験にフォーカスしたアプローチになる。目的に応じて、扱う情報の範囲と深度を調整する。本人の意思と反応を想定して尊重しながら。
・対話の安全性の確保が第一。本人の意思がない侵入的な話は再トラウマ体験となる可能性がある。
と言った感じでしょうか。
続きは、また今度に。
ではでは。
【第124回】(まえがき)トラウマを抱えた児童へのLSW
お久しぶりです。管理人です。
しばらく更新が止まっていましたが、この間、 コロナで勉強会を中止したり、 研修依頼が立て込んで準備に追われていたり色々バタついておりま した。
気がついたら「トラウマと身体」の記事も注目記事TOP5にラン クインされていまして、最近もblogを読んでくださっている方 がいるんだなと、ありがたい限りです。
ようやく最近少し落ち着いてきまして、 本の続きを読めてきましたので、いい加減、 続きを書かなきゃかなと、思い至りました。
約5か月ぶりの更新なので軽く振り返りを。
このblogは、LSWに関わるだろう周辺のトピックについて、 書籍等を一部引用しながら、あれやこれやLSWについて考えるも のです。
この本は「第I部:理論」「第II部:治療」 に分かれていまして、これまでは前半「理論」 についての内容を扱ってました。
後半「治療」部分についても、 その形を継続することもできるのですが、 正直少し面倒くさくなってきたのと、 研修準備で他文献も並行して読む中で、 この本以外の内容も僕の中で繋がってきてしまったので、 ちょっと今回はフリーランスに現在僕の中で整理している過程を綴 ってみます。
【テーマ】
何についての整理かというと、『トラウマを抱えた児童へのLSW 』について。
約10年以上前に日本でLSWが広まり始めた当初から「LSWで 子どもが荒れるのではないか?」「 辛い過去を振り返る必要があるのか?」という問いは、 ずっとありまして。
関係者皆さんの地道な広報・研修活動のおかげで、現在では随分「 子どもの知る権利」が浸透し、施設や里親さんからLSW実施に反 対する声は少なくなったと思います。
LSWの方法論についても、 書籍や研修会によって随分と共有されるようになりましたし、 記憶という共通項から一部のトラウマアプローチ(NETやTF- CBT等)とLSWの関連が扱われることもありました。
ただ、僕が児童福祉現場に入ってからずっと感じていた疑問は、 そもそも被虐待児が大多数を占める日本の社会的養護児童のケアに おいて、 支援現場に共通理解や知識がほとんどないのかトラウマの話題にあがらないこと。
今思えば、児童福祉施設の現場ケアワーカーさんの多くが、 保育士課程や社会福祉士課程出身者であれば、 トラウマの知識がないのは当然と言えば当然ですが…当時の僕はそ んな事情や背景もよくわかっていませんでした。
LSWの「なぜ子どもが荒れるのか?」という問いも、 トラウマ体験のフラッシュバックで説明できる事例も随分ある気が していましたが、 当時の僕は他者に説明できるほど整理できていませんでしたし、 たぶん他の方もトラウマの事を知らなかったんじゃないかなと想像 します。
今でこそ、トラウマインフォームドケア( トラウマを前提としたケア) が広く言われるようになってますので、 トラウマの共通理解は以前より広がっていると思いますが、 それでもLSWとトラウマが一緒に語られることは少ないので…
というのが、本編までのくだりです。
(相変わらず前段が長くてスミマセン…)
つまり、一言でいうと「この本は、 そんな疑問をかなりクリアに説明してくれる内容だった」 ということなんです。
じゃあ、詳しくはこの本読んで下さいってことになるんですが、 以前のblogに書きましたが電話帳の様な厚さで、 内容もそれなりなんで、 ちょっと全部読めなんて気軽に勧められないというのが本音。
なので、 美味しそうなところを食べやすい形でつまみ食い程度に紹介して、 僕の食レポ+感想を書く的な感じがこのblogのイメージ。 気になる人は、是非お店でちゃんと食べてみてください的な。
と書きながら、このまま本編に突入するのは、 かなり危険な気がしてきました。
沼にハマりそう気がするといいますか、 ちゃんと一つ一つ丁寧に説明し出したら話し言葉で1時間2時間か かるのではと思ってきたので、ここで一回切ります。
予め自制を効かせるあたりは、僕がちょっと成長したところかもしれません。以前の僕なら、このままダラダラ続けてそうです(苦笑)
内容がなくてスミマセンが、5か月ぶりの更新なのでリハビリだと思ってお許しください。
続きは、また更新します。
ではでは。
【第123回】AI子育て支援の未来予想図
メンバーの皆さま
こんにちは。管理人です。
先週、2019年12月ぶりに、静岡LSW勉強会開催しました。 (わたし、勉強会の管理人。サイト管理はあくまでサブです)
二年半ぶりでしたが、やっぱり直接のやりとり、 対話の中での学びは、思考と理解が深まります。 自己満じゃなくて、初参加の方にもそんな感想をいただいて、 本当に良かったです。
そんなタイミングでスマホが壊れてしまって連絡取れなくなった方 、本当にすみません。しかし、 何故に二年半ぶりの勉強会前日にスマホ壊れますかね(苦笑)。
神様は試練をお与えになると言うか、 いかに自分がスマホに依存しているか思い知らされた久々の勉強会 でした。
しかも、docomoのahamo契約なので、 オンラインで新しい故障対応や新機種注文しようとすると、「 wifiを切ってログインしてください」って…
それが出来るなら買い替え検討しないし!
