LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第126回】トラウマを抱える児童のLSW(中編)

こんにちは。管理人です。

 


前回の続き「トラウマを抱える児童のLSW(中編)」。

 


実は全体像を描かぬまま、たぶんあと一回じゃ話は終わらないだろうと、なんとなくの据え置き中編です(苦笑)

 


前回は、LSWで過去を扱う際に、トラウマを思い出すトリガー(きっかけ)となる刺激を意図的に避けるような質問をして、喪失体験(グリーフ)に焦点化しましょう、という話しをしました。

 


これは基本的に、トラウマインフォームドケアの考え方と同じです。現実生活において、トリガー刺激を避けるように生活する。これは、フラッシュバックが起きているだろう児童への対応とすれば、ごくごく自然な流れかと思います。

 


これを、過去を振り返る、という行為において同様にすればいい、ということ。

 

 

「いやいや、過去を振り返ったら過去の嫌な事に触れちゃうかもしれないじゃないですか」と思われる方も多いと思います。LSWが避けられる理由は、概ねこのあたりの不安によるところが大きいので、珍しいことではありません。

 

 

 

大は小を兼ねる、と言いますが、小を避けるために大を避けるという考え方。間違ってはないと思います。

 

 

 

身体的なことに例えて言えば、急に倒れた人や大怪我をした人に対して、素人が下手に動かしてはいけない、せめて声かけでの励ましはするものの、救急隊員が来るまで安静にしておく、というのは感覚的な判断。

 


外側から目に見えて起きていることを把握できないので、仮に肋骨が折れていたりすると、変に動かすことで内臓を傷つけて二次受傷的な致命傷を負うかもしれません。

 


その辺の判断は、素人では全然わからないので、とても手出しできない。

 

トラウマを抱えた児童へのLSWは、この状態に近いと言えるかもしれません。

 

 

 

外側からハッキリとした心の傷の程度や箇所はわからない。でも、何か地雷的なものがどこかにあることだけはわかっている。確かに、そんな状態で手を出したくはありませんね。

 

 

 

じゃあ、何をするかと言うと、それがトラウマについての「アセスメント」です。

 


アセスメントとは、客観的な評価と日本語では訳されますが、児童福祉領域で言えば、過去から現在の流れの中で現在起きていることを把握することです。

 


トラウマの例で言えば、どのようなトラウマ体験を、どのような頻度で経験し、どの程度のケアを受けていて、どれくらいのダメージが蓄積されており、どの程度いまの生活に影響が出ているのか、と言ったことです。

 


まぁ、当たり前と言えば当たり前のことなんですが、日常生活において豹変的にキレる、感情コントロールがおぼつかない等といった現れが児童にある時、「どう暴力を止めるか」という対応ばかりが焦点化され、上のような背景要因、トラウマ体験の情報整理は意外と抜け落ちていることが多いです。

 


今までこういうことが起きているから、きっとこんな事が起きているのではないかという予測です。

 

 

 

「現象」→「アセスメント」→「対応」

 

 

 

この真ん中が抜けて、事が起きてどうしようどうしよう、の絆創膏貼りが繰り返される。そうすると、どうして上手くいったのか、どうして上手くいかなかったのかがわからないまま、経験として次に何も活かされない。

 


実は「発達障害」の理解は世間的に随分進みましたから、この枠組みでの話しが普通にされるんですが(しばしラベリングという別の問題は起きますが)、トラウマに関する共通理解はまだまだ低いと思います。

 


こどもの「落ち着きがない」状態があったとしても、落ち着かないがない=ADHDと単純なものではなくて、アタッチメントやトラウマの影響の可能性もありますから、生育歴や現在の環境を丁寧に確認しますね。

 


これも、過去から現在の流れと、遺伝的要因と環境的要因の影響を見極める「アセスメント」を行なっていると言えます。

 


なので、現代の社会的養護に関わる支援者は職種に関わらず「トラウマ」の基礎知識は必要になってきてしまったんだと思います。トラウマの基礎的な知識がないと、何を確認した方がいいかもわからないですから。

 


ちなみに、トラウマの知識と言っても「治療法」を身につけなくてはいけないわけではありません。治療=cureと手当て=careの違い。トラウマ治療は研修で専門技術を学んだ専門家が行うことかもしれませんが、トラウマケアは日常的に関わる人すべてができます。

 

 

 

 


そして対応は、アセスメントに基づいて考えられるもので、未来の予測(今後こうなるだろうから、こんな支援をしたら、こう変化するだろう)をすることを「見立て」と言いますね。

 


なので、「このケースのアセスメントはどうなってる?」「見立ては?」という会話は、

 


「過去〜現在の流れはどうなってる?」

「じゃあ今後の未来はどうなりそうだ?」

 


という内容に変換できるかと。

 

 

 

話題を戻すと、LSWって、子どもの中で「過去〜現在〜未来」がぶつ切りでつながっていない、その連続性をつなげる支援を、という文脈で検討されることが多いと思うんです。

 


じゃあ支援する大人は、ぶつ切りになっている子どもの「過去〜現在〜未来」の人生をどれくらい分かってる? ということです。

 


その人生の過酷さがどれくらいのものであったと査定して、どのような支援が必要と想定しているか。

 


虐待を受けたきた児童は、刹那的に現在を生きている、すぐ先のことなんて考えずに、と言うのは現場で支援をしている方は何度も見聞きしている事だと思います。

 


その子たちは、今までの人生をサバイバルしてきた過程で、そうすることが一番適応的な方法だったから、そうしているだけのこと。

 


昨日や明日のことを考えていたら、身が持たないし、その事に何のメリットもなかった人生であり、人間の生存本能、防衛反応として本人の意思や意向とは関係なしにそのように生きてきた、ということ。

 

 

 

これは前回取り扱った「喪失」にも同じ事が言えますね。転居や離婚といった一言で説明される出来事の前後で、子ども視点では、好きだった親や親しい友達との突然の別れ、新しい環境への適応、もしかすると新しい親のパートナーとの生活の始まり、それに伴う感情抑圧などなど様々な出来事と内的体験が起きているはずです。

 


そのひとつひとつが、その人の人生にどのような影響を与えているのか、ケアの必要性はどうなのかを、まずは支援者が子どもの体験や気持ちに想い馳せながら想像してみること。LSW実施の前に行わなくてはいけないことは、そのアセスメントの作業です。

 

 

 

そろそろ長くなってきたので、いったん切りにしましょう。やはり話しは全然終わりませんね。

 


今回言いたいことは、子どもに人生を振り返らせる前に、支援する大人がしっかりと子どもの人生を振り返りましょう、ということ。

 


もちろん全てのことが事前把握できるわけではありませんが、考えられることは可能な限り考えておきましょう。

 


その確認事項の1つが「トラウマ」、

 


と言う感じでしょうか。

 

 

次回は、子ども視点でトラウマについて、もう少しツッコミます。

 

 

ではでは。

【第125回】トラウマを抱える児童のLSW(前編)

こんにちは。管理人です。

 


「トラウマを抱える児童のLSW」について、今回は本題です。

 


僕が一番大事だと思うのが、「その時行おうとしているLSWの目的は何なのか?」という軸を支援者がきちんと持っておく、それは言い換えると「クライエントにニーズ、意向をしっかりと確認して把握する」ことです。

 


例えば、「自分の過去を知りたい」と本人が言っている場合、その表面的な行為だけではなく、その言葉が意味する本質的ニーズ、そして過去を知った後に何を望んでいるのかについて、本人と深くコミュニーケーションを取るということ。

 


以前コラムで、トラウマ治療において「過去を語る」ことはアプローチの一つではあるけれど、過去を語るタイミングや方法によってはかえって悪化させることが多いことは、触れたかと思います(何回コラムかまでは思い出せませんが…)。

 


「過去を知りたい」という言葉を額面通りに受け取り、嘘は教えてはいけない、綺麗事だけでなく現実も受け止めないといけない、というそれらしいアドバイスもあると、知りうるすべての情報をこどもに伝えて、こどもがパンクするということが起きることがあります。

 


もちろん、知る権利もありますから、その考え方の全てを否定するわけではないですが、例えば、一般家庭において幼児や小学校低学年のこどもに、家庭の収入や借金等の経済的問題、親族間の争いやゴタゴタ等を包み隠さず話すでしょうか。共有するメリットとデメリットはなんでしょうか?

