LSWのちょっとかゆいところに手が届く「まごのてblog」

静岡LSW勉強会の管理人によるコラム集

【第120回】不安定な愛着パターンと自己調整

メンバーの皆さん


こんにちは。管理人です。

前回コラムに引き続き、今回は「不安定な愛着パターン」の身体感覚や自己調整について。

f:id:lswshizuoka:20220416220009j:plain

参考はコレ↑のうち、

第3章 愛着:二者間の相互調整における身体の役割
・愛着パターンと身体
・愛着パターンと自己調整
・センサリーモーター(感覚運動)セラピー
    不安定-回避型愛着の治療
    不安定-アンビバレント型愛着の治療
    無秩序-無方向性型愛着の治療


から。


まず目次をご覧の通り、不安定な愛着パターンは3つ。

①不安定ー回避型
②不安定ーアンビバレント
③無秩序ー無方向型   


すごくざっくり説明すると、①はネグレクト型、②は気まぐれ過干渉型、③はネグレクト&気まぐれ過干渉のMIX型、の養育をされた場合の愛着形成についてです。


では、それぞれの型について、
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴
【成人後】対人パターンと自己調整の特徴
【調整】神経系からみた調整方法の特徴

にパート分けして、コメントを挟みながらレビューしていきますね。(治療については、本の後半、第2部で詳しく見ていきますね)


■①不安定ー回避型愛着
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴

〉母親は、子どもの親密さを求める行動をあからさまに邪魔したり中断したりします。母親自分が身体を引いたり、子どもを押しのけたり…

〉母親たちは自分の用件以外についての身体接触を嫌い、子どもの要求に対して顔をしかめたり、そっぽを向いたり、あるいは目と目を合わないようにすることで応えるかもしれません


「あー、いるいる」と思った方は、結構ヘビーな子育て相談に乗っている支援者だと思います。

自分の子どもが可愛いと思えない、というタイプのやつですよね。これは。

この様な人たちの子育て支援はホント根が深いというか、相当重いというか、子どもあやし方とか、育児手技を教えるとか全然そんな段階じゃないんですよね。

人と関わること自体にに、良い思いが持てないんですから。この種のたちが子育てを強いられるって相当な苦行なはずで。

で、そんな苦しいことに支援者がお節介に助けようとされること自体がさらに苦しい。人付き合いが増えますからね。いやー大変です。



〉子どもは、親密さへの必要性をほとんどみせない脆弱な応答性と、身体接触への関心のなさを示す…身体感覚的コミュニケーションに順応していきます。

〉そして、触れ合いがなされるときには、回避型の子どもはそれに耐えられず、母親の代わりに玩具や物に関心を集中します。

〉子どもはアイコンタクトを避けるようになり、分離に対して目に見える苦痛はほとんど示さなくなります。

〉ただ、何人かの研究者らは、…あからさまに無関心に見えるときでさえも、自律神経の覚醒度が上がるという証拠を見出しています。



子どもは柔軟なので、環境に合わせて良くも悪くも適応するというか、生き抜く術を身につけるというか。

上記の状態は、省エネモード、スリープモードですよね、人付き合いに関しての。

人と関わらなくてOKモードの身体を作り上げる感じ。


僕的なイメージは、情緒的サボテン🌵

普通の植物って、ちゃんと定期的にお水をあげないと枯れちゃうじゃないですか。

でも砂漠で適応してきたサボテンって、1ヶ月くらい水あげなくても大丈夫なんで、よっぽどでないと枯れないみたいです。

面倒くさがりな人でも育てられるし、初心者にはオススメな観葉植物ですよ、ってかつて勧められた記憶があります。


不安定ー回避型の子は「情緒交流におけるサボテン」


それですね。



【成人後】対人パターンと自己調整の特徴

〉他の人と距離を取る。人との関係性を軽視。

〉ストレス下で身体を引く傾向。他者からの情緒的支援を求めるのを避ける傾向。内部状態の気づきもわずか。

〉自力本願。相互調整よりも自己調整を好む。依存することを脅威または不快に感じる。

〉自分の愛着の必要性を最小限にしようとする。


ちょっと長くなりそうだったので、箇条書きでまとめました。

はじめに例に挙げた、支援をされることが苦痛な人。

もちろんASD的に自分の計画やペースを乱されるのを嫌がるような、人付き合いが苦手というか、他人のペースに合わせるのが苦手タイプの人もいます。

ただ、上記はそうじゃくて、人に関わられること、さらに言えば人に距離を詰められる、近づかれることに居心地の悪さ、苦痛を感じる人ですよね。

人が寄ってくると身体的緊張や覚醒度がグッと上がってしまう。


なので、なんかソワソワしたり、落ち着かなくなる。

そんな感じかな、と。




〉不安定ー回避型愛着をもつ子どもたちは、養育者への親密さを求める必要性と不安の耐性の間を保つために、より複雑なバランスをとっています。

〉たとえば、ソファに座っているクライエントは、見るからに居心地が悪そうなのに、…笑みを作り「大丈夫です」と答えるかもしれません。

〉このクライエントの身体的あるいは情緒的な不快さと、本人が報告した心理的状態との間にある分離は、内的な心理的状態と身体的状態との間の不一致や一貫性のなさを示していますが、このことに本人はしばしばまったく気づいていません。