もちろん、電源入れ直したり、SIMカード入れ直したり、 初期化したり、 ありとあらゆる自己の事故対応の手立ては講じておりますよ。 それでもダメなのです。
てな感じで、完全にデジタル化の落し穴に迷い込んでます(汗)
前回コラムではGW前半に妄想した、EBPM( エビデンスに基づく政策立案と実行)的な養育情報がデジタル化、 ビッグデータ化された未来について綴りました。
今回コラムはGW後半の妄想です。
それは、パパママが身近に受ける「子育て支援」 のAI化について。[現状把握]と[未来妄想]をしてみます。
まず現状把握について。
■①赤ちゃんの泣く理由がわかるアプリ
【参考】
いくじてん「パパッと育児の泣き声診断で起こっている⁉︎ アプリの口コミや使い方」
https://194ten.com/app-baby/
赤ちゃんって泣きますね。当たり前体操ですね。
もちろん0歳1歳だと、 泣いてる理由を言葉で表すことはできないので、 親は何で赤ちゃんが泣いてるのか、 その様子から想像して汲み取って対応しますね。
普段接してるママはですね、 泣き方や雰囲気のなんとなく差異を察知して職人芸的にオッパイと か眠たいとか判別してるわけですが、 パパがたまに子育てを手伝っても何で泣いてる理由なんか全然わか んない訳です。
なので、赤ちゃん泣き出すと大の大人がオロオロして、 すぐママに助けを求める、 でママに役立たずの烙印押されるみたいな(苦笑)、 これ少子化で子育て不慣れな現代パパ育児あるあるではないでしょ うか。
こんな時にお役立ち、 赤ちゃんの泣いている理由を教えてくれるアプリが、 2018年に出てるんですね。
その名も『パパッと育児』。
赤ちゃんの泣き声をビッグデータ化して、AIが判別。
「お腹がすいた」「眠い」「不快」「怒っている」
「遊んで欲しい」
の5択について、「お腹がすいた78%、眠い22%」 みたいな感じで教えてくれると。 その的中率はなんと約8割となかなかのもの。
子育ての見える化を目指したアプリで、泣き声診断じゃなくて、 睡眠リズムをデータ化して寝かしつけのタイミングを教えてくれた りして、男性の育児参加を促す目的もある。
なので、「パパと育児」→『パパッと育児』だと。
なんとなく、これに頼るパパは、 目の前の泣いている赤ちゃんを放置して、 まずスマホ探してアプリ起動させるのを優先させるみたいな、 本末転倒な状態も予想できます。
そこは同時処理マルチタスクでがんばれみたいな、 片方で赤ちゃん抱きながら、 もう片方でスマホ持つという感じの注意書きがきっと必要ですね。
ちなみに僕の息子が2017年生まれでですね、 身長体重とか別のアプリで記録してたんですよ。
もし息子が翌年2018年に生まれていたら、 このアプリにたどり着いていたのかな〜。そうだとしたら、 子育てどうなっていたかな、なんて色々想像しました。
コレ、 アメリカのような乳児を大人と別の部屋で寝かせておく国から高い 関心があるみたいですよ。赤ちゃんが泣いた事にすぐ気づけるし、 その理由もすぐにわかるから。
動物の鳴き声解析も随分進んでいると聞いたことがありますが、 外国語通話アプリが一般普及してきたように、 今後は泣き声通訳アプリも普及してくるのかもしれませんね。
■②ひとの技術とモチベーションを上げるAI
■③盲導犬+相手の表情を読み取るAI
次は一つの記事からまとめて二つ紹介
FUTURE IS NOW オムロン株式会社に聞いた、 新しいテクノロジーとのニューノーマルな暮らし。
後篇:卓球ロボットとAIスーツケースが提案する、 人間と機械が融和する未来。
https://fin.miraiteiban.jp/ omron02/
二つ目は卓球ロボット。その名は「フォルフェウス」。
(名前の由来は記事を参照ください。ギリシャ語です)
卓球ロボットといっても、 ただ問答無用に球を弾き返すんじゃあないんですよ。
なんとプレイヤーの腕前を判断して、 表情と脈拍などから感情推移を読み取り、 プレイヤーにとって心地の良いラリーを続けて、 卓球技術を向上させてくれるんだそう。
しかも、この「プレイヤーのモチベーションを高めるAI」は、 あのゲーム会社『スクエアエニクス』との共同開発。