 


子どもに余計な心配はかけたくないと思う親の方が日本では一般的な気がしますし、家庭の経済面が苦しい事は生活状況から隠し切れないまでも、わざわざ「毎月○万円の借金返済があって、うち利息率は○%」と具体的数字までこどもに理解してもらう必要性はないですよね。

 


あくまで例えですが、このように必要に応じて情報量を調整するということは、家族で社会でも営業でも普通に行われていることです。

 


何が言いたいかというと、「過去を振り返る=トラウマを含む人生の全てを扱わなければならない」という先入観をなくすこと。これとても大事かと思います。

 


生い立ちをふりかえると言っても0から100までの隅々まで詳細に思い出させる必要もないですし、実際24時間365日ビデオ撮影している訳じゃないので、どこまでいっても生い立ちを振り返る作業は、いまある情報と思い出せる記憶を切り貼りしてつなげたものになる、ということ。どこまでいっても。

 


それがストーリー(物語)構築のプロセスですし、もし今までに知らない情報が追加されれば、今までの情報に追加情報を取り込んで新たな人生ストーリーの再構築が起こるかもしれない。オルタナティブストーリーの構築ってやつです。

 


その中で、トラウマを想起するトリガーとなる話題を扱うのか、避けるのか。これはLSWに限らず、通常の面接でセンスのある人は相手の反応を見ながら何気なくやっていることかなと。

 


相手の反応を見て、際どいけどOKラインの質問をできる人もいれば、相手の気持ちや反応を気にせずに地雷を踏みまくっている場合もあると思います。

 


日常の人間関係の中でも、この人にこの話題はタブーだよ、みたいなことってありますよね。このことになるとスイッチ入っちゃって止められないというか面倒くさくなるみたいなやつです。

 


だいたい触れたくない話題になると、人は、「忘れた」「覚えてない」とか言ってみたり、口数が少なくなったり、ちょっと防衛するような仕草、目が泳いだり腕を組んだり、色々反応があるわけです。

 


そんな程度なら良いですが、地雷の中心を踏んでしまえば、穏やかに話していたのに急変して怒り出すことはめずらしくありません。(触れられたくない領域に侵入されて防衛スイッチが入り、別の人格パーツになっている場合もあると思います)

 


その相手のサインを、支援者がちゃんとキャッチして、どこまで踏み込むのか、留まるのか、話題を変えるのかコントロールしてあげる必要があります。

 


対話の中での、安全性の確保です。

 

 

 

 


LSWを検討する際、

 


「親から虐待されて、施設で暮らしていることを知ったら、こどもが不安定になりませんか?」

 


という質問はよくあります。僕の答えは、「そのお子さんは、どのように受け止めると思いますか?」です。

 


例えば、乳児期から里親宅で暮らし実親の存在を知らないこどもと、物心ついた時から施設で暮らし幼稚園の友達は父母がいる家に帰るのに自分は施設に帰っていくこどもとでは、その情報の意味やインパクトは全然違いますよね。前者と後者では、もともと抱えている疑問や準備性が全然違いますから。

 


また、虐待と言っても千差万別ですよね。どのような事が、どの程度どの頻度で起こっていて、その子にとって身体的精神的ダメージがどれ程残るものだったのか、そして現在の生活の中でどの程度癒されているのか。

 


そして、どのような情報をどこまで扱うのか。先程、借金の具合をどの程度こどもに知らせる必要があるのかと例を出しましたが、例えば「なぜ自分は施設で暮らしているのか?」という幼稚園児の疑問に対して、「あなたは養父から○年○月○日に、風呂場で○○されて、○○の箇所に全治○週間の怪我を負い」までの詳細な情報は要らないですよね。

 


こどものニーズは何なのか?

 


言い換えると、抱えているモヤモヤに対して何があれば、こどもの心や頭の中の霧が完全とまでは言わずとも少しは晴れて、次のステージに意識を向けることができるのか。

 


上の施設のこどもの例は、実親との別れについての疑問、それは喪失体験の消化、もっと言えば、曖昧な喪失についての未完結な感情を整理する過程の一部、ということになります。(曖昧な喪失の詳細は、第20〜30回コラム参照ください)

 


トラウマ体験の全てを直面化せず、喪失体験を扱うということですね。

 


例えば、親の病気による死別など、被虐待経験がなく単純養護と言われる児童のケースにおけるLSWに近い形です。

 

 

 

では、被虐待のトラウマを抱えた児童に対してトラウマ体験を直接扱わずに、喪失体験にフォーカスしたLSWで過去情報を補えば、過去と現在がつながって、「過去ー現在ー未来」の時間的な連続性が持てる、未来つまり自分の将来を肯定的に考えられるようになるか、と言えば必ずしもそうでもないんです。

 

 

 

じゃあ何で先程のような、トラウマ体験をやんわり扱って喪失体験にフォーカスしたLSWの話しをしたか、と思いますよね。

 

 

 

そのあたりは、また説明が長くなりそうなので、一回ここで切ります。

 

 

 

今回のまとめとしては、

・過去を振り返ると言っても、全ての情報を扱わなければないらないわけではない。

・LSWが検討される社会的養護児童の多くの疑問は親との分離や転居と言った喪失体験。

トラウマ治療ならトラウマにフォーカスするが、生い立ちの疑問なら喪失体験にフォーカスしたアプローチになる。目的に応じて、扱う情報の範囲と深度を調整する。本人の意思と反応を想定して尊重しながら。

・対話の安全性の確保が第一。本人の意思がない侵入的な話は再トラウマ体験となる可能性がある。

 

 

 

と言った感じでしょうか。

 

 

 

続きは、また今度に。

 

 

 

ではでは。

【第124回】(まえがき)トラウマを抱えた児童へのLSW

お久しぶりです。管理人です。

 


しばらく更新が止まっていましたが、この間、 コロナで勉強会を中止したり、 研修依頼が立て込んで準備に追われていたり色々バタついておりま した。

 


気がついたら「トラウマと身体」の記事も注目記事TOP5にラン クインされていまして、最近もblogを読んでくださっている方 がいるんだなと、ありがたい限りです。

 


ようやく最近少し落ち着いてきまして、 本の続きを読めてきましたので、いい加減、 続きを書かなきゃかなと、思い至りました。

 

f:id:lswshizuoka:20220929082352j:image

 


約5か月ぶりの更新なので軽く振り返りを。

このblogは、LSWに関わるだろう周辺のトピックについて、 書籍等を一部引用しながら、あれやこれやLSWについて考えるも のです。

 


この本は「第I部:理論」「第II部:治療」 に分かれていまして、これまでは前半「理論」 についての内容を扱ってました。

 


後半「治療」部分についても、 その形を継続することもできるのですが、 正直少し面倒くさくなってきたのと、 研修準備で他文献も並行して読む中で、 この本以外の内容も僕の中で繋がってきてしまったので、 ちょっと今回はフリーランスに現在僕の中で整理している過程を綴 ってみます。

 

【テーマ】

何についての整理かというと、『トラウマを抱えた児童へのLSW 』について。

 


約10年以上前に日本でLSWが広まり始めた当初から「LSWで 子どもが荒れるのではないか?」「 辛い過去を振り返る必要があるのか?」という問いは、 ずっとありまして。

 


関係者皆さんの地道な広報・研修活動のおかげで、現在では随分「 子どもの知る権利」が浸透し、施設や里親さんからLSW実施に反 対する声は少なくなったと思います。

 


LSWの方法論についても、 書籍や研修会によって随分と共有されるようになりましたし、 記憶という共通項から一部のトラウマアプローチ(NETやTF- CBT等)とLSWの関連が扱われることもありました。

 


ただ、僕が児童福祉現場に入ってからずっと感じていた疑問は、 そもそも被虐待児が大多数を占める日本の社会的養護児童のケアに おいて、 支援現場に共通理解や知識がほとんどないのかトラウマの話題にあがらないこと。

 

今思えば、児童福祉施設の現場ケアワーカーさんの多くが、 保育士課程や社会福祉士課程出身者であれば、 トラウマの知識がないのは当然と言えば当然ですが…当時の僕はそ んな事情や背景もよくわかっていませんでした。

 


LSWの「なぜ子どもが荒れるのか?」という問いも、 トラウマ体験のフラッシュバックで説明できる事例も随分ある気が していましたが、 当時の僕は他者に説明できるほど整理できていませんでしたし、 たぶん他の方もトラウマの事を知らなかったんじゃないかなと想像 します。

 


今でこそ、トラウマインフォームドケア( トラウマを前提としたケア) が広く言われるようになってますので、 トラウマの共通理解は以前より広がっていると思いますが、 それでもLSWとトラウマが一緒に語られることは少ないので…

 


というのが、本編までのくだりです。

(相変わらず前段が長くてスミマセン…)

 


つまり、一言でいうと「この本は、 そんな疑問をかなりクリアに説明してくれる内容だった」 ということなんです。

 

じゃあ、詳しくはこの本読んで下さいってことになるんですが、 以前のblogに書きましたが電話帳の様な厚さで、 内容もそれなりなんで、 ちょっと全部読めなんて気軽に勧められないというのが本音。

 


なので、 美味しそうなところを食べやすい形でつまみ食い程度に紹介して、 僕の食レポ+感想を書く的な感じがこのblogのイメージ。 気になる人は、是非お店でちゃんと食べてみてください的な。

 

 

 

 


と書きながら、このまま本編に突入するのは、 かなり危険な気がしてきました。

 


沼にハマりそう気がするといいますか、 ちゃんと一つ一つ丁寧に説明し出したら話し言葉で1時間2時間か かるのではと思ってきたので、ここで一回切ります。

 

 

予め自制を効かせるあたりは、僕がちょっと成長したところかもしれません。以前の僕なら、このままダラダラ続けてそうです(苦笑)

 

 

内容がなくてスミマセンが、5か月ぶりの更新なのでリハビリだと思ってお許しください。

 

続きは、また更新します。

 

 

ではでは。

 

【第123回】AI子育て支援の未来予想図

メンバーの皆さま


こんにちは。管理人です。


先週、2019年12月ぶりに、静岡LSW勉強会開催しました。 (わたし、勉強会の管理人。サイト管理はあくまでサブです)


二年半ぶりでしたが、やっぱり直接のやりとり、 対話の中での学びは、思考と理解が深まります。 自己満じゃなくて、初参加の方にもそんな感想をいただいて、 本当に良かったです。


そんなタイミングでスマホが壊れてしまって連絡取れなくなった方 、本当にすみません。しかし、 何故に二年半ぶりの勉強会前日にスマホ壊れますかね(苦笑)。


神様は試練をお与えになると言うか、 いかに自分がスマホに依存しているか思い知らされた久々の勉強会 でした。


しかも、docomoのahamo契約なので、 オンラインで新しい故障対応や新機種注文しようとすると、「 wifiを切ってログインしてください」って…

 

それが出来るなら買い替え検討しないし!