これって、イライラした顔で「怒ってないよ!」という人もそうですかね。

いやいや、明らかに怒ってるでしょ、と伝えると、

「だから怒ってないって言ってるじゃん!」

と怒り出すみたいな。


本の例は冷静を装っている心と身体の不一致パターンですが、逆に冷静を装い切れてない不一致パターンだと、こんな感じかもしれません。




【調整】神経系からみた調整方法の特徴

〉不安定ー回避型の生育歴をもつ子どもは、自己調整するのに自律調整と副交感神経が優位な状態に依存

〉極端なときには、おそらく無力さの感情と行動レベルの低さ(すなわち、保身や引きこもりの状態)が特徴的

〉情緒の表現を抑制する傾向とともに、この「過剰調整」は、肯定的にしろ否定的にしろ情動を体験する能力を減ずる

子どもは養育者からの応答が少なかったために社会的関わりを満足させる機会を奪われ、他者の存在に依存しない自動調整傾向を好むことを発達させます。

孤独に読書や白昼夢やファンタジーの世界を通して内面へと向かい、一人で覚醒を中和するようになるかもしれません。


つまりは、相互調整や人付き合いの「食べず嫌い」状態って感じでしょうか。

食べる機会が与えられなかったので、食べず嫌い。

物を食べる機会(=情緒的交流)が少なければ、味を感じる感覚(=自分の気持ちを感じる力)も育たない、みたいな。

なので、このような人の治療には、相互作用的調整や社会的関わり(非言語コミュニケーション)を強化したり、内的な状態に気づけるように、状態に合った身体的動きを練習したり、するそう。


長くなってきたので、ここで一回終わろうか迷いますが、次の型、続けちゃいます。



■②不安定ーアンビバレント
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴

〉母親は、その子に対する反応の仕方が一貫してなかったり、また予測不能だったりします。

〉母親の相互作用は、その乳幼児に対するよりも、しばしば母親自身の情動的必要性や気分に対する反応

〉乳幼児が行事を避けることで下方調整を試みている時でさえ、その乳幼児を高い覚醒への刺激するかも

母親自身の情動的必要性が乳幼児の情動的必要性に優先してしまうので、母親の行動は乳幼児に侵入して、その子の覚醒の調整不全を引き起こしてしまいます。


これ、ホントありますね。母親に限定ではないですけど、母親の寂しさを埋めたいがために、母親が癒されたいがために、子どもに関わるパターン。

もちろん、赤ちゃんは可愛いですし、大きくなったって我が子は可愛いので、決して癒されてはいけない、ということでなくて。

ギブアンドテイクならいいと思うんです。でも、関わるタイミングが大人都合、子ども都合の時は無視というのはあまりにヒドいじゃないですか。

そういうことを言っているんだと思います。



〉養育者の応答性に一貫性がないので、ときには親近さを許したり励ましたりしますが、別のときにはそうならないので、子どもは、自分の身体的かつ情動的コミュニケーションに対する養育者の反応を信頼して良いのかわからなくなってしまう

〉この不確かさは、母親からの分離と再会までの両方を通じて警戒的で、取り乱し、怒りっぽく、苦しみ、こだわっているように見える乳幼児の中に反映されています

〉この乳幼児たちは性格的イライラしているように見えますが、ストレスからの回復が難しく、情動コントロールが苦手で、見捨てられることを恐れ、アクティング・アウトの行動をとります。

不安定ーアンビバレント型の愛着パターンをもった子どもたちは、「気難しい気質」をもっていて、「激しい感情表出、陰性感情反応、変化に順応するのが遅い、生物学的機能不順」という傾向をもっています


先ほど、ネグレクト型養育の「不安定ーアンビバレント型」愛着の子どもは、情緒的サボテン状態だ、と言いました。

で、上記の「不安定ーアンビバレント型」をもし例えるなら、酒癖悪い上司と部下、かなと。

決して全くお世話をしてくれないわけではない。気まぐれだけど、仕事上必要なことをサポートしてくれる時もあるし、なんなら飲み会はいつも奢ってくれる。

いやしかし、お酒が入ると、ホント無理やり酒を飲まされるし、聞きたくない説教じみた愚痴を散々聞かされる。

そのくせ、仕事上で相談したい時には全然話を聞いてくれない。

みたいな。


誤解のないように言いますと、今の僕の境遇を言ってるわけじゃないですよ(笑)

そもそもコロナで飲み会ないですし、今の時代、何でもハラスメントになるので無理やり飲まされるなんてないですから。

てか、言われなくてもガンガン飲んじゃうので。僕は。

今思えば、大学生の時は、先輩からホントひどいアルハラ受けてましたね(苦笑)

そのせいなのかな、ガンガン飲んじゃうのは…


この連鎖はここで断ち切らねば。なんて。

改めて、今のアラフォー世代って、昭和型の最期の末裔なんだろうな、と思います。(なんの話だよ!)