RPG(ロールプレイングゲーム)で一番の醍醐味である「 レベル上げ」の、 強すぎず弱すぎずの敵の強さの段階とレベル上げに必要な戦闘数の 、 ヤル気を失わせない飽きと根気の絶妙なバランスが応用されてるん ですよね、きっと。
実際にこんな専属コーチいたら、メキメキ上達しそう。
今のところの弱点は、大きすぎる壁のような外見だそうで、 ちょっと心の距離がいなめないと。
ゲゲゲの鬼太郎の「ぬりかべ」 みたいなデザインにしたらし少しは親しみが出るのか、 かえって不気味か。
まぁ、TVや携帯電話がそうであったように、 サイズ問題はいずれ解消されますよね。
最後の三つ目は、「AIスーツケース」。
これはですね、視覚障害の人がこのスーツケースを背負うことで、 目的地までのナビしてもらいながら。 すれ違う人の感情も教えてくれるという優れもの。
黄色い点字みたいな道は随分普及してきたとは言え、 視覚障害の方は曲がり角から何歩の位置か実際に数えながら自分の 位置を把握しているんですって。
なので、突如話しかけられると現在位置を見失ってしまうので、 知り合いに出会っても気軽に話しかけられなかったと。 そんなコミュニケーションの不具合を解決してくれるということで す。
素晴らしい発明ですよね。車で例えるなら、カーナビ+ 道路標識の自動認識システムみたいな感じでしょうか。
このシステムを使えば、高齢者で視覚や聴覚が衰えても、 行動範囲を制限することなく今まで通り自由に暮らすことができる ようになるだろう、とのこと。
現在のメガネや補聴器の超進化版ですかね。
そして、このAIスーツケースと、 技術の進歩によぅえサイズはどんどん縮小化していくことが想像で きます。
以上をまとめると、「泣き声判断」「スキルアップコーチ」「 表情読み取り」の3つは、 すでにAIによるサポートが実現しているということです。
ここからは、僕の未来予想(妄想)です。
この3要素が現段階でクリアされているなら、将来的には親子相互 交流療法(PCIT:Parent-Child Interaction Therapy)のAI化が可能なんじゃないと、 単純に思ってしまいます。
親子相互交流療法とは、プレイルームで遊んでいる親子に対して、 外にいるセラピストが親にインカムでリアルタイムで助言したり褒 めたり励まして親子関係改善を図る心理療法です。
特に、こどもに発達障害があると、 注意散漫だったり意思疎通が上手くいかなかったりで親が自信喪失 しやすいので、 関わり方のコツをその場でアドバイスできるのが良いところ。
おまけに、 児童福祉ケースは子どもだけではなく親自身が発達障害だったり不 安定愛着だったりすることが多々あります。
なので、具体的関わり方のアドバイスの前に、 親側のモチベーションや感情に合わせた内容とタイミングで投げか けたり、それ以前に親の気持ちを整理したり、 落ち着かせたりする対応の必要がよくよくあります。
上記の3点を進化させると、例えば「 ペアトレ眼鏡」的なものが出来て、 子どもがどんな感情なのかAIが教えてくれて、 どの辺りに視点を合わせながら(もちろん視覚的な提示)、 どのように子どもの注意を引いて、 どんな表情と声量と言葉遣いで何を伝えたらいいのか、 養育者の状態に合わせてアドバイスをくれて。
それで、養育者が親として成長を促すみたいな、 優しくアドバイスくれるお婆ちゃん的役割をAIが果たしてくれる なんてこと、出来そうじゃないですか。
また技術進化により眼鏡すらかける必要は無くなるでしょうし、A pple Watchみたく養育者の脳波や脈拍等バイオデータもリアルタイ ム把握しているので、養育者が興奮してきたら落ち着く行動を取る ように指示するとか、脳部位の活性化を判別してADHD系やAS D系に合わせたアドバイス、視線をどっちに向けて、 呼吸をどうして、意識を何に集中して等々、 活動不足な脳部位をストレッチするようにほぐして徐々に扱えるよ うにしていくみたいなことだって、可能になるんじゃないかと思い ます。