 


もちろん、電源入れ直したり、SIMカード入れ直したり、 初期化したり、 ありとあらゆる自己の事故対応の手立ては講じておりますよ。 それでもダメなのです。

 

てな感じで、完全にデジタル化の落し穴に迷い込んでます(汗)

 

 

 

 


前回コラムではGW前半に妄想した、EBPM( エビデンスに基づく政策立案と実行)的な養育情報がデジタル化、 ビッグデータ化された未来について綴りました。


今回コラムはGW後半の妄想です。
それは、パパママが身近に受ける「子育て支援」 のAI化について。[現状把握]と[未来妄想]をしてみます。

 

 


まず現状把握について。


■①赤ちゃんの泣く理由がわかるアプリ
【参考】
いくじてん「パパッと育児の泣き声診断で起こっている⁉︎ アプリの口コミや使い方」
https://194ten.com/app-baby/

 

 

赤ちゃんって泣きますね。当たり前体操ですね。


もちろん0歳1歳だと、 泣いてる理由を言葉で表すことはできないので、 親は何で赤ちゃんが泣いてるのか、 その様子から想像して汲み取って対応しますね。


普段接してるママはですね、 泣き方や雰囲気のなんとなく差異を察知して職人芸的にオッパイと か眠たいとか判別してるわけですが、 パパがたまに子育てを手伝っても何で泣いてる理由なんか全然わか んない訳です。


なので、赤ちゃん泣き出すと大の大人がオロオロして、 すぐママに助けを求める、 でママに役立たずの烙印押されるみたいな(苦笑)、 これ少子化で子育て不慣れな現代パパ育児あるあるではないでしょ うか。


こんな時にお役立ち、 赤ちゃんの泣いている理由を教えてくれるアプリが、 2018年に出てるんですね。

 


その名も『パパッと育児』。

 


赤ちゃんの泣き声をビッグデータ化して、AIが判別。


「お腹がすいた」「眠い」「不快」「怒っている」
「遊んで欲しい」


の5択について、「お腹がすいた78%、眠い22%」 みたいな感じで教えてくれると。 その的中率はなんと約8割となかなかのもの。

 


子育ての見える化を目指したアプリで、泣き声診断じゃなくて、 睡眠リズムをデータ化して寝かしつけのタイミングを教えてくれた りして、男性の育児参加を促す目的もある。


なので、「パパと育児」→『パパッと育児』だと。

 


なんとなく、これに頼るパパは、 目の前の泣いている赤ちゃんを放置して、 まずスマホ探してアプリ起動させるのを優先させるみたいな、 本末転倒な状態も予想できます。


そこは同時処理マルチタスクでがんばれみたいな、 片方で赤ちゃん抱きながら、 もう片方でスマホ持つという感じの注意書きがきっと必要ですね。

 

 


ちなみに僕の息子が2017年生まれでですね、 身長体重とか別のアプリで記録してたんですよ。


もし息子が翌年2018年に生まれていたら、 このアプリにたどり着いていたのかな〜。そうだとしたら、 子育てどうなっていたかな、なんて色々想像しました。


コレ、 アメリカのような乳児を大人と別の部屋で寝かせておく国から高い 関心があるみたいですよ。赤ちゃんが泣いた事にすぐ気づけるし、 その理由もすぐにわかるから。


動物の鳴き声解析も随分進んでいると聞いたことがありますが、 外国語通話アプリが一般普及してきたように、 今後は泣き声通訳アプリも普及してくるのかもしれませんね。

 

 


■②ひとの技術とモチベーションを上げるAI
■③盲導犬+相手の表情を読み取るAI


次は一つの記事からまとめて二つ紹介


FUTURE IS NOW オムロン株式会社に聞いた、 新しいテクノロジーとのニューノーマルな暮らし。
後篇:卓球ロボットとAIスーツケースが提案する、 人間と機械が融和する未来。
https://fin.miraiteiban.jp/ omron02/

 


二つ目は卓球ロボット。その名は「フォルフェウス」。
(名前の由来は記事を参照ください。ギリシャ語です)


卓球ロボットといっても、 ただ問答無用に球を弾き返すんじゃあないんですよ。


なんとプレイヤーの腕前を判断して、 表情と脈拍などから感情推移を読み取り、 プレイヤーにとって心地の良いラリーを続けて、 卓球技術を向上させてくれるんだそう。


しかも、この「プレイヤーのモチベーションを高めるAI」は、 あのゲーム会社『スクエアエニクス』との共同開発。


RPGロールプレイングゲーム)で一番の醍醐味である「 レベル上げ」の、 強すぎず弱すぎずの敵の強さの段階とレベル上げに必要な戦闘数の 、 ヤル気を失わせない飽きと根気の絶妙なバランスが応用されてるん ですよね、きっと。

 


実際にこんな専属コーチいたら、メキメキ上達しそう。

 


今のところの弱点は、大きすぎる壁のような外見だそうで、 ちょっと心の距離がいなめないと。


ゲゲゲの鬼太郎の「ぬりかべ」 みたいなデザインにしたらし少しは親しみが出るのか、 かえって不気味か。


まぁ、TVや携帯電話がそうであったように、 サイズ問題はいずれ解消されますよね。

 

 


最後の三つ目は、「AIスーツケース」。


これはですね、視覚障害の人がこのスーツケースを背負うことで、 目的地までのナビしてもらいながら。 すれ違う人の感情も教えてくれるという優れもの。


黄色い点字みたいな道は随分普及してきたとは言え、 視覚障害の方は曲がり角から何歩の位置か実際に数えながら自分の 位置を把握しているんですって。


なので、突如話しかけられると現在位置を見失ってしまうので、 知り合いに出会っても気軽に話しかけられなかったと。 そんなコミュニケーションの不具合を解決してくれるということで す。


素晴らしい発明ですよね。車で例えるなら、カーナビ+ 道路標識の自動認識システムみたいな感じでしょうか。


このシステムを使えば、高齢者で視覚や聴覚が衰えても、 行動範囲を制限することなく今まで通り自由に暮らすことができる ようになるだろう、とのこと。


現在のメガネや補聴器の超進化版ですかね。


そして、このAIスーツケースと、 技術の進歩によぅえサイズはどんどん縮小化していくことが想像で きます。

 


以上をまとめると、「泣き声判断」「スキルアップコーチ」「 表情読み取り」の3つは、 すでにAIによるサポートが実現しているということです。

 

 


ここからは、僕の未来予想(妄想)です。


この3要素が現段階でクリアされているなら、将来的には親子相互 交流療法(PCIT:Parent-Child Interaction Therapy)のAI化が可能なんじゃないと、 単純に思ってしまいます。


親子相互交流療法とは、プレイルームで遊んでいる親子に対して、 外にいるセラピストが親にインカムでリアルタイムで助言したり褒 めたり励まして親子関係改善を図る心理療法です。


特に、こどもに発達障害があると、 注意散漫だったり意思疎通が上手くいかなかったりで親が自信喪失 しやすいので、 関わり方のコツをその場でアドバイスできるのが良いところ。


おまけに、 児童福祉ケースは子どもだけではなく親自身が発達障害だったり不 安定愛着だったりすることが多々あります。


なので、具体的関わり方のアドバイスの前に、 親側のモチベーションや感情に合わせた内容とタイミングで投げか けたり、それ以前に親の気持ちを整理したり、 落ち着かせたりする対応の必要がよくよくあります。

 


上記の3点を進化させると、例えば「 ペアトレ眼鏡」的なものが出来て、 子どもがどんな感情なのかAIが教えてくれて、 どの辺りに視点を合わせながら(もちろん視覚的な提示)、 どのように子どもの注意を引いて、 どんな表情と声量と言葉遣いで何を伝えたらいいのか、 養育者の状態に合わせてアドバイスをくれて。


それで、養育者が親として成長を促すみたいな、 優しくアドバイスくれるお婆ちゃん的役割をAIが果たしてくれる なんてこと、出来そうじゃないですか。


また技術進化により眼鏡すらかける必要は無くなるでしょうし、A pple Watchみたく養育者の脳波や脈拍等バイオデータもリアルタイ ム把握しているので、養育者が興奮してきたら落ち着く行動を取る ように指示するとか、脳部位の活性化を判別してADHD系やAS D系に合わせたアドバイス、視線をどっちに向けて、 呼吸をどうして、意識を何に集中して等々、 活動不足な脳部位をストレッチするようにほぐして徐々に扱えるよ うにしていくみたいなことだって、可能になるんじゃないかと思い ます。

 

もっといくと「こころのエアコン」的な、 不安感高まってきたからセロトニン補給とか、 モチベーション下がってきたのでドーパミン投入みたいな、 AIが脳内ホルモンを自動調整なんてこともありえますよね。すで に、 鬱病患者に対してADがこんな感じのことを行い不安感が低下した という研究もあるみたいですし。