脱線が過ぎました。



【成人後】対人パターンと自己調整の特徴

不安定ーアンビバレント型の愛着の生育歴をもった子どもたちは、成人後の愛着に対して、こだわりの構えをもっている

〉愛着の必要性にとらわれ、過度に他者に依存し、人との関係性において親近さを好んで、複雑で激しい関係になる傾向をもっています

〉また、過度に内的な苦しみに焦点を当て、しばしば救済を必死に求めます。社会的関わりシステムに障害があるので、このクライエントたちは、しばしば関係性の中にある安全に気づくことができないでいます

〉愛着対象(セラピストもふくめて)に気を取られて、情動や身体的動揺が増大するのを感じ、また分離があるのではと予測して緊張感を高めたり失ったりします



過度に他者に依存って、一般的にはピンと来ない人もいるかもしれませんが、長年、児童福祉の世界にいると、5〜6人の子どもがいて、同じ母親、みな父親が違うなんてこと、結構あるあるなんですよ。

そして、いつのまにか、驚きもせず当たり前に受け入れるようになる。慣れって恐ろしいです。

これって母親が性的被害にあっているという見方もできますが、「親近さを好んで、複雑で激しい関係になる傾向」とは、そういうことなんだと思います。

寂しいから誰でもいいからくっついて、自分の思ったように応えてくれないからブチ切れて別れて、また別のパートナーを見つける。

なんでそんなにモテるの?

というのは、児童福祉では結構あるある。

ホント上手なんだと思います。あなたがいないとダメなんです、という依存が。

この本を読んで、あーなるほど、と腑に落ちましたね。



【調整】神経系からみた調整方法の特徴

〉不安定ーアンビバレント型愛着パターンをもった子どもたちは、覚醒の閾値が低いことと同時に、覚醒を耐性領域の枠内に留めておく困難があり、交感神経系が優位な神経システムをもつ傾向があります

〉主要な養育者の一貫しない反応性が、注意を引くためのシグナル(合図)を増加させること、養育を引き出すために苦悩をエスカレートさせることを子どもに教えています


これは「注意引きの誤学習」とか「試し行動」と呼ばれる行動のもとの説明になりますかね。

養育者のタイミングでしか関わってもらえないもんだから、関わって欲しい時は激しくアピールするしかない、という不適切な行動で注意を引くパターンのことかと思います。



〉この子どもたちは、調整が不十分な高い覚醒状態へと傾きがちであり、…自動調整が苦手なので、成人後に一人でいることをストレスフルだと感じる傾向があります


〉孤独に耐えることに問題をもっているので、対人接触にしがみつき、相互作用の調整に過度に依存します。同時に、関係性においては容易に穏やかになったり、慰められたりはできないという体験をしています。

〉社会的関わりをもとめるのですが、過覚醒に偏ったままになります。部分的には、主たる愛着対象者によってなされた、以前の侵入的行動体験から発達した過剰警戒ゆえに、過覚醒に偏ったままになるのです



なるほど、自動調整が未熟だから孤独に耐えられず、相互調整に助けを求めると。

でも過覚醒のままだから、すぐにカッとなって激しい喧嘩をしてしまう。


これは自分でもどうしたらいいかわかんないですよね、きっと。

そして、その元は自分ではどうにもできない乳幼児期に培われたものですからね。


ホント、虐待の初期対応だとか言って法律という印籠片手に、親に注意警告だけしてね。

かりに「それでやめられるなら、とっくにやめてるわ、ボケ!」と内心思ってても、拘留されたり逮捕されたりするんだから、本音なんて簡単に言える訳ないですよね。

そこのところまでわかって、対応して始めて「援助活動した」と言ってくれ、支援者なら、と。

もちろん、国の方針で、イケイケ、ヤレヤレと言われて、訳もわからず踊らされている支援者が大多数ということも分かっていますけれども。

なんてことを、同僚と結構嘆き気味に言って言い合う機会が、なんか最近続いてるんですよね。

いかん、いかん、普通の愚痴になってしまいました。



長くなってしまったので、

■③無秩序ー無方向型   
【乳児期】母子のやりとりと身体感覚の特徴
【成人後】対人パターンと自己調整の特徴
【調整】神経系からみた調整方法の特徴


については、また次回に。


ではでは。