もっといくと「こころのエアコン」的な、 不安感高まってきたからセロトニン補給とか、 モチベーション下がってきたのでドーパミン投入みたいな、 AIが脳内ホルモンを自動調整なんてこともありえますよね。すで に、 鬱病患者に対してADがこんな感じのことを行い不安感が低下した という研究もあるみたいですし。
子ども臨床で「イライラの温度計」という気持ちを0〜 10に数値化して、身体的、 感情的変化への気づきを促すという手法って割と使われますが、 これをAIが脳波レベルで行ってくれる感じですかね。
さらに、今の技術で、ドローンが脳波信号を察知して、 念じるだけで動いてくれるやつ、 コントローラー必要なしってやつありますよね。
そうなってくると「オートマチック/マニュアル」の境目は、 手動するしないから、AI判断か人間判断か、 勝手に自動調整してくれるか人間が考えて念じるか、 という風に変化していくのも、 そう遠くない未来のような気がします。
ここまで来ると、もはや人間が人間なのか、AI に取って代わられるんじゃないか、 みたいに不安に思う人もいると思います。
そうじゃないですよ、と未来予想図を描いているのが、 2つ目の記事で紹介したOMRON(オムロン)株式会社です。
〉「テクノロジーによって人は成長しますが、成長した人がテクノ ロジーを失ったら、むしろ人の能力がマイナスになってしまいます 。例えば、車に乗って遠出をすることができますが、 車があることで、運動不足になってしまう。5年先の未来は、その 問題点を解消して、機械によって人が成長したり健康になったりす る世界を実現したいと思っています。また、 制御技術やセンシング技術が、高齢者が使う杖や車椅子など、 身近なものに実装されて、より健康で豊かな人生を送ることができ る。そんな商品を開発したいと思っていますね」。(古賀氏)
と言うように、OMRONは、 機械が人間機能の代替をする時代から、 機械と人間が協働する時代、 そして機械が人間と融和して人間を成長させる時代が来ると、 いうことをなんと1970年に「SINIC理論」 として発表して研究開発を続けている会社です。
今から50年前に、 2020年のAIやスマホが普及している社会を予測し、 さらに2030年、 2040年以降の社会と機械のあり方を予想しています。
先見の明がありすぎて、ヤバイというかもはやちょっと怖さや不気 味さすら感じます。 今後もSINIC理論の未来予想図は実現しそうですし、 実現のためにOMRONは研究開発を続けるんでしょうね。
SINIC理論に興味を持った方は、OMRON紹介記事の「 前篇」やOMRON株式会社HP、 youtubeの解説動画を参照ください。
なかなか面白いです。
空想妄想はここまで。
まぁ現実にも、マイナンバーに付随する個人情報がマイナポータルに集約されたことで、例えば、コンビニで住民票が取れたり、身体・精神障害者割引がスマホ決済に自動的に反映できたりと、民間サービスと行政サービスがデジタル化でリンクしつつありますよね。
児童手当とか、そういう手当関係の書類もマイナンバー連携してによって、どんどんペーパーレス化する時代が、もうすぐそこにあります。
こんなことをDX(Digital Transformation:デジタル・トランスフォーメーション)「デジタル技術による変革」と言うみたいで、夢が膨らむ一方、AIとかDXとか何の略だかよく分からなくなってきます。
そして、手元のスマホが壊れたことで全ての生活に支障をきたし右往左往している自分がいたものも現実。
ようやく新スマホにありつけコラム更新に至っているわけですが、妄想的にデジタル化の光の部分を考え、現実的にデジタル化の影の部分を体験した、そんなGWからの現在までの時間でした。
たぶん、おそらく、いつまでも人間と機械のハイブリット時代が続くのではないか、時代によって形は変われどもお互いにうまく共生できる未来になるといいな、とそんな風に思います。
それって、児童福祉における「親子関係」と似てるかもなぁ、なんて思ったりもしますね。
長くなりました。
ではでは。
【第122回】妄想EBPM的養育支援システム
【第121回】「無秩序ー無方向型」愛着と自己調整
【第120回】不安定な愛着パターンと自己調整
メンバーの皆さん