子ども臨床で「イライラの温度計」という気持ちを0〜 10に数値化して、身体的、 感情的変化への気づきを促すという手法って割と使われますが、 これをAIが脳波レベルで行ってくれる感じですかね。


さらに、今の技術で、ドローンが脳波信号を察知して、 念じるだけで動いてくれるやつ、 コントローラー必要なしってやつありますよね。


そうなってくると「オートマチック/マニュアル」の境目は、 手動するしないから、AI判断か人間判断か、 勝手に自動調整してくれるか人間が考えて念じるか、 という風に変化していくのも、 そう遠くない未来のような気がします。

 

 

 


ここまで来ると、もはや人間が人間なのか、AI に取って代わられるんじゃないか、 みたいに不安に思う人もいると思います。

 


そうじゃないですよ、と未来予想図を描いているのが、 2つ目の記事で紹介したOMRON(オムロン)株式会社です。


〉「テクノロジーによって人は成長しますが、成長した人がテクノ ロジーを失ったら、むしろ人の能力がマイナスになってしまいます 。例えば、車に乗って遠出をすることができますが、 車があることで、運動不足になってしまう。5年先の未来は、その 問題点を解消して、機械によって人が成長したり健康になったりす る世界を実現したいと思っています。また、 制御技術やセンシング技術が、高齢者が使う杖や車椅子など、 身近なものに実装されて、より健康で豊かな人生を送ることができ る。そんな商品を開発したいと思っていますね」。(古賀氏)

 


と言うように、OMRONは、 機械が人間機能の代替をする時代から、 機械と人間が協働する時代、 そして機械が人間と融和して人間を成長させる時代が来ると、 いうことをなんと1970年に「SINIC理論」 として発表して研究開発を続けている会社です。

 

今から50年前に、 2020年のAIやスマホが普及している社会を予測し、 さらに2030年、 2040年以降の社会と機械のあり方を予想しています。

 


先見の明がありすぎて、ヤバイというかもはやちょっと怖さや不気 味さすら感じます。 今後もSINIC理論の未来予想図は実現しそうですし、 実現のためにOMRONは研究開発を続けるんでしょうね。


SINIC理論に興味を持った方は、OMRON紹介記事の「 前篇」やOMRON株式会社HP、 youtubeの解説動画を参照ください。

 


なかなか面白いです。

 

 


空想妄想はここまで。

 

 


まぁ現実にも、マイナンバーに付随する個人情報がマイナポータルに集約されたことで、例えば、コンビニで住民票が取れたり、身体・精神障害者割引がスマホ決済に自動的に反映できたりと、民間サービスと行政サービスがデジタル化でリンクしつつありますよね。

 

児童手当とか、そういう手当関係の書類もマイナンバー連携してによって、どんどんペーパーレス化する時代が、もうすぐそこにあります。


こんなことをDX(Digital Transformation:デジタル・トランスフォーメーション)「デジタル技術による変革」と言うみたいで、夢が膨らむ一方、AIとかDXとか何の略だかよく分からなくなってきます。


そして、手元のスマホが壊れたことで全ての生活に支障をきたし右往左往している自分がいたものも現実。


ようやく新スマホにありつけコラム更新に至っているわけですが、妄想的にデジタル化の光の部分を考え、現実的にデジタル化の影の部分を体験した、そんなGWからの現在までの時間でした。


たぶん、おそらく、いつまでも人間と機械のハイブリット時代が続くのではないか、時代によって形は変われどもお互いにうまく共生できる未来になるといいな、とそんな風に思います。


それって、児童福祉における「親子関係」と似てるかもなぁ、なんて思ったりもしますね。

 


長くなりました。

 

 


ではでは。

 

 

 

 

【第122回】妄想EBPM的養育支援システム

メンバーの皆さま
 
こんにちは。管理人です。
 
 
GWいかがお過ごしでしょうか。
 
僕は12時間のドライブを経て、気仙沼にいます。
子どもを連れて妻の実家へ帰省ですね。
 
普段会えない[じいじばあば+ネコ]に息子は大興奮。
 
核家族の身にとっては、子どもの面倒を見てもらえるだけでもプライスレスなのですが、震災にあった気仙沼の復興を肌で感じられるという意味でもプライスレス。
 
 
 
僕にとっての気仙沼は、日常を忘れながらリラックスできる、貴重な非日常の世界。
 
 
今回コラムは、そんな非日常世界で、ダラダラしながら「日本の養育支援システム」について妄想的に物思いにふけたことをつらつら綴ったものです。
 
LSWとは直接関係ないかも知れませんが、LSWが必要な社会的養護に来る前に出来ること、としてお付き合いください。(いつもながら、こじつけ感がありますね)
 
 
気仙沼の話しに戻ります。
 
昨日、息子が生まれた病院脇を通ったんです。息子が生まれたのは5年前。
 
実は気仙沼病院は老朽化と耐震で、4年前に別の場所に建て替え済み。あと1年出産がズレていれば新築ピカピカな病院での誕生だったわけですが、言い換えれば、気仙沼病院のラストイヤーチルドレンと言えるでしょうか(なんじゃそれ)。
 
で、そんな廃病院である旧気仙沼病院が、いまも取り壊されず残っている。そして、病院周辺のお店、薬局、スーパー、ケーキ屋さん等々が軒並み閉店してたんですよね。
 
当たり前ですが、患者とその家族で売り上げが成り立っていたんでしょうね。お店も移転しただけかもしれまけんが、自分も僅かながらお世話になっただけに寂しさや虚しさを感じられずにはいられませんでした
 
気仙沼は、絵に描いたような人口減少と過疎化が進んでいる地域です。
 
ただ震災があったからこそ、それまで降りなかった国からの補助金が降り、新しい高速道路や橋ができて利便性が増し、観光地のために新しいお店やオシャレスポットが生まれているという皮肉的な現実。
 
限られた国家予算をどこに当てるのか、世間を納得させる「大義名分」がないと、人口が少ないマイナー地域に予算を割り振ることがいかに難しいことなのか、そんなことを以下の記事を見ながら連想したのでした。
 
 
本題はここから。
 
表題「EBPM」って何だ?と思った方も多いと思いますが、出かける前に読んでいたのがコレ。
business leaders square wisdom
 
 
EBPM:Evidence-Based Policy Making
・統計データや各種指標など、客観的エビデンス(根拠や証拠)を基にして、政策の決定や実行を効果的・効率的に行うこと
 
だそう。
 
これまでは政策立案で民意を反映しようとしても、政治家に近い「大きな声」や政治家に「理解しやすい声」を中心に影響が強くなりがちだった、と。
 
よく分かりますね。大きな声では言えないですが、僕もそんなに選挙に行ってないですし(苦笑)
 
最近「日本女性の二人に一人は50歳以上」というニュースを耳にしましたが、日本の総人口も、選挙に行く年齢層も、高齢者に比べて圧倒的に若者は少ないですよね。子どもは選挙権ないですし。
 
なので、子育て支援、養育支援の必要性は誰に聞いても「必要ない」と決して否定されるものではないものの、政策に目に見える民意、耳に聞こえる民意を反映すると、どうしても子育て支援は積極的一番手にはなりにくい。現役の、特に乳幼児期の子育て世代、もしくはその予備軍(若者)は全人口の少数派だから。
 
しかし、これまではこのような少数派の人たちの民意を汲み取るためのシステム構築の予算・スピード・人材の確保が難しかったが、ICT(information and Communication Technology:通信技術を活用したコミュニケーションの普及に伴い、それが解決しつつあると。
 
ビッグデータという言葉は一度は耳にしたことがあると思いますが、ウェブ上の大量データを集めて、人工知能(AI)を使って膨大なビッグデータを整理・分析・解析することは今や実現可能に。
 
すると、今まで一見すると分からなかった市民の意向や傾向を、データ的根拠(エビデンス)として捉えることが可能となって、そのエビデンスに基づいて政策を立案・実行することができる。
 
それをEBPM(Evidence-Based Policy Making)と呼ぶんだそうです。
 
 
ほー、なるほど。
 
イービーピーエムって、イレブンピーエムと語呂が似てるな。ん、イレブンピーエムってなんだっけ?
 
と思って、検索したら「11PMっていう1965年から1990年まで続いていた大橋巨泉のTV番組が出てきました。
 
いや、全く知らんし、こんな番組。1982年生まれの僕が観てた可能性ゼロではないけど、番組終了時で7歳8歳ですから、さすがに観てないでしょ。
 
じゃあ、頭に残ってた「イレブンピーエム」って何だとは思いつつ、結局わからないので、EBPMの話しに戻ります。
 
 
そう、EBPM。
 
これは決してSF的な未来の夢物語なんかじゃなく、今の現代社で現実化しているらしいですね。
 
例えば、ニューヨーク市貧困層の就労者数を増やす政策にEBPMが使用されていたり、
 
なんと日本でも、広島県呉市がEBPMが使って薬剤費削減や糖尿病の重症者数減少に成功している例があるもよう。(※紹介記事参照)
 
 
マジっすか⁈  日本でも実施例があるですね。
 
 
じゃあ、結構身近なこととして、EBPM的な近未来の児童福祉について妄想してみます。
 
 
子ども関連の現在地で言うと、2020年の学習指導要領改定と新型コロナの影響も相まって、小学校でひとり一台のタブレット支給が凄い速度で進みましたよね
 
今のタブレット活用法は、
・調べ学習でネット検索
・体育でICT活用(走り高跳びのフォームを動画で確認する授業が、僕の地域で実際ありました)
・学級閉鎖時のリモート授業
・宿題のタブレット配信
みたいな感じかなと思います。
 
これだけでも、2〜3年前の新型コロナ蔓延前は、想像できなかったので(計画は着々と進んでいたはずですが)、短期間に時代が随分進んだものだなと、個人的には驚きを隠せません。
 
 
では、さらに、この先はどうなるでしょうか。
 
 
インターネット注文って、ごくごく一般的な購買方法になりましたが、ネット上で勝手に関連商品の広告が出てくることって、ありません?
 
ネットニュースの関連記事もそうですね。YahooとかGoogleとかも、自分の好きな分野のニュースばかり集めてきますよね。
 
これって、過去の検索履歴から人工知能(AI)がその人が興味ありそうなものを推測して提案しているんですね。
 
で、これと同じことが、教育分野で近い将来起きてくる可能性があると。
 
 
普及し始めた個人持ちのPCやタブレットは、ネットの使い方に慣れることが最終目的ではなく、最終到達地点はICT端末の使い方、質問とか回答とかが膨大なビッグデータとして収集され、活用されること。
 
 
そして、蓄積された個人データ(何に質問したとか何に間違いやすいかの傾向)から、人工知能AI)がその人の躓きやすいところを予測したり、オススメ学習方法を提案することって、現時点の民間企業の技術力なら、すでに可能なようです。
 
例えば、zozotownが、過去の注文履歴から、その人の好みに合いそうなファッションやコーディネートについて、その年のトレンドを踏まえてオススメしてくるみたいな。
 
ただ過去の類似商品をオススメするんじゃなくて(それじゃあ服は売れません)、何十万人何百万人の購買履歴のビッグデータを解析してディープラーニング(自主的な深層学習)し進化し続けるオシャレ番長AIが、その時々の最適解を提案してくれるわけです。
 
 
で、ここからは完全に僕の妄想です。
 
 
日本では当たり前の養育支援である、母子手帳・赤ちゃん訪問・10か月健診・1歳半健診・3歳児健診・予防接種フォローは、日本が世界に誇れる「養育支援システム」として有名です。
(こんなキメ細かい支援、他国じゃ、実現不可能だそうですよ)
 
もし、このデータをIT化できたとしたら。母子手帳や定期健診の結果が、ビッグデータ化できたとしたら。どんな未来がやってきそうですか。
 
以前コラムで「感情の円環モデル」を活用して、アンドロイドが人間の気持ち(←脈拍と脳波の状態確認)に合わせた対応が可能になりつつあることを紹介しました。
 
この技術がもっと一般化して、ビッグデータに基づくAIが解析が進めば、
 
[養育不安感・困難感 × リアルタイムの気持ち]
 
の両方を考慮して、AIが対応方法や支援サービスの提案をしてくれる時代も全くないとは言えませんよね。
 
さらに言えば、保健師さんが母親の産前に確認している情報、俗に言う「ハイリスク妊婦」情報だってビッグデータ化が可能です。
 
若年出産とか、精神疾患、知的障害、発達障害の情報もそう。
 
もっと言えば、アメリカでは「ビッグ・ファイブ理論」を性格特性に関する数百万人レベルの大規模調査が行われていたりトランプ元大統領が選挙戦の時にビッグファイブ理論を使った分析により州ごとにメッセージの伝え方を変えていた(行動マイクロマーケティング)ことも公表されています。
 
ビッグファイブ理論とは、人間の性格は5つの特性(外向性、神経症傾向、経験への開放性、調和性、誠実性)の組み合わせによって説明できるという理論。五角形のグラフで、どこが強い弱いといった組み合わせです。
 
それぞれ、
 
○外向性(⇔内向性)
対人関係の量と強さ。活動水準、刺激希求、喜びの能力。外向性が高い人は社交的で、活動性や積極性が高く、高覚醒状態(テンション高め)を好む。外向性が低い(=内向性が高い)人は、控えめで過剰な刺激を避け、物静かで注意深く、一人でいる低覚醒状態を好む。
 
神経症傾向
環境からの刺激やストレスを引き起こす刺激に対する敏感さ、不安や緊張の強さ。不安のほか、抑うつ、敵意、衝動性、自意識(劣等感)、傷つきやすさ等で構成される。神経症傾向が低い人は、リラックスしていて、安定感があり(感情的でない)、ストレス耐性が高い。
 
○経験への開放性
知的好奇心の強さ、想像力、独創性、馴染まないものに耐えられる力。開放性が高い人は、自分の感情に価値を置き、心が広く寛容さがある(ルーズでもある)。開放性が低い人は、興味の幅が狭く保守的で、伝統や決まったやり方に従うことを好む。
 
○調和性
共感性、優しさ。思考ー感情ー行動における対人関係の質問。調和性が高いと、他者への信頼感があり、人のために尽くしたり(利他性)、人を許したり、謙虚さや無邪気さを持っている。調和性が低い人は、疑い深く皮肉的、攻撃的で競争を好み、自己中心的で孤独を好む。
 
○誠実性
目標志向行動における気構えと持久力。自己統制力や達成への意志、真面目さ、責任感の強さ。慎重で塾考型。倫理的にしっかりしている。誠実性の低い人は、いい加減で怠け者、あわてもので意思が弱く、快楽的な行動を好む。
 
 
とのことで、これらはどれが高いことが良い悪いではなくて、人間の性格は大きくこの5つの要素の組み合わせで説明できる、という理論です。
 
そして例えば、アメリカで「社会的弱者」にグルーピングされる多くの人は「神経症傾向」が強く、その人たちには恐怖を喚起する広告が大きな効果を発揮したそう。
 
まあ、おそらく不安定型愛着やトラウマを抱えている人が多かったのではないかと僕は推測しますが。
 
この辺りもビッグデータ化されれば、
 
[親の性格特性 × 親の器質的特性  × 実際の養育不安感・困難感 × リアルタイムな親の気持ち…]
 
と言った、あらゆる要因をデータ化してAIが解析して対応してくれる…となったら?
 
親自身の愛着パターン(回避系、過干渉系)によって、子どもへの適度な関わり方や距離感のアドバイスができたり、性格的に家族や親族サポートを頼れそうかとか、外部の養育支援をどれくらい積極的に活用しそうかとか、そのあたりだって解析可能になりそうですよね。
 
いま、人間がアナログでやっている「見立て」ですから。
 
もっと言えば、現在は面接や質問紙によって確認していることも、将来的にはウェブ回答によるデータ化が可能ですし、現在の脳科学精神障害発達障害の脳の不活性部位がわかりつつありますから近未来的には脳波測定さえできれば特性理解にウェブ回答すら必要なくなることだってありえます。
 
 
さすがに、国民全員の知的能力まで測るのは倫理的にアウトな感じがしますが、生育歴や学歴でその辺もマイルドに配慮されて、みたいな。
 
なんか凄いことが起きそうな気がする反面、怖い気もしますね。
 
 
どんなにテクノロジーが進化しても、この仕事はなくならないだろうと思われていた「対人援助」においても、AIが人間を凌駕する「シンギュラリティ」が起きた未来というか。
 
ただ思うに、マイナンバーカードの普及ですらこれだけ揉めるわけですから、「こんな個人情報がデータ化されるなら、行政には相談したくない」と関わりを拒否したり、澄まし顔で虚偽回答をする母親もきっと出てくるでしょう。
 
時代はどんどん変わるので、どんな支援システムを構築しようと、そこに上手く乗れない人、こぼれ落ちる人は、いつの時代も一定数いると思われます。
 
そんな世間的の外れ値への支援を、児童相談所は、昔も今もこれからも求められていくんじゃないかなと思います(それすらAIのディープラーニングが上回ったら、それは完全なるシンギュラリティ、人間の凌駕ですね)。
 
 
このように、EBPMは民間技術的には可能ですが、行政的には壁が高すぎて22世紀でも実現不可能ですと、わかりやすくぶった斬ってくれるのが、最近TVに出まくっているイェール大学の成田悠輔教授。
【参考】成田悠輔の半熟仮想切り抜き
 
内容も面白いし、話術も非常に参考になります。
 
あと声質がズルイ。これは1つの才能ですね。
 
 
で、冒頭の気仙沼の話しでも触れましたが、こんな養育支援のデジタル化、ビッグデータ化なんて、今の日本社会で予算がつくとは到底思えないんですね、残念ながら。
 
成田氏が、講演の最後に、
「22世紀型EBPMは忘れた方がいい」
クリスマスでサンタさんに壁を壊してくれる巨人をお願いしたい」
と最後の最後にユーモア的にボヤくほど、行政の様々な壁は本当に強固で頑固だから。
 
 
 
ただ、僕の働く地域は「デジタルスマートシティ宣言」していて、日本や世界にモデル発信とか言ってるので、ワンチャンないかな、というのが僕の更なる妄想。
 
デジタル化とビッグデータ化を考えたら、例外的な外れ値の集合体である"虐待初期対応"より、子育ての平均値を集められる"養育支援"の方が絶対相性はいいはず。
 
さらに、虐待に至る前の養育支援である虐待予防をガンガンした方が、虐待ケースの減少と経済的・医療的・支援的コスト削減になることは算出しなくたって明白。
 
ロジック的にはそうなんですけど、やっぱり行政の壁はかなり厚そうなんですよね〜。
 
とはいえ、小泉純一郎元首相やトランプ元大統領みたいなリーダーが「○○ぶっ壊す」とか言ってボコボコに壁を壊して、中にいる人が必死で抵抗して、内部対立が生まれて、みんなボロボロになって。
 
果たして、そんな"進撃の巨人"の出現が望む未来なのかと言われたら、正直わからないです。
 
 
何の話かよくわからなくなってきましたが、唯一わかったことは、「リラックスした非日常はとても創造的で妄想的になれる」ということです。
 
コラム執筆中は、子育て完全放棄でしたし(苦笑)
 
こんなことはしばらくないと思うので、GWの間もう少し非日常の妄想を楽しもうと思います。
 
最後までお付き合いありがとうございました。
 
GW空けて、日常生活に戻ったら、ボチボチ本の紹介の続きも書いていきます。
 
ではでは。
 

【第121回】「無秩序ー無方向型」愛着と自己調整

今回は前回の続き。




前回コラムでは、不安定な愛着パターンうち、
①不安定ー回避型
②不安定ーアンビバレント
を扱いましたので、今回は残っているあとひとつ、

③「無秩序ー無方向型」愛着パターン

について、

【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴
【成人後】対人パターンと自己調整の特徴
【調整】神経系からみた調整方法の特徴

のカテゴリーで、『トラウマと身体』の第3章をレビューしながら、まとめていきます。


前回も言いましたが今回の「無秩序ー無方向型」は①ネグレクト養育型、②気まぐれ過干渉養育型の「MIX型」なので、説明も対応も大変です(汗)


では、さっそく本文を見ていきましょう。


■③無秩序ー無方向型   
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴

〉この子どもの養育者たちは、虐待的であったり、ネグレクトをしたり、あるいはその双方だったりします。

〉この養育者の愛着は弱いので、子どもに対する虐待者がいてもほとんど防衛を与えるとことができない

〉この養育者は、近づきにくく、自分の子どもの情緒やストレスの表現に対して不適切に、または否定的に(あるいはその両方)反応してしまい…

〉この調律の合っていない養育者は、関係性の障害にほとんど、あるいはまったく気づこうとしないので、子どもは、過覚醒あるいは低覚醒の領域に長期間おかれてしまいます

〉相互作用的な修復を与えないので、子どもの極度な否定的情動状態は長期にわたって続くことになる


う〜ん、もしかすると、子どもの求めていることに対して、意図せずいつも裏を取っちゃってる母親って感じですかね。

裏取るって言うのは、スポーツの駆け引き的な。例えばサッカーのドリブラーが、独特のリズムでDFが動きを予想しにくい感じ。脚が超絶速い訳じゃないけど、常にDFの重心の逆をついてくるので全然守りきれないメッシみたいな。

あ、ちなみに、日本代表の久保建英は小1ですでに相手の重心の逆を取りながらドリブルしてた、なんて記事が最近でてましたね。

サッカーIQが高い、超優秀なプレイヤーですよね。相手をかわすスポーツなら。

その相手が捕まえにくい感じ、相手にリズムやペースを全然掴ませない感じ、それを母子関係の中で、頼りたい子どもに対してやられたとしたら…


お前なんやねん!

俺の相手やお世話するのが、お前の仕事とちゃうんか!


って、なりますよね。



で、そんな養育者の子どもへの態度は、具体的にはこんな感じのようです。

〉脅かす(のしかかるような動き、不意に動く、不意に侵入する、攻撃の姿勢など)

〉恐怖(後ずさりする、大げさに驚く反応をする、子どもに対する反応を引っ込める、怖がっているような声や表情など)

〉役割の混乱(例えば、その子から安心を取り去る)

〉方向性がない(子どもの泣き声に対してボーっとしたトランスのような表情でいる、目的なくうろうろ歩くなど)

〉侵入的な行動(腕を掴んで引っ張る、ふざけてからかう、玩具をあげないなど)

〉引きこもる(その子を迎えない、言葉で相互作用しない、視線を避ける)


もう「お母さん大丈夫⁉︎」って感じですよね。

不安定すぎるというか、もはやお母さんが解離とかフラッシュバックとかしてません?、て思っちゃいます。

こんな状態で子どもの養育なんて無理でしょ…

でも、現実にはこのような精神状態で養育を強いられている母親、シングルマザー、シングルファザーは存在しているわけで。

そして、おそらく養育者自身がそんな親に育てられてきた可能性が高いですよね。

MainとSolomonは、この愛着パターンを「無秩序ー無方向」型と名づけ、子どもの行動特徴を7つあげています。



〉1. 連続して矛盾する行動をとる:例えば、フリーズして、身体を引いたり、ボーッとしている行動の直後に親近さを求める行動をとる。

〉2. 同時に相矛盾する行動をとる:回避行動のようなものが親近さを求める行動とともにある。

〉3. 完結せず、中断した、あるいは、方向性のない行動や表現をする:愛着対象から遠ざかりつつ苦しそうにする。

〉4. 場にそぐわない、ステレオタイプの、あるいは左右不均整な動き。あるいは、不思議でおかしな行動:母親がいて、よろける理由がないのによろけるなど。

〉5. フリーズするとか、じっとしているとかを意味する動きや表現、さらに「もがく」身ぶり。

〉6. 養育者を恐れていることを示すポーズ:怖そうな表情や丸めた両肩。

〉7. 混乱や方向のわからなさを示す行動:うろうろ歩きまわる、不安定な感情、あるいは、ボーッととして、混乱した表情。


う〜ん、まさに無秩序、無方向。
これって、上記の混乱した養育者の写し鏡ですよね、まさに。

これってトラウマ反応じゃん、と思ったら、すかさず本書でも、

「この不一致な行動は、さまざまな形でトラウマを受けた成人にもみられます」

なんて説明が加えられてました。ですよね(苦笑)


「無秩序ー無方向」型の養育環境って、それ自体がトラウマ体験と言っても過言じゃないのかもしれないですね。

なので、そんな子どもが成人した時の特徴って、何となく予想がつくと思いますが、本文を見てみましょう。


【成人後】対人パターンと自己調整の特徴

〉臨床的な状況では、セラピストはしばしばコンタクト(接触に対して矛盾するような反応や、明らかに関係性を断ち切るように見えるものによって混乱させられてしまいます

〉(クライエントの願いで)セラピストがイスを近づけると彼女の身体は硬くなるのでした。親近さの求めは彼女の言葉にはあらわれるのですが、一方、身体的には回避が伝達されているのです

〉しばしば混乱で不統一で相矛盾する行動は、2つの相対する心理生物的システム、すなわち、愛着と防衛が、同時に、あるいは交互に刺激される結果として理解されます

愛着システムが覚醒しているときは親近さを求める行動が動員されます。しかし、防衛システムが覚醒しているときは、逃げる、戦う、固まる、あるいは、覚醒低下・擬態死の反応が動員されます。

〉無秩序ー無方向型の愛着というのは、防衛と愛着の両システムを同時に活性化しているとしています


なるほど。

SOSを出してるのに、助けに来てくれた支援者にキレるという、アレですね。

愛着システムって言うのは、「安定した愛着パターン」のメカニズム、不安やストレスに内的な自動調整のみで対処しきれない時に、信用できる人に抱きしめてもらったり、手を握ってもらったり、視線を合わせて共感してもらったりと情緒的なやりとりをすると、脳内でオキシトシンという幸せホルモンがぶわぁーと出て、元気になれる外的な相互調整という理解でいいのかなと思います。

一方、防衛システムって言うのは、、、これからコラムで取り上げるやつなんですけど。少し触れますか。

「逃げる、戦う、固まる」はトラウマ反応の3F(flightr、fight、freeze)と言われる被虐待児にはよく見られる反応。

なんか、以前コラムで、

"3Fと聞くと「映画ドラゴンボール『復活のF(=フリーザ)』」を思い出すんですよね"

と、くだらないことを書いたような気もしますね。


3F状態は、高覚醒状態。ドラゴンボールで言えば、界王拳三倍とか、必殺技を出す前に「うぉー」と戦闘力を高めている状態。当然、エネルギー消費はハンパない。

で、「覚醒低下・擬態死の反応が動員」とは、エネルギーが切れたり、この相手にはもう敵わない、逃げる事も出来ない、死んだフリ状態。

ドラゴンボール的に言えば、フリーザに睨まれて足がすくむ子ども時代の悟飯(ナメック星の最初の方ですね)。戦闘力で言えば、悟飯とフリーザは、3000 vs 500000 くらいの差がありますからね。

圧倒的、無力感。

レベチとは、まさにこのこと。

確か、なんとか動けたクリリンが、一瞬のスキを突いて悟飯を抱えて必死で逃げましたよね。



脱線がすぎましたが、無秩序ー無方向型は、
・愛着システム(悟空やチチに会って安心する悟飯)
・高覚醒3F(逃げるクリリン) 
    or低覚醒状態(動けない悟飯)

が目の前の相手への反応で混在する状態だと。

「お前にとってわしゃ、味方なんかい!敵なんかい!」と思わずツッコミを入れたくなる一貫性のない反応。

無秩序、無方向って、そんな感じかなと思いました。

ドラゴンボール観たことない方は、わかりにくい例えでスミマセン)



【調整】神経系からみた調整方法の特徴

〉過覚醒と低覚醒は双方とも怯えていたり、あるいは驚異的な養育者に対する乳幼児の心理生物的な反応の中にふくまれています

〉脅威の初期段階では、乳幼児はびっくりした反応、心拍数・呼吸・血圧の上昇、および通常は泣くか金切り声をあげるかをともなった、交感神経系の活性化を表出します。しかし、交感神経系の覚醒が調整されないと低覚醒に速やかにシフトします

〉無秩序ー無方向型愛着パターンには、心拍数の上昇、強度の警戒反応、高いコルチゾール・レベル、そして背側迷走神経の緊張が上昇したことを示す静止状態、短いトランスや無反応、シャットダウンといった行動が随伴しているのです


このあたりは、トラウマに対する防衛反応の話しそのものになってますね。

コルチゾールは、ストレスが高まった時に出るホルモンのこと。

背側迷走神経は、副交感神経を2つに分けたのもの片方なんですけど、完全に「ポリヴェーガル理論」の話しに突入してます(苦笑)


別の機会に深掘りしますね。

ざっくり言うと、興奮とぼんやりが同居する無秩序な神経系ですよ、と言う理解でいいかと。



〉トラウマを負わせやすい環境は、子どもたちに無秩序ー無方向型の愛着行動を作ってしまいますが、それには普通ネグレクトと虐待の双方がふくまれます

〉身体的・情緒的あるいは性的虐待は典型的には自律神経の慢性亢進か、あるいは、過覚醒と低覚醒の間の二相性変化を生じさせます

〉一方ネグレクトは、典型的に感情の平板化を招き、覚醒度の低下と、背側迷走神経の感受性が慢性的に高くなることを随伴する行動となるゆえに、虐待だけの場合よりさらに否定的影響をもちます


このあたりは、ほぼリフレイン。

基本的には同じ事を、言葉や視点を変えて言っているのだと思います。

とにかく、虐待+ネグは、覚醒度合の調整において、とんでもなく悪影響ということがポイントですかね。



〉過剰刺激と不適切な修復は、トラウマの避けがたい結果である一方で、養育者による不適切な刺激、不十分なミラーリングさらに無反応さはネグレクトに至ります

〉このように不適切な刺激は、乳幼児にとって生活を脅かすものとなり、子どもがシステムに関与せず、低覚醒になることによって自動調整するように強いることになりま

〉慢性的な幼年期トラウマを体験した人は、特有の障害をもった社会的関わりシステム、未発達あるいは非効率的な相互反応調整能力、さらに、自動調整能力の不全に苦しんでいます


たぶん英語の和訳なんで、日本語の言い回し的にわかりにくさもありますが、ここで言うネグレクトとは、情緒的なネグレクト。

ご飯を与えないとかじゃなくて、視線を合わせるとか非言語の情緒的交流や相互調整をしてくれない、ということ。

で、おそらく「過剰刺激と不適切な修復」とは、不安定ーアンビバレント型で見られた養育姿勢の言い換え。

子どもの様子や反応に関係なく、親側の情緒的欲求(寂しいとか可愛がりたいとか)を満たすために、親のペースで一方的に関わる感じとか、子どもやってほしいこととはズレた応答とか。


そして、それは「慢性的な幼児期トラウマ」だと。


自動調整も育たないし、相互調整も育たない。だから、自分の不快感や行動をコントロールできなくて困る、と。

対人援助の仕事をする中で、対応に骨が折れる子どもや親は、だいたいコレなんじゃないか、と思っちゃいます。


だからこそ、自身の感情や行動のコントロールがうまくいかない人の内側で起こっている、調整不全のプロセスがこの本を読んですごく理解できた感じがしたんですよね。

現象として、愛着障害の人は情緒不安定、見捨てられ不安が高まりやすい、などなどの説明はあっても、なぜそうなっているか、そのメカニズムについて、ここまで細かく説明してくれる本に僕は初めて出会いました。


愛着障害だから」というレッテル貼りと言うか、他人目線の理解ではなくて、「愛着障害の人はこんな風に苦しんでいる」というクライエント視点の理解がようやくできた、そんな感覚になれたんですよね。

それって、LSWも同じですよね。


そして、この本は、そんな人たちをどう支援していったら良いのかも、事細かく書いてあるので是非とも、自分が使える知識にしたいな、と思う次第です。


また、支援については別枠で詳しく。

ではでは。

【第120回】不安定な愛着パターンと自己調整

メンバーの皆さん


こんにちは。管理人です。

前回コラムに引き続き、今回は「不安定な愛着パターン」の身体感覚や自己調整について。

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参考はコレ↑のうち、

第3章 愛着:二者間の相互調整における身体の役割
・愛着パターンと身体
・愛着パターンと自己調整
・センサリーモーター(感覚運動)セラピー
    不安定-回避型愛着の治療
    不安定-アンビバレント型愛着の治療
    無秩序-無方向性型愛着の治療


から。


まず目次をご覧の通り、不安定な愛着パターンは3つ。

①不安定ー回避型
②不安定ーアンビバレント
③無秩序ー無方向型   


すごくざっくり説明すると、①はネグレクト型、②は気まぐれ過干渉型、③はネグレクト&気まぐれ過干渉のMIX型、の養育をされた場合の愛着形成についてです。


では、それぞれの型について、
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴
【成人後】対人パターンと自己調整の特徴
【調整】神経系からみた調整方法の特徴

にパート分けして、コメントを挟みながらレビューしていきますね。(治療については、本の後半、第2部で詳しく見ていきますね)


■①不安定ー回避型愛着
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴

〉母親は、子どもの親密さを求める行動をあからさまに邪魔したり中断したりします。母親自分が身体を引いたり、子どもを押しのけたり…

〉母親たちは自分の用件以外についての身体接触を嫌い、子どもの要求に対して顔をしかめたり、そっぽを向いたり、あるいは目と目を合わないようにすることで応えるかもしれません


「あー、いるいる」と思った方は、結構ヘビーな子育て相談に乗っている支援者だと思います。

自分の子どもが可愛いと思えない、というタイプのやつですよね。これは。

この様な人たちの子育て支援はホント根が深いというか、相当重いというか、子どもあやし方とか、育児手技を教えるとか全然そんな段階じゃないんですよね。

人と関わること自体にに、良い思いが持てないんですから。この種のたちが子育てを強いられるって相当な苦行なはずで。

で、そんな苦しいことに支援者がお節介に助けようとされること自体がさらに苦しい。人付き合いが増えますからね。いやー大変です。



〉子どもは、親密さへの必要性をほとんどみせない脆弱な応答性と、身体接触への関心のなさを示す…身体感覚的コミュニケーションに順応していきます。

〉そして、触れ合いがなされるときには、回避型の子どもはそれに耐えられず、母親の代わりに玩具や物に関心を集中します。

〉子どもはアイコンタクトを避けるようになり、分離に対して目に見える苦痛はほとんど示さなくなります。

〉ただ、何人かの研究者らは、…あからさまに無関心に見えるときでさえも、自律神経の覚醒度が上がるという証拠を見出しています。



子どもは柔軟なので、環境に合わせて良くも悪くも適応するというか、生き抜く術を身につけるというか。

上記の状態は、省エネモード、スリープモードですよね、人付き合いに関しての。

人と関わらなくてOKモードの身体を作り上げる感じ。


僕的なイメージは、情緒的サボテン🌵

普通の植物って、ちゃんと定期的にお水をあげないと枯れちゃうじゃないですか。

でも砂漠で適応してきたサボテンって、1ヶ月くらい水あげなくても大丈夫なんで、よっぽどでないと枯れないみたいです。

面倒くさがりな人でも育てられるし、初心者にはオススメな観葉植物ですよ、ってかつて勧められた記憶があります。


不安定ー回避型の子は「情緒交流におけるサボテン」


それですね。



【成人後】対人パターンと自己調整の特徴

〉他の人と距離を取る。人との関係性を軽視。

〉ストレス下で身体を引く傾向。他者からの情緒的支援を求めるのを避ける傾向。内部状態の気づきもわずか。

〉自力本願。相互調整よりも自己調整を好む。依存することを脅威または不快に感じる。

〉自分の愛着の必要性を最小限にしようとする。


ちょっと長くなりそうだったので、箇条書きでまとめました。

はじめに例に挙げた、支援をされることが苦痛な人。

もちろんASD的に自分の計画やペースを乱されるのを嫌がるような、人付き合いが苦手というか、他人のペースに合わせるのが苦手タイプの人もいます。

ただ、上記はそうじゃくて、人に関わられること、さらに言えば人に距離を詰められる、近づかれることに居心地の悪さ、苦痛を感じる人ですよね。

人が寄ってくると身体的緊張や覚醒度がグッと上がってしまう。


なので、なんかソワソワしたり、落ち着かなくなる。

そんな感じかな、と。




〉不安定ー回避型愛着をもつ子どもたちは、養育者への親密さを求める必要性と不安の耐性の間を保つために、より複雑なバランスをとっています。

〉たとえば、ソファに座っているクライエントは、見るからに居心地が悪そうなのに、…笑みを作り「大丈夫です」と答えるかもしれません。

〉このクライエントの身体的あるいは情緒的な不快さと、本人が報告した心理的状態との間にある分離は、内的な心理的状態と身体的状態との間の不一致や一貫性のなさを示していますが、このことに本人はしばしばまったく気づいていません。



これって、イライラした顔で「怒ってないよ!」という人もそうですかね。

いやいや、明らかに怒ってるでしょ、と伝えると、

「だから怒ってないって言ってるじゃん!」

と怒り出すみたいな。


本の例は冷静を装っている心と身体の不一致パターンですが、逆に冷静を装い切れてない不一致パターンだと、こんな感じかもしれません。




【調整】神経系からみた調整方法の特徴

〉不安定ー回避型の生育歴をもつ子どもは、自己調整するのに自律調整と副交感神経が優位な状態に依存

〉極端なときには、おそらく無力さの感情と行動レベルの低さ(すなわち、保身や引きこもりの状態)が特徴的

〉情緒の表現を抑制する傾向とともに、この「過剰調整」は、肯定的にしろ否定的にしろ情動を体験する能力を減ずる

子どもは養育者からの応答が少なかったために社会的関わりを満足させる機会を奪われ、他者の存在に依存しない自動調整傾向を好むことを発達させます。

孤独に読書や白昼夢やファンタジーの世界を通して内面へと向かい、一人で覚醒を中和するようになるかもしれません。


つまりは、相互調整や人付き合いの「食べず嫌い」状態って感じでしょうか。

食べる機会が与えられなかったので、食べず嫌い。

物を食べる機会(=情緒的交流)が少なければ、味を感じる感覚(=自分の気持ちを感じる力)も育たない、みたいな。

なので、このような人の治療には、相互作用的調整や社会的関わり(非言語コミュニケーション)を強化したり、内的な状態に気づけるように、状態に合った身体的動きを練習したり、するそう。


長くなってきたので、ここで一回終わろうか迷いますが、次の型、続けちゃいます。



■②不安定ーアンビバレント
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴

〉母親は、その子に対する反応の仕方が一貫してなかったり、また予測不能だったりします。

〉母親の相互作用は、その乳幼児に対するよりも、しばしば母親自身の情動的必要性や気分に対する反応

〉乳幼児が行事を避けることで下方調整を試みている時でさえ、その乳幼児を高い覚醒への刺激するかも

母親自身の情動的必要性が乳幼児の情動的必要性に優先してしまうので、母親の行動は乳幼児に侵入して、その子の覚醒の調整不全を引き起こしてしまいます。


これ、ホントありますね。母親に限定ではないですけど、母親の寂しさを埋めたいがために、母親が癒されたいがために、子どもに関わるパターン。

もちろん、赤ちゃんは可愛いですし、大きくなったって我が子は可愛いので、決して癒されてはいけない、ということでなくて。

ギブアンドテイクならいいと思うんです。でも、関わるタイミングが大人都合、子ども都合の時は無視というのはあまりにヒドいじゃないですか。

そういうことを言っているんだと思います。



〉養育者の応答性に一貫性がないので、ときには親近さを許したり励ましたりしますが、別のときにはそうならないので、子どもは、自分の身体的かつ情動的コミュニケーションに対する養育者の反応を信頼して良いのかわからなくなってしまう

〉この不確かさは、母親からの分離と再会までの両方を通じて警戒的で、取り乱し、怒りっぽく、苦しみ、こだわっているように見える乳幼児の中に反映されています

〉この乳幼児たちは性格的イライラしているように見えますが、ストレスからの回復が難しく、情動コントロールが苦手で、見捨てられることを恐れ、アクティング・アウトの行動をとります。

不安定ーアンビバレント型の愛着パターンをもった子どもたちは、「気難しい気質」をもっていて、「激しい感情表出、陰性感情反応、変化に順応するのが遅い、生物学的機能不順」という傾向をもっています


先ほど、ネグレクト型養育の「不安定ーアンビバレント型」愛着の子どもは、情緒的サボテン状態だ、と言いました。

で、上記の「不安定ーアンビバレント型」をもし例えるなら、酒癖悪い上司と部下、かなと。

決して全くお世話をしてくれないわけではない。気まぐれだけど、仕事上必要なことをサポートしてくれる時もあるし、なんなら飲み会はいつも奢ってくれる。

いやしかし、お酒が入ると、ホント無理やり酒を飲まされるし、聞きたくない説教じみた愚痴を散々聞かされる。

そのくせ、仕事上で相談したい時には全然話を聞いてくれない。

みたいな。


誤解のないように言いますと、今の僕の境遇を言ってるわけじゃないですよ(笑)

そもそもコロナで飲み会ないですし、今の時代、何でもハラスメントになるので無理やり飲まされるなんてないですから。

てか、言われなくてもガンガン飲んじゃうので。僕は。

今思えば、大学生の時は、先輩からホントひどいアルハラ受けてましたね(苦笑)

そのせいなのかな、ガンガン飲んじゃうのは…


この連鎖はここで断ち切らねば。なんて。

改めて、今のアラフォー世代って、昭和型の最期の末裔なんだろうな、と思います。(なんの話だよ!)


脱線が過ぎました。



【成人後】対人パターンと自己調整の特徴

不安定ーアンビバレント型の愛着の生育歴をもった子どもたちは、成人後の愛着に対して、こだわりの構えをもっている

〉愛着の必要性にとらわれ、過度に他者に依存し、人との関係性において親近さを好んで、複雑で激しい関係になる傾向をもっています

〉また、過度に内的な苦しみに焦点を当て、しばしば救済を必死に求めます。社会的関わりシステムに障害があるので、このクライエントたちは、しばしば関係性の中にある安全に気づくことができないでいます

〉愛着対象(セラピストもふくめて)に気を取られて、情動や身体的動揺が増大するのを感じ、また分離があるのではと予測して緊張感を高めたり失ったりします



過度に他者に依存って、一般的にはピンと来ない人もいるかもしれませんが、長年、児童福祉の世界にいると、5〜6人の子どもがいて、同じ母親、みな父親が違うなんてこと、結構あるあるなんですよ。

そして、いつのまにか、驚きもせず当たり前に受け入れるようになる。慣れって恐ろしいです。

これって母親が性的被害にあっているという見方もできますが、「親近さを好んで、複雑で激しい関係になる傾向」とは、そういうことなんだと思います。

寂しいから誰でもいいからくっついて、自分の思ったように応えてくれないからブチ切れて別れて、また別のパートナーを見つける。

なんでそんなにモテるの?

というのは、児童福祉では結構あるある。

ホント上手なんだと思います。あなたがいないとダメなんです、という依存が。

この本を読んで、あーなるほど、と腑に落ちましたね。



【調整】神経系からみた調整方法の特徴

〉不安定ーアンビバレント型愛着パターンをもった子どもたちは、覚醒の閾値が低いことと同時に、覚醒を耐性領域の枠内に留めておく困難があり、交感神経系が優位な神経システムをもつ傾向があります

〉主要な養育者の一貫しない反応性が、注意を引くためのシグナル(合図)を増加させること、養育を引き出すために苦悩をエスカレートさせることを子どもに教えています


これは「注意引きの誤学習」とか「試し行動」と呼ばれる行動のもとの説明になりますかね。

養育者のタイミングでしか関わってもらえないもんだから、関わって欲しい時は激しくアピールするしかない、という不適切な行動で注意を引くパターンのことかと思います。



〉この子どもたちは、調整が不十分な高い覚醒状態へと傾きがちであり、…自動調整が苦手なので、成人後に一人でいることをストレスフルだと感じる傾向があります


〉孤独に耐えることに問題をもっているので、対人接触にしがみつき、相互作用の調整に過度に依存します。同時に、関係性においては容易に穏やかになったり、慰められたりはできないという体験をしています。

〉社会的関わりをもとめるのですが、過覚醒に偏ったままになります。部分的には、主たる愛着対象者によってなされた、以前の侵入的行動体験から発達した過剰警戒ゆえに、過覚醒に偏ったままになるのです



なるほど、自動調整が未熟だから孤独に耐えられず、相互調整に助けを求めると。

でも過覚醒のままだから、すぐにカッとなって激しい喧嘩をしてしまう。


これは自分でもどうしたらいいかわかんないですよね、きっと。

そして、その元は自分ではどうにもできない乳幼児期に培われたものですからね。


ホント、虐待の初期対応だとか言って法律という印籠片手に、親に注意警告だけしてね。

かりに「それでやめられるなら、とっくにやめてるわ、ボケ!」と内心思ってても、拘留されたり逮捕されたりするんだから、本音なんて簡単に言える訳ないですよね。

そこのところまでわかって、対応して始めて「援助活動した」と言ってくれ、支援者なら、と。

もちろん、国の方針で、イケイケ、ヤレヤレと言われて、訳もわからず踊らされている支援者が大多数ということも分かっていますけれども。

なんてことを、同僚と結構嘆き気味に言って言い合う機会が、なんか最近続いてるんですよね。

いかん、いかん、普通の愚痴になってしまいました。



長くなってしまったので、

■③無秩序ー無方向型   
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴
【成人後】対人パターンと自己調整の特徴
【調整】神経系からみた調整方法の特徴


については、また次回に。


ではでは。